1 主題設定の理由
新学習指導要領では「生徒に生きる力をはぐくむことを目指し,基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむために,主体的に学習に取り組む態度を養うことに努めること」と示している。「また,その際,生徒の発達段階を考慮して,生徒の言語活動を充実するとともに,家庭との連携を図りながら,生徒の学習習慣が確立するように配慮しなければならないこととした。」と続いている。
数学においては,数学的な思考力・表現力を育成するためには,根拠を明らかにして筋道を立てて体系的に考えることや,言葉や数,式,図,表,グラフなどの相互の関連を理解し,それらを適切に用いて問題を解決したり,自分の考えを分かりやすく説明したり,互いに自分の考えを表現し伝え合ったりする活動が求められている。
これらの目標を達成するために新たに数学的活動が新設された。
新設の数学的活動においては,A数と式,B図形,C関数及びD資料の活用の学習やそれらを相互に関連付けた学習において
ア 既習の数学を基にして,数や図形の性質などを見いだす活動
イ 日常生活や社会で数学を利用する活動
ウ 数学的な表現を用いて,根拠を明らかにして筋道を立てて説明し伝え合う活動
を行うことである。
上記の3つの学習を具現化することによって,生徒は物事を論理的に考え,筋道を立て説明できる能力を育成することができると考えた。それにより,言語活動を通して自らの考えを内省し,他者に伝えることによりコミュニケーション能力を養えると考え本主題を設定した。
2 研究の仮説
(1)ガイダンス機能を充実させることで生徒に学習の目的やねらいを明確にする。それにより,生徒は目標をもって学習に取り組める。また,教師が予め生徒に指導する目的,内容を伝えることで教師も意識し指導にあたれる。
(2)章または領域の終わりに,それまで学習した既習事項をもとに考える課題を与え,生徒ひとりひとりが自ら考え,数学的用語や式,図,表等を使いながら根拠を明らかにして筋道を立てて考える授業構成を行うことで論理的に考え説明できる能力を養える。
(3)クラス内で互いに自分の考えを表現し伝えること,人の意見を聞くことによって,数学に対する学習意欲を高め主体的に学習する態度を養える。
(4)ICTコンテンツと工夫あるノート指導を通して授業を行うことによって,生徒が数学に興味を持ち,ノートを有効に利用することにより主体的に物事を考え,解決する態度を養える。
3 研究の視点
(1)課題解決学習による多様な考え方
・ オープンエンドによる授業
・ オープンエンドで出た課題の追求
(2)ICTコンテンツの利用
・ 電子黒板(E黒板)を利用した授業
・ プロジェクタ−,スキャナーを利用した発表
(3)構造化された板書計画
・ 学習内容の明確化
・ 学習課題が一目でわかる板書
(4)わかりやすいノートの作成と,それを活用した自ら考える学習
・ 自分だけの参考書になるようなノート作り
・ ポイントと自分の課題が明確になるノート
・ 日々の成果を記入し励みになるノート作り
(5)発表方法の徹底
・ 発表方法のマニュアル化
4 研究視点に基づく授業構成
本主題を追求するために,研究の視点に基づいた授業構成を以下のようにした。本主題を追求するための要素は5つである。
1 問題解決型の課題
2 ICTコンテンツの利用
3 構造化された板書
4 工夫されたノート
5 発表方法の確立 である。
以上5つの要素を意図的,有機的に構築することで,生徒が主体的に物事を考え,解決する能力を養い,さらに互いに発表することを通し多様な考え方や論理的に表現する能力を高めることができる。
指導者が授業を行うにあたり,授業構想と留意点は以下の通りである。
(1)指導者側から考えた授業構成
(2)生徒側から考えた学習方法
一つの単元を基礎事項の学習と問題解決型課題の学習の2本柱で授業を構成した。基本事項の学習では,既習事項の積み重ねと生徒の考えや発想に重きを置いた問題解決型課題を解決するための基礎能力の育成に充てた。
また,ノート指導と構造化された板書計画を行うことで,生徒が自ら課題に取り組みそれを解決できる基礎力を養う授業を行った。
次に,問題解決型課題学習では,50分の時間の30分程度は自分自身で思考する時間と生徒同士の意見交換の場とし,できる限り教師は発言を控えた。状況に応じて生徒に助言をすることは行ったが,生徒の学習活動を見守る場面を多くするように心がけることが大切である。
最後の20分間を生徒の発表場面とし,発表を通して数学的用語を用いて論理的に表現できる能力を育成した。
5 授業による実践と検証(1)
【事例1】一次関数
一次関数の指導計画
節 |
項 |
指導内容 |
時数 |
|
1一次関数 |
@関数の意味 A関数の意味 |
2 |
2変化の割合 |
@一次関数の値の変化 A変化の割合の意味 |
1 |
3一次関数のグラフ |
@一次関数y=ax+bのグラフの意味 A比例のグラフと一次関数のグラフとの関係と切片の意味 B傾きの意味と変化の割合との関係 C一次関数のグラフを,傾きと切片を用いてかくこと |
3 |
4一次関数の式を求めること |
@一次関数のグラフから,傾きと切片を読みとって式を求めること A傾きとグラフ上の1点の座標から式を求めること Bグラフ上の2点の座標から式を求めること |
3 |
|
1方程式とグラフ |
@ax+by=cのグラフ A方程式のグラフを,2点を求めてかくこと By=kのグラフ |
1 |
2連立方程式とグラフ |
@連立方程式の解とそのグラフの交点の座標との関係 A2直線の交点の座標を,連立方程式を用いて求めること |
2 |
|
基礎基本を利用した 問題解決型課題演習 |
(1)動点問題:三角形の面積の変化を捉える (2)座標を文字で表現し,条件に沿った方程式を立て問題解決を図る (3)グラフから情報を読み取り,自ら課題を考え解決する (4)(3)の発展型 |
|
【授業1】問題解決課題学習の内の第3時間目
指導の流れ |
指導記録 |
学習活動の様子 (板書,ノート,話し合い) |
|
T:今日はこのグラフから読み取れることをできるだけ,書き出してみよう。グラフから得られる情報はどれくらいあるだろう |
生徒はグラフだけ与えられ,少し不安そうな顔つきだったが,作業を始める。 |
|
生徒から出された情報
・兄は8:00に家を出る
・妹は8:20に家を出た
・家から図書館まで4km
・妹の方が兄より速い
・兄は時速4km
・妹は時速9km
|
【学習課題の問題解決の足跡】
|
|
妹は兄に追いつく
T:妹はいつ,どこで兄に追いついたのだろう。
どうして,妹は兄を追い越したの?
(二重線の質問は,生徒の想像力から具体的問題を考えさせるための質問)
|
|
生徒の取り組み
・グラフから式を求める生徒多数いる。
【留意点】何人かの生徒が一目盛り10分を1目盛り1として考え式を立てた。
T: | 教師の助言(つぶやき) 一目盛り1とは限らないけどグラフから式を求めることは基本の確認ですね。 | |
S1:兄は原点を通り,60分で4km進むから 傾きはだからになる。
S2:妹は,20分で3km進む 傾きは,(20,0)を通るからに(20,0)を代入しbを求めると−3になるから
T:別の求め方をした人は?
S3:傾きはグラフを読み取ってとすぐ分かる。切片は傾きから,(20,0)からX方向に20戻るから,Y方向には3下がることが分かるから切片は−3とすぐに分かります。
|
|
T:2つのグラフの交点は何を意味しているのかな。文章でわかるように答えてください。
T:交点はどう求めたの。
S4:2つの式を連立させ,方程式を解いた。解くと交点は(36,2.4)
T:この交点を説明してください。
S5:8:36に2.4kmの地点で追いついた。
T:少し補足して?
S6:妹は8:36に家から2.4kmの地点で出会った。
T:いいですね。別の表現方法は?
S7:妹は8:36に図書館から1.6kmの地点で出会った。
T:確かにこれもいいですね。
|
|
【授業2】問題解決課題学習の内の第4時間目(3時間目の発展)
さらに学習課題を深めるために以下の課題に取り組み深化を図った
【授業1】で基本的考え方を深めたおかげで,【授業2】の問題については,多くの生徒は苦もなく解決策を講じ解決することができた。
生徒のアンケートから検証
章の終わりに生徒に記述式でアンケートを行った
アンケート@,Aの生徒が書いた内容語句から以下の傾向を読み取ることができる。
@のアンケート内容の分析
グラフからの情報の読み取り
良くできた | 81 |
少しできた | 4.8 |
できなかった | 14.2 |
多様な考え方
多様な考え方で解決できた | 64.3 |
多様な考え方で少し解決できた | 21.4 |
多様な考えかたができなかった | 14.3 |
Aのアンケート内容の分析(複数回答有り)
苦手・難しい | 9.5 |
生活との関わりに気づいた | 2.4 |
意欲的に取り組めた | 33.3 |
新しい発見をした | 31 |
多様な考え方を学んだ | 35.7 |
理解を深めることができた | 35.7 |
既習事項とのつながりを認識 | 21.4 |
B一次関数の授業を終えての生徒の感想【抜粋】
・自分の考え方と違う考え方の人がいたら,それもノートに書くようにしていたので,色々な考え方について学べたと思います。今まで学んだことをもとに考えることは難しいけど大切だと思います。
・最初は一つのやり方でできたら他の方法を探したりしなかったけれど,一番簡単なやり方でできた方が良いので,最近は色々と考えてみたりしている。これからはもっと色々な解き方を見つけたい。
・色々な方法で解こうとすることが前より多くなったと思う。応用問題も少し友達に教えてもらったけど,自分の力で解けたこともあった。
・今まで連立方程式ですべてを解くことが多かったけれど,グラフをもとに考えたり,式という式を立てずに考えたりすることができた。
・一つの式でグラフを書くことができたり,グラフから式を読みとることができるようになりました。前に勉強した連立方程式を利用してグラフを読み取ることができるのが前の勉強にも繋がるんだなと思いました。
・問題を解決するための方法がたくさんあることを学んだ。
・一次関数はグラフや式だけでなく,応用したら三角形の面積なども求められることに驚いた。
・今まである一つの方法でしか解けなかった問題をグラフを学んだことで多彩な方法で解けることができた。そして楽に解けるようになって嬉しかった。
【考 察】
以上のアンケート結果から考察すると,グラフの情報の読み取りは多くの生徒はできた。それにより,多様な考え方を駆使し問題を取り組もうという意識も80%を越えることができたと考える。
さらに,学力向上につながる要素である興味・関心・意欲,新しい発見,理解の深化についても多くの生徒が感じ取り学習を行うことができた。また,既習事項のつながりを認識しながら学習につなげる生徒も見受けられた。これは,系統的に学習し,学習を体系化するうえでは欠かせないことである。既習事項とのつながりを生徒がもてるように高めることをねらいにすることが次章での目標になる。
授業による実践と検証(2)
【事例2】図形の調べ方
1平行と合同
節 |
項 |
指導内容 |
指導 時数 |
|
1角と平行線 |
@対頂角の性質 A平行線と同位角の関係 B平行線と錯角の関係 |
2 |
【問題解決課題1】 |
@三角形の内角の和が180°であることを証明する。平行線を利用し,180°になることを証明し,それについて説明する【数学的用語を利用し説明する能力の導入】
A三角形の内角と外角の関係
B角の分類と三角形の角による分類
C多角形の内角の和,外角の和 ← 補助課題
|
4 |
【問題解決課題2】 |
【発展課題】色々な形の図形の角度を求めよう。星形などの図を用いて角度の和を求める。生徒の多様な考え方から数学的考え方と問題解決能力を深化する。 |
3 |
3三角形の合同 |
@合同とは A合同な図形の性質 B三角形の合同条件 |
3 |
|
1証明とそのしくみ |
@証明とは A仮定と結論 B証明のしくみ C証明の根拠 |
2 |
2証明の進め方 |
@三角形の合同から証明しよう |
1 |
【授業1】平行と合同(3時間目)
指導の流れ |
指導記録 |
学習活動の様子 (板書,ノート,話し合い) |
|
T:三角形の内角の和は180°になることは小学校で学習したと思います。 今まで学習したことをもとに,三角形の内角の和は180°になることを証明してみましょう。 |
|
|
T:15分間で考えてみよう。(時間を予め言うことでメリハリをつける)自分の考えが出し尽くしたり,行き詰まったらまわりの人と相談してもいいです。
S:(生徒たちは,机上で思い思いの発想で課題解決に取り組む)
T:今までの学習を振り替えよう。一つの方法以外に別の方法はないかな。(声かけ,助言)
|
|
|
T:色々の方法で考えている人たちが多いですね。パソコンでスキャンしてそれをもとに説明してもらいます。
S1:私はABと平行な直線を頂点Cから引き∠Aが錯覚で∠Cの隣の外角の一部に,∠Bは同位角で∠Cの隣の外角の一部に移り一直線上位なるので180°だと思います。
S2:私は,∠AにBCの平行線を引き,角を集めました。∠B,∠Cが∠Aのまわりに錯覚が等しいので集まり一直線上になり180°です。
S3:ABに平行な平行線とBCに平行な平行線を2本引きます。そうすると△ABCを裏返した三角形を合わせた四角形になります。四角形の内角の和は360°(注:誤答ではあるが,誤答を取り上げることで矛盾点を考えさせる。また,多角形の内角の和の基本的考え方に触れられると考えた。)なので三角形の内角の和はその半分の180°になります。
T:今の説明でちょっと気になるところがあるんだけれど,何だか分かるかな。
【しばらく生徒は思考】
S4:三角形の内角の和が180°が分からないのに四角形の内角の和を求めることはできないと思います。
T:三角形をもとに四角形を考えることは大切な事ですが,三角形の内角の和が求まらないのに四角形の内角の和を求められないですね。
|
【学習課題の問題解決の足跡】
|
発見からまとめ
生徒は,課題解決のために既習知識を活用し解決に向けて問題に取り組んだ。
そこから,問題解法の視点を得ることができた。平行線を引いて角を集めること,角を分割すること,直線は180°であることの有効性などを獲得した。
また,新たに三角形の1つの外角は隣にない内角の2つの内角の和に等しいことを発見することができた。
|
・角を集めることで解決する。
・平行線を引くことで角を集められる。
・1つの角を分割する考えが有効。
・直線に帰着。直線は180°である。
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【授業2】問題解決課題学習の内の第4時間目(3時間目の発展)
指導の流れ |
指導記録 |
学習活動の様子 (板書,ノート,話し合い) |
|
T:今まで平行線と角,多角形の内角の和,外角の和を学習してきました。今日は,今までの学習を生かし,課題を解決してもらいたいと思います。 |
|
|
T:今日の課題は,星形の角度の和をもとめるという課題です。時間は約20分。周りの人と相談してもいいです。
S:(生徒たちは,机上で思い思いの発想で課題解決に取り組む)
T:一つの方法が見つかった人は別の方法はないか考えてみよう
|
プリントを配布
生徒は課題に取り組み出す。
|
|
S1:a,dの角の和とb,eの角の和は三角形の内角と外角の関係から赤い三角形の中に閉じこめられます。三角形の内角の和は180°なので星形の角度の和は180°です
S2:b,eの角の和は三角形の内角と外角の関係から図の位置に移ります。 以前問題演習でこの形の和はくぼんだ位置に等しいので一直線上にすべての角がくるので180°です。
S3:僕は,の形のくぼんだ角は対頂角で三角形の中に閉じこめました。三角形の中にはaからeまでのすべての角が入るので180°になりました。
S4:私はてっぺんの頂点から平行線とみたて錯覚で角をうつすことを考えました。 aの角の左右にc,dが錯覚で移り,b,eも錯覚で移します。大きな三角形の中にすべての角がおさまるので180°です。
S5:頂点を結んで5角形をつくり考えました。5角形の内角の和から必要ない角を引きます。必要ない角は,五角形の外角の和になるので180×(5-2)-360=180°になると考えました。
| |
発見からまとめ
三角形の内角の和を導いたとき以上に,生徒は,課題解決のために既習知識を活用し解決に向けて問題に取り組んだ。
平行線の利用,多角形の内角の和,問題演習を通して既知の学習の利用するなど生徒の発想の豊かさが目立った。
また,発表の様子も回数を重ね経験することで筋道をたて発表できる生徒が多くなってきた
|
星形の問題を解いた後,多様な考え方で取り組める問題を数題行った。
それにより基礎を活用し,問題解決できる能力の育成を行った。
|
6 生徒の変容・意識調査
本研究を行うにあたり事前アンケートと授業後の事後アンケートを行った。結果の比較と生徒の授業を受けての感想は以下の通りである。
|
十分あてはまる |
少しあてはまる |
あまりあてはまらない |
全くあてはまらない |
あてはまる |
|
事前 |
現時点で,問題を解くときに色々なとき方を考えて解くか |
12.2 |
65.85 |
19.51 |
2.439 |
78.05 |
+15% |
事後 |
問題を解くときに色々なとき方を考えて解くようになったか |
30.23 |
62.79 |
6.977 |
0 |
93.02 |
|
十分あてはまる |
少しあてはまる |
あまりあてはまらない |
全くあてはまらない |
あてはまる |
|
事前 |
時点で,問題を解き終えた後でも,別の解き方を考えたか |
10 |
35 |
42.5 |
12.5 |
45 |
+30% |
事後 |
問題を解き終えた後でも,別の解き方を考え解くようになったか |
27.27 |
47.73 |
20.45 |
4.545 |
75 |
|
十分あてはまる |
少しあてはまる |
あまりあてはまらない |
全くあてはまらない |
あてはまる |
|
事前 |
現時点で,なぜこの様な解き方か考えながら解いているか |
35.9 |
38.46 |
25.64 |
0 |
74.36 |
+21% |
事後 |
なぜこの様な解き方か考えながら解くようになったか |
36.59 |
58.54 |
4.878 |
0 |
95.12 |
|
十分あてはまる |
少しあてはまる |
あまりあてはまらない |
全くあてはまらない |
あてはまる |
|
事前 |
現時点で,問題の解き方を数学的用語を用いて説明することは得意か |
5.128 |
35.9 |
48.72 |
10.26 |
41.03 |
+25% |
事後 |
問題の解き方を数学的用語を用いて説明することに抵抗はなくなったか |
23.81 |
42.86 |
26.19 |
7.143 |
66.67 |
|
十分あてはまる |
少しあてはまる |
あまりあてはまらない |
全くあてはまらない |
あてはまる |
|
|
同級生の発表を聞いて様々な解き方や発想があることに気づいたか |
65.91 |
31.82 |
0 |
2.273 |
97.73 |
|
平行と合同の章を終えての生徒の感想
1 図形の証明は,特に難しいと聞いたことがあったけど,楽しかった。例えば,三角形の外角の求め方とかは,どうしてこうなるのかと言うことが分かって良かった。覚えることはたくさんあったけど,問題を解いているうちに分かるようになった。
2 平行と合同で合同条件を学び証明に繋がっていたが自分で証明することはうまくできなかった。
3 ただ単に答えを求めるのではなく,性質などを利用していかに簡単な方法でとくのかということを学んだ。
4 分かっていることから,分からない部分の答えを導きだすことが楽しかった。今後も平行と合同,証明,幾何学の部分はより頑張っていきたい。
5 基本のことを応用すればできる問題が多かった。角度を求める問題は楽しかった。
6 自分で証明できると楽しいし,結構はまってしまう。数学とはただの計算でなく,言語を使う論理の問題なのかも。国語と深く繋がっていると感じた。
7 平行についてわかっていないと合同について分からないし,合同について分からないと証明についてわからなくなるから3つのことは大切だと思った。証明の書き方は法則があるように思いました。証明の問題をもう少しやりたかった。
8 証明では今まで学んだことを使い,筋道を立てないといけないということ。平行にはたくさんの考え方があるのでたくさん考えることができた。
9 証明の章では平行と合同で学習したことがすべて繋がっていておもしろい。でも,平行や合同で学んだことをよく覚えていなきゃいけないので大変だと思った。
10 最初,平行と合同,証明に入った時,理解することが難しく大変でしたが問題の数をこなしていくうちに理解できるようになってよかったです。
11 数学なのに国語みたいだった。
12 錯覚,同位角,対頂角などを勉強して中1のころまでは不可能と思われた図形の問題も解けるようになったので驚いたしうれしかった。証明では筋道を立てて説明することを学んで数学じゃなくても利用していこうと思った。
13 一見とても難しそうな問題も色々工夫をして考えれば簡単に解けることが分かった。
14 三角形の合同条件や平行線のところで学んだところを証明で使ったり,前の勉強したことをつながっていくんだなと思った。だから,どんどん次に繋げていくためには,これからの勉強も頑張って行きたいと思います。
15 塾で公式だけを覚えたけれど,この機会でなぜその公式になるのか分かった。
16 問題を解くにしても様々な解き方で挑戦してみることができるようになった。またそれで意欲が湧いてきた。
17 証明であることがらが正しくても,その逆が正しいとは限らないということには驚いた。色々な物の見方があるんだなと思いました。
18 学習した三角形の合同を使って筋道を立て証明するのは楽しかった。
19 角度の問題では入試問題にも取り組めてすごくためになったし,試験を意識することもできました。学んだことは,きちんと把握するように取り組んだので,これからもそのように学習していこうと思います。
20 対頂角は等しく,また平行線の錯角,同位角も等しいことが分かった。また,どんな図形でも外角の和は360°で,内角と外角の関係を使って角度を求める方法があることが分かった。角度を求めるときは,学習したさまざまな求め方をあわせて使いながら求めることが大事だと思った。
21 平行線を引いたり,同位角を見つけたり,自分は見つけることの出来なかった所を見つけていた周りの人たちの意見を聞いて,より一層深く理解することが出来ました。また,普通の計算とは違い,皆が共通して解ける(頭が良い,悪いに関わらず解ける)から皆,楽しかったと思う。今回,図形をみんなで扱ったことにより,様々な解き方を工夫して解けたのはよかったです。
22 平行線によって,同位角や錯角といったさまざまなことを学び理解できたのでよかった。合同や証明もしっかり理解してできたのでよかった。
23 証明は面倒くさかった。
24 一つの「分かっていること」からも,他のことと関連づけて考えることで「分かること」があるということが分かった。最終的な答えは一つでも,そこに至るまでの考え方はたくさんある。1つの考え方にとらわれず,いろいろな考え方をしてみることで,解けるものがある。
25 自分で考える時間をとった後,少し周りの友達と相談できる時間があってよかったです。また,前に出て自分の意見,考えを発表できるのはおもしろかったし,友達の考えも詳しく分かったのでこれからもやっていきたいと思った。
26 数学の用語を使って説明するのとかが苦手で証明が難しかったけど,友達の意見で考え方が分かった。他人の意見って大切だなと思いました。
27 △○○○≡△×××は合同△○○○=△×××は面積が等しいことを表しているのだと知った。図形でも知らなかった角度の求め方をたくさん覚えた。証明は,やっぱり苦手だと思った。3年も近いし,苦手をなくしたい。
28 証明がスラスラとできるようになってよかったです。
29 基本よりも発展,理屈を中心に学び,基本は予習として家でやりました。また,学校には様々な視点で図形を見て,考えるかどうかを特に重点的にしていました。なかなかアイディアは浮かびませんでしたが・・・。納得していないものをそのままにしないで,ちゃんと理解することがくせになってきたので,良かったと思います。
30 塾でやっていても,なんとなくやっていたから理解できなかったけど・・・。学校でやってからI could understand. 練習問題をたくさんやって力をつけたい。応用力とか・・・。
31 三角形の合同を証明するときは,3種類の条件があり,それを難しい言い方で言う言い方も習った。また様々な角度の和を求めるために平行線や内角と外角の関係など・・・色々な事を組み合わせながらより問題を早く解けるようになった。
32 一次関数のころは,まだクラスが先生と慣れていなくてめちゃ静か&自分もあんまり関数すきじゃない で,数学はキライだった。でも,やっとこの頃みんなが慣れてきて,数学が楽しくなってきた。(図形好き)時間があったら,慣れていない頃の教科をもう一度やって欲しいです。
33 証明は一つだけでなくて,たくさん解くやり方があるので,友達の発表を聞いて納得することが何回もありました。角度を求めるのは時間をかけて頑張って考えたので楽しかったです。ほかにももっとたくさん問題を解きたいと思いました。図形だけでなく,計算なども頑張っていこうと思いました。
34 証明の順番が分かった。
35 最初は証明なんてできないから嫌だと思ったけど,思ったより分かりやすく楽しかった。
36 一つの外角を求めるとき,いつもめんどくさい方法をやっていたけど,方法を覚えて楽に求められるようになった。
37 平行では錯覚,同位角が等しくなる。合同では対応する辺や角度が等しくなる。平行と合同でやった内容が証明に役立っているので,問題が解きやすかった。
38 色々な考え方で求められた。他の人のいろいろな意見もみえてためになった。
39 塾で初めてやったとき,証明の仕方が全く分からず置いてきぼりになって困ってしまいました。けど,学校で合同条件を一番最初に学び,そこから証明の仕方を学ぶ。この様に順序立てて学べると,とても楽です。これからの直角三角形の条件から証明する間も同じ様にしてもらえると助かります。
40 塾の先生が説明が下手だったので,まったくというほどわからなくて,学校で教えてもらってやっと分かりました。三角形の内角と外角の関係,対頂角の関係とかを難しい図形の中で見つけられようになりとても良かった。(解きやすくなった)
41 証明の文を書くのが疲れました。よく,角度の問題で錯覚を見落とすので気をつけます。三角形の合同条件はバッチリ覚えたけれど,平行四辺形の合同条件が覚えられないので授業でたくさん証明をしてください。電子黒板をみているとだんだん,目が疲れます。
42 塾で習ったのとは違うたくさんの方法を考えることができて,とても良かったと思います。これからも,一つの方法に限らず,色々な方法で問題を解けるようにしていきたいです。合同・・・やっぱり苦手です。だから頑張って,家でも勉強します。
【考 察】
ほとんどの多くの生徒は事前事後のアンケート,生徒の感想からわかるように,色々な解き方を考えて問題に取り組むようになった。また,同級生の発表を聞くことによって深める学習が行えた。それにより,生徒一人一人の学習に対する意欲を喚起することができた。生徒の学習に対する変容として自発的に積極的に学ぼうという姿が本研究に取り組む前と取り組んだ後で大きく変わった。
数学的用語を用いて発表する活動については,事前,事後のアンケートから「十分あてはまる,少しあてはまる」が25ポイント上昇したが全体としては67%に終わった。発表することについては,生徒一人一人の性格的なこともあるが,課題を残す結果となった。今後は発表力を今以上に抵抗なく行える指導法を研究する必要がある。
7 成果と課題,今後の展望
(1)課題解決学習による多様な考え方
基礎・基本の徹底を図った後,課題解決学習を意図的に取り入れることで,生徒は課題解決学習の内容に興味を持ち意欲的に取り組んだ。また課題解決学習を行っている際も,基礎事項の確認を行うことでフィードバックしながらの学習となり,基礎事項の定着をさらに図ることができた。
(2)ICTコンテンツの利用
ICTコンテンツを利用した授業は,教師側にも生徒側にも多くのメリットがある。教師側のメリットは,学習課題の提示が用意である点があげられる。スキャナーで取り込んだり,作成した教材を簡単に提示できる。教科書準拠の電子黒板用教科書を用いると図形の移動,図形の回転なども容易に行え,視覚にうったえる授業が展開できる。
生徒にとっては,図形の移動,回転,展開図については視覚的にとらえられ直観的に理解できる。発表の際,生徒のノートや生徒が書いた授業プリントをスキャナーで取り込んだり,ウェーブカメラでキャプチャーしたものをプロジェクターで投影し発表がしやすい点があげられる。
授業を行うときの留意点として,教師の板書が少なくなることによって,進度が早くなりすぎることである。生徒の様子をしっかり把握し,通常の授業以上に進度の調整に気を配る必要がある。またプロジェクターで投影することで,生徒の感想にもあるように,生徒に与える身体的影響である。明るい画面を凝視しすぎると,目の疲れを感じる。これは,教師側も同様である。
(3)構造化された板書計画
1時間ごとの授業の目当てを明確にすることで,学習者に何について学んでいるのかを一見してわかる板書を心がけた。その理由の一つとして,特別支援を必要とする生徒の対応である。特別支援を必要とする生徒は,目当てを明確にすることで,集団の中でも他の生徒と同様に学習できることが分かっている。この学習内容を明確にすることは,通常の生徒にもわかりやすい授業を行うためには必要なことである。特別支援を必要とする生徒に分かりやすく教えることは通常の生徒にも分かりやすく教えることに通じる。
構造化された板書は黒板を三分割し,左にはプロジェクターの投影,中央はチョークを用いた板書,右側は学習内容のポイントを書くように心がけた。構造化された板書は,(4)のノート作成にもかかわる。
(4)わかりやすいノートの作成と,それを活用した自ら考える学習
ガイダンスのときにノートの作り方について指導した。このノートのとりかたはコーネル大学方式を参考にしたものである。以下に生徒のノートを紹介する。
上記のようなノートを作成させ,ノートを参考に課題を解決する手だてを考えさせるように指導助言を与えていった。それにより,自身のノートをもとに試行錯誤し問題に取り組む生徒が多くなってきた。
(5)発表活動について
生徒にとっては目新しい活動であった。ガイダンスで発表の仕方について事前指導を行った。○○は△△だから□□になります。というように筋道を立て,そう考えた根拠は何かを明確に言うこと。さらには,数学的用語をきちんと用いて発表できるようにしよう。ということを目標に掲げ,全員に発表活動を行わせることができた。
最初は,戸惑いながらの発表も回数を重ねるごとに発表の仕方にも慣れてきた。また,発表した内容について,追発問をすることで生徒に考えさせたり,説明の際にでてくる矛盾点についても考えさせる活動を行うことができた。多くの生徒は,クラスメートの発表を通して新たな発見をし,自身の考えを深める活動ができた。一方,発表については,多くの生徒は抵抗感なく発表できるようになったが,一部の生徒はまだ定着していない。これは,今後の課題である。
(6)その他
本研究はICTコンテンツを利用した取り組みである。ICTを有効に活用できるか否かは,設備の使い勝手による。
今年度から,多目的教室をプロジェクター,スキャナーつきプリンター,ノートパソコン,音響設備を常設としたICTコンテンツ専用の教室にした。それにより,すぐに利用できる環境で授業を始めることができた。設置等を毎回行うことになると,なかなかやることができない。環境を整備し,それを利用できる人材を育成することでICTコンテンツを利用した授業が広まると考える。
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