1.2学年 一次関数
2.題材について
中学校における関数指導では,小学校での学習の上に立って,事象の中から伴って変わる二つの数量を見いだし,変化や対応についての見方や考え方を養い,関数関係についての理解を一層深めることが大切である。第1学年では,比例,反比例を中心とした関数の学習を通して,関数関係における変化と対応,変数と変域,yはxの関数であることの意味などを理解してきている。また,数を負の数にまで拡張し,平面上に座標を導入することによって,比例の式を小学校のときに学習したよりもより一般的に取り扱い,関数のグラフの概念についての理解を深めるとともに,関数としての比例,反比例の特徴を考察してきている。第2学年では,第1学年での指導をさらに発展させ,基本的な関数関係の代表的なものとして一次関数を取り扱い,それによって関数についての理解や関数的な見方,考え方を一層深めることになる。
本題材では,具体的な事象の中から一次関数を見いだし,表,式,グラフに表すことを通して,一次関数の変化の様子を調べ,調べた性質をもとにして,一次関数で表される事象についての問題解決ができるようにしていきたい。
本学級の生徒は,具体的な事象から数量関係を捉え,式に表すことを比較的得意としている生徒や,じっくりと問題を考えることが楽しいと感じている生徒が多い。しかし,グラフから必要な情報を読み取って考察することや,自分のことばで表現することをやや苦手としている生徒が多い。また,何人かの生徒は,とても数学を苦手にしており,基本的な計算力が身に付いておらず,配慮が必要である。
本時では,Tシャツを購入するという身近な例を提示することにより,各店の料金プランを利用し,問題解決の学習をする。生徒の様々な考えを評価し,一次関数の学習に取り組む意欲を高めたい。また,問題解決のために,表,式,グラフを利用し,その有用性に気づかせたい。
3.題材の目標
(1) 事象のなかにある一次関数を見いだし,表現することができる。
(2) 表,式,グラフを用いて,一次関数の特徴を調べることができる。
(3) 二元一次方程式を関数を表す式と見直すことができる。
(4) 具体的な事象の考察に,一次関数を活用することができる。
4.指導計画(全体16時間)
- 第1次 一次関数………………9時間
- 第2次 一次関数と方程式……6時間(本時5/6)
- 第3次 章の問題………………1時間
5.本時の学習
(1) 目標
- 具体的な事象を,一次関数を用いて捉え,表,式,グラフを用いて考察することができる。
(2) 研修主題との関連
- 「数学の楽しさやよさを実感すること」に関する工夫点
じっくりと考える過程を大切にし,既習事項を利用することにより,身近な問題を解決することができる喜びを感じさせ,学習に対する意欲を高める。
(3) 展開
学習活動 |
配時 |
教師の支援 |
評価 |
1 課題を確認する。 |
5 |
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ゆうきさんは,オリジナルTシャツを作ることにしました。そこで,店にプリントを頼みたいと思います。次の表は,3つの店の料金をまとめたものです。
Tシャツのプリント料金
店 |
料金 |
カラー工房 |
Tシャツ1枚につき200円です。 |
パレット印刷 |
基本料金が3000円で,
Tシャツ1枚につき100円追加します。 |
染め屋 |
Tシャツ60枚までは何枚でも8000円です。 |
【課題】3つの店のうち,どのお店が一番お得でしょうか? |
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<予想される生徒の反応>
- これだけじゃわからない。
- カラー工房安い。
- 何枚買えばよいかわからない
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- 生徒からの質問や意見を利用し,答えが即答できないことに気づかせ,表,式,グラフで考えてみるよう促す。
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2 各店の料金について,表,式,グラフで表す。
ヒントカ−ド(表とグラフ)
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15 |
- 生徒が一人一人自分で課題を解決できるよう,十分に時間をとる。
- 机間指導を行い,いろいろな方法で,答えが導き出せるよう,個別に助言する。
- できていない生徒に「1枚だったらどの店がお得か?」など,考える手立てを示し,個に応じた解決を促す。
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[数学的な見方や考え方]
- 課題の意味を把握し,表,式,グラフを用いて考察することができる。(ノート)
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3 Tシャツの枚数と代金の関係について考える。
<予想される生徒の反応>
- 30枚でパレット印刷とカラー工房が同じ6,000円になる。
- 50枚で染め屋とパレット印刷が同じ8,000円になる。
- カラー工房は0枚以上30枚以下だと一番安い。
- パレット印刷は30枚以上50枚以下だと一番安い。
- 染め屋は50枚以上60枚以下だと一番安い。
- 26Hは34名だから,パレット印刷で頼むとよい。
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15 |
- 気づいたことやわかったことをノートにわかりやすくまとめるように指示する。
- 4人班をつくり,気づいたことやわかったことを互いに共通理解するよう促す。
- 表とグラフを利用して解いている生徒を指名し,発表させる。実物投影機を利用し,全体に見えるようにする。発表の際に,ポイントとなる語句や考え方は板書に残す。
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4 【発展課題】表,式,グラフで考察するときのよさについて考える。 |
10 |
[数学的な見方や考え方]
- 表,式,グラフを用いて考察するときのよさに気づくことができる。(発表)
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5 自己評価カードに記入する。 |
5 |
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6.研究の成果と課題
<成果>
- 全国学力・学習状況調査の問題を活用(設問の仕方を変更した)し,授業を行った。Tシャツの購入という身近な課題ということもあり,生徒の学習意欲を高めるには有効であった。
- 課題に対して,個人追究の時間を十分に確保したために,表や式,グラフを用いて多様な解決を図る生徒が多くいた。安易に,ヒントや助言を与えずに十分に課題把握の時間を取り,じっくり考えさせることが大切である。
- グループ活動では,気づいたことや分かったことについて積極的に話し合いがなされ個々の生徒の課題に対する深まりが見られた。
<課題>
- 個人追究に時間がかかったため,終末に1時間の授業の中で何を全体に押さえるのかはっきりしなかった。時間配分や全体計画について再考の余地がある。
- 課題が全く手つかずの生徒に対するヒントカードの作り方やヒントカードの与え方に工夫が必要である。