コンピュータを活用して落下運動を調べよう

1.はじめに
 本来,生徒たちはいろいろなことに興味・関心をもっているので,コンピュータを活用し,現実にはじっくりと観察できない現象を解析する活動をさせようと試みた。またコンピュータを活用すると個人の思考が必要となり,自発的に取り組まざるを得ないところがあるので,主体的に取り組むという点でも指導者の意図するところである。

2.活動目標
 (1) 物体に重力という力をはたらかせると,物体の落下する速さが変化することを,シミュレーション実験を通して理解する。
 (2) 「落下運動」に関わる課題について,コンピュータを活用して調べ,解決する。

3.学習活動に入る前に
 この学習活動に入る前に,「落下運動」という現象に関わって,どのようなことに疑問や興味・関心があるのか,全生徒にアンケート調査を行った。その結果の中から,今回の授業でほぼ解決できる課題を抽出した。
 1) 大きさの違う物体の落下する速さの違いは?
 2) 質量の違う物体の落下する速さの違いは?
 3) なぜ,落下する物体の速さは速くなるのか?
 4) 重力のないところでの落下現象は?
 5) なぜ,物体には重力がかかるのか?
 6) 重力の大きさはどのくらいか?
 7) 地上3000mの上空から落下した物体は,地上に着く頃にはどのくらいの速さになるのか?
 8) なぜ,地球と月の重力の大きさは違うのか?

4.落下運動のシミュレーション実験について
 <使用ソフト>
 ソフトは,啓林館の「力と運動のシミュレーション」ソフト(試用版),マイクロソフト社のエクセル,N88互換BASIC for Windows95(潮田康夫)を使った。
 <シミュレーション実験の内容>
 (1) 「落下運動」のようすを調べる。
1) 落下する物体の速さは時間とともにどうなるか。
2) 物体の質量が変わると落下する速さはどうなるか。
 (2) 興味・関心のある「落下運動」に関係する現象や事項について調べる。
 シミュレーションソフトを使って様々な条件で「落下運動」について調べる。
 「落下運動」に関係する課題についてホームページを見て調べる。
 「落下運動」に関係する課題について電子辞典を見て調べる。
 「落下運動」に関係する課題について書籍を使って調べる。
 以上の結果を次のようなレポートにまとめた。

 <実験結果の処理>
 実験aの結果については,次のようなプリントにまとめさせた。

5.表計算ソフト「エクセル」の活用
 <工夫その1>
 今回の実践では,上記のようなプリントにまとめさせたが,その後,表計算ソフト「エクセル」の活用を工夫してみた。
 先のシミュレーション実験aの結果を次のような画面で確認できるようにした。

 <工夫その2>
 生徒のアンケート結果の中から課題7)を解決する画面を作成した。任意の落下距離を入力すると,「地上に落下するまでの時間と速度」が瞬時に出る。

 <工夫その3>
 応用として,「自然落下と水平投射の関係」がわかる画面を作成した。この画面では,実験ボタンを押すと,実験画面(黒色の画面)が現れ,任意の高さと初速度を代入すると,シミュレーション実験が実行されるようになっている。

 <工夫その4>
 応用として,もう1つ「モンキーハンティング」の画面を作成した。この画面も<工夫その3>と同じように,モンキーハンティングのシミュレーション実験ができるように工夫されている。

6.活動の成果
 事後のアンケートで59%の生徒が「大変よくわかった」と答えている。また,71%の生徒が「大変楽しかった」と答えている。今の子どもたちには,ゲーム感覚で実験できるシミュレーション実験の効果は大きいと考える。特に,理科の実験というのは,「やることはおもしろいが,何をやったかわかりにくい」ということがあり,その補完としての解説にもなり,何よりも生徒が受動的学習から応答できる能動的学習になるところに大きな意義があると考える。
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