授業実践記録

授業実践記録 〜基礎・基本の定着を図る手だて〜
大阪府中学校 数学教諭

1.生徒の実態

 本校の生徒は,楽しいことにはよく反応し,質問にも積極的に答えていく雰囲気がある。しかし,数学に関しては,入学時点ですでに大きな差があり,授業が進むにつれて意欲をなくしてしまいがちである。家庭学習をほとんどしない生徒も多く,学習内容がなかなか定着しない。


2.図形の定理別プリント

 図形において《定理別プリント》なるものを定理ごとに2,3枚ずつのプリントを作成したところ,「初めてプリント1枚を仕上げることができた」という声があがるなど意欲的に学習に取り組めた。

 《定理別プリント》は,同じ定理を繰り返し使うので定着させるのに最適である。

 《定理別プリント》とは,

   1 対頂角は等しい。
   2 平行ならば同位角・錯角が等しい。
   3 同位角・錯角が等しいならば平行である。
   4 三角形の内角の和は180°である。
   5 三角形の1外角その隣にない2つの内角の和に等しい。
   6 n角形の内角の和=180°×(n−2)
   7 n角形の外角の和=180°
   8 三角形の合同条件

以上の定理について,一つ一つの定理について類題をたくさん集めたプリントである。

 次のプリントは,上記12の定理を混在した内容である。


 その他の種類のプリントは,省略させて頂きます。

 授業では生徒が,数種類の定理別プリントを自分で選択させ,同じプリント同士のグループ学習として取り組んだ。選択授業でも活用した。

 下のグラフは「基礎学力テスト」(年度初めに実施するテスト)における,2002年度入学生と2001年度入学生の3年次の比較である。相対的には2001年度の学力が高い中にあって〈図形の単元の部分のみ特に高い正答率だった〉ことがわかる。



 右のグラフは,同じく「基礎学力テスト」において2002年度入学生が2年生の時と3年生の時の単元別の正答率を比較したものである。

 いずれも正答率がアップする中で,特に図形領域において顕著な成果が見られる。その理由は,2年時において《定理別プリント》を使って指導した成果だと考えている。


3.トランプゲーム(正の数・負の数)

 今年度の1年生に次のような,教科書の問題よりトランプゲームの要素を取り入れてみた。

練習問題
問題1を数式になおしなさい。
 
  1    
 
  2        
 
  3      
 
  4        
 
  5      
 
  6      
 
 徳島の新居信正さんより以前に教えていただいたトランプゲーム。赤のトランプを借金マイナスとして,黒のトランプを財産プラスとして,正の数・負の数の計算を身近な得点計算にまねて計算できることを指導する。

 練習問題の問題1ならば,
      (+5)+(−3)=+(5−3)
絶対値の大きい方の符号
 
差をとる

この場合は財産が大きいから+
指導の留意点として,
 すべて(    )+(    )
という式になおしてから計算をする。3のような問題,
      (−2)+(+5)+(−1)は,
同種類の足し算をした後,
      =(−2)+(−1)+(+5)
      =(−3)+(+5)
      =+(5−3)
というように計算する。
 +を財産,−を借金でというようにイメージして計算するとやりやすいのだろう。実際,イメージしにくい子には一つ一つ3万円の借金と5万円の財産,合計は?という問いかけをすると必ず答が返ってくることからイメージしやすいと判断できる。

 以上2つの例を出して,基礎基本の定着を図る具体的な手だてを述べてきた。検討していただいて,ご意見をくださるようお願いします。
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