授業実践記録

「対応」に目が向く「比例定数」の意味づけとその式化について

くにびき数学教育研究会

1.はじめに

簡単な一次方程式は解ける生徒でも,比例の式化について困難に感じている生徒は少なくない。その理由として,生徒の思考の流れは下記のようになると推測する。

生徒が比例をとらえる際,「変化」だけでなく「対応」にも目が向くように,比例定数の意味づけを工夫することにした。

①から④の表で,比例関係にあるのは①と④である。この表のきまりを生徒自ら見つけ,それらを共通点で分類する。そして「横の変化の数と縦の対応の数が一致するとき,その関係を比例とし,その数を比例定数とする」という定義をした。横の変化の数と縦の対応の数が一致するという特徴は比例特有のもので,比例でない②や③と比べることによって,より印象づけることができる。

横の変化の数と縦の対応の数が一致するとき,その関係を比例とし,その数を比例定数とする。

この「比例定数」の意味づけによって,「対応」に目が向く生徒が増え,生徒自ら式化することができるのではないかと考えた。

2.研究実践の実際

①から④の表のきまりを見つけ,それらを分類し,前述の表による比例定数の意味づけをした上で,次の時間すぐに啓林館の教科書p.86の例題1に検証問題として取り組んだ。

3.検証結果

(1)H19の実践による集計結果(対象生徒数399人)

y=2xとかけた場合のみを正答とする場合
計 154/399 → 38.5%

②対応に目が向いていると考えられる回答を準正答として正答に含める場合

「対応」に目が向いていると判断した解答
8×2=16 11
16÷8=2 18
8
2
x×2 2
(段数)= 2 ×(高さ) 3
yax x=8とy =16 を代入してa=2 4
48

正答→154人 準正答→48人 併せて202人  202/399→50.6%

約半数の生徒が縦の対応に目が向いたと考えることができる。

(2)H20の実践による検証結果(対象生徒203人)

式化できた生徒 149/203 → 73.4%

4.検証結果の考察

I 「比例定数」の意味づけを工夫することによって,比例の関係を表す式の求め方が,生徒にとって理解しやすいものになるのではないか。

II 対象生徒の半数が「対応」に目が向いているので,比例関係を式に表す際,その表し方を教師から教えるのではなく,生徒達の話し合いによって導き出すことができるのではないだろうか。

検証問題のあとグループで話し合いをしたり,クラス全体で意見を交換したりすることによって,比例関係をどのように式に表せばよいか,生徒自ら導き出すことができると考えられる。

※「対応」に目が向かなかった残り半分の生徒への関わり

  • x=8のとき,y=16である」という文章の意味が読み取れるように,「表」での表し方を確認する。
  • 横の変化では求めにくい次のような問題で,「対応」のよさを実感できるような場面を設定する。

5.おわりに

この実践を通して,生徒の自然な発想で授業を展開していくことの大切さをあらためて感じることができた。定義の仕方を含め授業の展開を工夫することで,学力が低位な生徒でも,自分の発想で授業に参加し,問題に取り組むことができると思われる。「比例と反比例」だけでなく,他の単元でも授業改善を進めていきたい。

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