東京都小平第四中学校 吉田 修 |
1.はじめに
学習指導案改定に向け,各教科,領域において「生きる力」をどのような方法でどのように育成していくのか,大きな課題として残っている。社会の中で自立し,役割と責任を果たしながら,自分らしい生き方を追究する個人の育成に「教育」がどう関わっていけるのかということである。 「生きる力」とは,『確かな学力』『健康・体力』『豊かな人間性』という3つの力から構成されるものであると述べられている。 そこで,数学における『確かな学力』とは"本質の追究"をテーマに数学の授業が展開される必要があると考える。つまり,数学的な活動の楽しさを味わいながら,自ら考え,自ら学ぶ力を育成することが,今後さらに重要になる。子どもの主体的な学習への働きかけが起きるように,子どもの知的な好奇心を奮い立たせるような学習過程を意図的に仕組む必要がある。
数学科の目標についても,「数量,図形などに関する基礎的な概念や原理・法則の理解を深め,数学的な表現や処理の仕方を習得し,事象を数理的に考察する能力を高めるとともに,数学的活動の楽しさ,数学的な見方や考え方のよさを知り,それらを進んで活用する態度を育てる。」とあるように,数学の学習活動を通して知識や技能を習得させるだけでなく,生涯にわたり数学を学習し,数学を進んで活用する態度を育成しようというねらいが含まれている。 「確かな学力」という視点からとらえた場合,これからの数学科教育は,数学的な活動の楽しさを味わいながら,自ら考え,自ら学ぶ力の育成が必要であり,自ら発展させる力の育成を一層図ることが重要であると考えられている。 これらのことから,子どもが主体的に問題に取り組んで解決し,解決した過程の振り返りを通して,数学の学習に対する充実感を十分に味わえるようにすることが,今後の数学科教育に求められている。 そこで,子どもの知的な好奇心が原動力となり,問題を自分なりに考えて解決することに楽しさや喜びを感じることができるような学習過程を仕組む必要があると考える。そして,そのような学習過程により新たな数理を見いだそうとし,根拠を明らかにしながら数理を構成し,構成した数理を積極的に活用する子どもを育成することが大切だと考える。
本校第1学年の生徒の計算力を1学期の定期考査から分析すると小数,分数を含む正負の計算,文字式の計算についての正答率が低いことが明らかになった。分数についての本質的な意味が定着していない点が上げられる。 分数を含む1次方程式を解く際には,等式の性質を解決の見通しとしてもつ,問題解決的な思考過程が必要であると考える。 2.研究主題について
本授業では既習の知識や技能を基に,新たな数理に対して必要さをもったり,新たな数理を自ら見いだしたり,新たな数理のよさを認識する活動である。 これまでの知識や技能を活用して解ける問題を通して,さらに新しい知識や技能を利用した方がより良い解き方だと感じたとき,知的な好奇心が駆り立てられ,今までの考え方以上の解き方を明確にしたり,その良さを活用するには何をどうすればよいのかを考えたりする。 つまり,自発的な学習の動機付けが起こる。そして問題解決を図るには根拠を問いながら,根拠を明らかにし,新たな考えのよさに気づく活動を行い,新しい知識として活用できる能力を養う。
生徒の実態から,特に,分数に対する苦手意識は大きい。本授業では,本質的な分数の意味を理解し,小数,分数を含む1次方程式を解くことができる生徒を育てる数学科学習指導法の究明を図ることである。 3.本授業について
4.教科書の等式の扱いについて 72ページ,73ページについては方程式の解き方について線分図を用いた方法で“方程式を解く”ことについて説明している。 74ページ,75ページで等式の性質について説明している。ここでは,天秤を使った説明になっている。等式の両辺に同じ数をたすことと同じ数を引くことについて説明はされているが,両辺を同じ数で割ったり,両辺に同じ数をかけることについての説明はなされていない。 等式の性質について一貫した説明ができていないと感じた。 線分図を利用した考え方ならば,小学校時代から慣れ親しんだ方法で,なおかつ分数指導にも有効な手段であると考えた。 |