授業実践記録

「75°を作図しよう!」                 〜多用な考え方を育む図形指導の実践例として〜

北海道
A教諭

1.はじめに

子どもの思考力・判断力・表現力を高めるためには,自分で考えたり,調べたりする活動を工夫することが大切です。

このために,既習内容を確認したり,自分の考えを整理し,根拠を持ってまとめたりするなどの活動を工夫する必要があります。さらに,多用な解決方法を探ったり,教え合ったりする活動を通して,直感力や思考力を一層高めることができます。

そこで,中学生になって初めて「作図」に取り組む1年生が,その有用性を実感しながら,数学的な見方や考え方を育むために,「宝探し」と「75°の作図」を組み合わせて授業を構成してみました。

2 授業実践

単元名 「平面図形」

指導計画

(1)直線図形と対称

・直線と角・・・2時間
・対称な図形・・・2時間

(2)基本の作図

・基本の作図・・・3時間(本時3/3)

(3)円とおうぎ形

・円とおうぎ形の性質・・・2時間

(4)図形の移動・・・3時間

◎ 本時案

1.本時の目標

・ 作図の仕方を根拠を明らかにし,筋道を立てて説明しようとする。

(数学への関心・意欲・態度)

・ 基本的な作図の性質について理解し,問題解決に利用できる。

(数学的な見方・考え方)

本時の展開

学習活動 教師の働きかけ 指導上の留意点
◯前時までの学習を振り返り,垂直二等分線,角の二等分線,垂線の性質,作図の仕方を復習する。 ◯作図の仕方,作図した直線の特徴などを振り返る場を設ける。  
<課題>
作図を利用して、宝物の位置を発見しよう。

(指令1)
宝島の入口は,2つの港から等しい距離にある。入口をさがせ。
(指令2)
入口に着いたら,灯台に向かって75°の方向に直進せよ。
(指令3)
直進しながら,杉の木に最も近づいたところに宝が埋まっている。

◯課題に対して,予想を立てる。 ◯だいだいの位置を確認し,作図により正確な位置を求められることを確認する。 ◯課題解決への見通しを持たせる。
○指令1を取り組む。
・垂直二等分線の作図をする。
○垂直二等分線の作図を用いることに気づかせる。  
○指令2を取り組む。
・75°の直線の作図をする。
   
図や式を用いて根拠を明らかにし、自分の言葉でまとめるように工夫する。
○75°の直線の描き方を発表する。    
☆Aさんの考え ☆Bくんの考え ☆Cさんの考え
○自分の考え

・灯台と入口を一辺とする直角二等辺三角形をかく。

・直角二等辺三角形の辺を一辺とする正三角形をかく。

・入口を頂点とする角の二等分線を引く。

○自分の考え

・灯台と入口を結んだ線分と直角になる垂線を引く。

・灯台と入口を1辺とする正三角形をかく。

・残りの30°の角の二等分線を引く。

○自分の考え

・灯台と入口を通る直線を引く。

・入口を頂点とする正三角形をかく。

・入口を頂点とする60°の二等分線を引く。

・外角120°+二等分線30°=150°の角の二等分線を引く

・グループ内での交流後,学級全体に説明する。

   
○指令3を取り組む。
・垂線をかき,宝の位置を見つける。
○一点と直線の距離を表す直線が垂線となることを気づかせる。

・垂線のかき方を確認する。
 
○本時の学習のまとめと,次時の学習内容を確認する。    

3.授業の実践を通して

作図の学習では良くある「宝探し」の実践である。しかし,この「宝探し」というキーワードを与えただけで,子ども達が“わくわく”授業に取り組み,積極的に課題を解決しようとするから不思議です。

さて,本時は課題の一つに「75°の作図」を取り上げたことにより,作業的な活動だけではなく,思考的な活動が加わり学習に対する興味や関心を増すことに繋がりました。

75°の作図は“45°+60°÷2”や“60°+30°÷2”など,単純な数字の組合せです。既習の作図からその関係に導く過程で,直感力や思考力などを育むことができたと考えています。また,数学的な活動の楽しさには,学んだことを活用して問題を解決し,その有用性を理解したり,友達との話し合いの中で自分の考えが認められたりする活動があります。当然,すべての生徒が自分なりの考え方を持って問題解決できたわけではありませんが,「あっ,そうか〜〜」という顔で仲間の考え方を聞く子ども達にも,数学的な活動のすばらしさが伝わっているものと思っています。

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