テレビ会議システムを使った数学の交流授業
京都市立下鴨中学校
友野 瑶子
1.単元名 課題学習 「スポーツテストでは?」

2.指導について
 テレビ会議システムを使用した数学の交流授業を計画した。内容は,身近なスポーツテストを取り上げた。スポーツテストは,毎年春5月に体育の時間に行われる。自分の記録やクラスメイトの記録は知っていても,他の学校のスポーツテスト結果と比較することが今まではなかった。この授業では,2校それぞれが前の時間に自校のデータ処理をしたものと,他校のデータを比べることによって違うことは何か,同じことは何かを知り,その特徴があるかどうかを考えさせることをねらった。
 データの数が1校のみでなく,2校にまたがることによって,1)標本の数が増えること,2)標本の数が増えることによって推定がしやすくなること,3)地域性があるかどうかの比較ができること,などが2校の生徒どうしの意見交換によって深まることをねらった。
 これからはテレビ会議システムが導入され,他教科や総合的学習の時間での使用が進み,交流授業が盛んに行われるであろう。しかしそのときに,単に交流するのみでなく,テレビ会議システムでなければできないことは何か,を追究する必要があると考えている。テレビ会議システムを使ってリアルタイムに学校間の交流ができるメリットは,「共有した時間と,違った学習空間の中で人間の考えがぶつかりあうこと」であると考えるからである。

3.指導計画
 前時:統計の処理の仕方,パソコンの利用法,関連の度合いの表し方
 本時:持ち寄ったデータを統計的手法で処理し,討論によって結論を深める。

4.学習過程
学習のねらいと発問  学 習 活 動  指導上の留意点
<挨拶>
2校の学校紹介を行う。
京都市の中でのお互いの位置を確認する。学校の行事についての交流を行う。
<興味・関心>
部活動の様子にも触れ,スポーツテストへの興味づけを図る。
<課題の確認>
2校でのスポーツテストの比較をしてみよう。
前の授業で2校が実施したスポーツテストの結果をそれぞれグラフ化したことを思いだす。
前の授業では2校別々にグラフ化を指導ずみである。また,スポーツテストのデータを個人でグラフ化してフロッピーに保存してある。その際に保存する名前のつけ方に工夫するように指示してある。
 
各種目平均の比較をする。
比較するのに,グラフ化が有効であること,棒グラフがよいことを2校で確認する。
<課題に取り組む>
スポーツテスト種目の相関の強さはどうだろうか。
スポーツテストの種目で,相関についての問題を出して,何の相関かをあてて2校で競う。
2校が「相関が強い」と予想したそれぞれの種目の相関図を比較する。
「相関が強い」と予想しなかった他の種目についても相関図を比較する。
<表現・処理>
比較する場合には同じ目盛りにするように指示する。
テレビ会議システムのアプリケーション共有を使って,2校の相関図が1画面に出て比較しやすいようにする。
テレビ会議システムで同一グラフを見ながら両校が討議する。
<課題の追究>
2校で同じ傾向になることの意味を考えよう。
「相関が強い,弱い」種目が2校で同じということからわかることは何か考える。
予想と同じであったか話し合い,今後のトレーニングに活かせることを考えて意見交換する。
グラフ上で質問するときには,マウスを同期にして,質問や説明をする。
<数学的な考え方>
2校で同じであった結果については,1校だけの結論よりもより一般化して結論が出せること,そうすることにより,より正確に母集団(全国の中学生)の傾向がわかることを知らせる。
<まとめと課題>
両校の比較を,来年度もスポーツテストを行うことによって,その推移がわかることを知る。
<評価>
2校で同じ評価項目により自己評価を行う。

5.実践の結果と考察
 テレビ会議システムにより,両校の生徒たちは大変興味深く授業に臨むことができたことが授業後の感想でうかがわれた。5分間ほどであったが,テレビ会議システムでジャンケン勝ち抜き戦を行い,緊張をほぐしたことなども大変印象に残ったようである。
 保健体育科のスポーツテスト,数学科の統計処理,情報教育のコンピュータ処理とのクロスカリキュラム的な課題学習に,2校の生徒たちは大変興味を示し,特に自分たちのデータであること,また,それを他校と比較することなど現実味を帯びていて,今後の部活動に相関図の結果をどう活かすか等,熱心に考えることができた。
 教師にとっては,「2校が交流学習する上での教師の役割は?」という大きなテーマを持って臨んだ授業であった。今回は,相手校に教師が行って司会をし,自分の学校の生徒は,画面を通して様子を知ることができるという実践であった。綿密にシミュレートしたつもりであったが,2校の司会役として,生徒一人一人の数学的な考えをしている様子の細かいところまでは見えなかった。このシステムでの教師の役割,授業の組み立て,発問等,まだまだこれからの課題であろう。生徒の感想に,「相手校の生徒が前に立ち,皆の考えを聞いたりして司会役をしているのがすごいと感じたし,うらやましい」というのもあり,お互に交流学習を通じて成長することができると強く感じた実践であった。まだまだ,日常的に使える環境でないために,多方面の様々な方にご協力をいただいた。この場を借りて謝意を表したい。

  

6.参考文献

西之園晴夫:教育技術研究のパラダイムを利用した現職研究に関する研究
統計教育の新しい展開 筑波出版会

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