課題学習数学の指導
マッチ棒の総数を求めよう
埼玉県 中学校数学教諭
1.目標

 (1) 自ら興味・関心をもち,意欲的に問題解決に取り組もうとする。
 (2) 帰納的に考え,文字を用いて一般的に考察することができる。
 (3) 式を読み,ことばによってわかったことを表現することができる。
 (4) 式を読んで,ことばから図に表現することができる。
 (5) 文字を用いることのよさを実感し,マッチ棒の総和の様々な求め方について理解することができる。

2.展開(一次関数終了後に1時間扱い)

学習の流れ予想される生徒の反応指導上の留意点(◇)評価(◎)
1. 問題を知る。
 
黒板に提示して, 問題を把握させる。
【問題】
 マッチ棒を規則正しく,下の図のように1列に並べたところ,正三角形がちょうど11個できました。使ったマッチ棒の総数を求めてみましょう。
いきなり文字を扱わず,文字を用いるよさが実感できるように具体的な数による問題にする。
2. 問題を解決する。
ア.一本一本数える→23本

イ.計算の方法を考える。
△正立の三角形が6個なので
 3×6+5=23(本)

ウ.▽逆に倒立の三角形が5個なので
 3×5+2+6=23(本)

エ.個数と本数の変化をとらえる。
→三角形1個増えると2本増えるので
 1+2×11=23(本)

オ.その他
実際にかいて確かめることで,この問題の構造がみえてくる。

机間指導で全員の解決方法を確認して,発表させる。

考え方を確認する発問をする。

自分なりの解法を見つけられるか。

アレイ図を使って式を考え,導くことができるか。

アレイ図を使って式の意味をわかりやすく伝えることができるか。
3. 個数を変えて,総数の求め方を考える。
 ・12個→25本
 ・13個→27本
 ・14個→29本

○1個増えると2本増えるのか。

○求め方はわかりそうだ。

○x個として調べよう。
1個ずつ増やしたとき,総数がどう変わるか確かめ,その規則性を見つけていく。

帰納的にとらえ,文字を用いて一般的にとらえることができるか。
4. 課題を設定する。
   
【課題】
 同じように並べて,正三角形がちょうどx個できました。使ったマッチ棒の総数を求めてみましょう。
「個数がわからなくても求め方はわかるかな?」と発問し,文字を使おうと意識させる。
5. 個数を文字に置き換えて考える。
ア.三角形が1個増えるとマッチ棒は2本増えると考える。11個のとき23本だから,
 2x+1(本)

イ.xが奇数のときは,
△正立の三角形が(x+1)/2(個),
上にあるマッチ棒は (x−1)/2(本)

3×(x+1)/2 (x−1)/2=2x+1(本)

xが偶数のときは(図は10の場合),

△正立の三角形がx/2(個),
上にあるマッチ棒はx/2(本)

3×x/2x/2+1=2x+1(本)

ウ.△と▽の合計がxであり,重なっている部分は(x−1)本だから,

3x−(x−1)=2x+1 (本)
問題の解決方法を想起させて,自分なりに求めるように指導する。

机間指導ではそれぞれの考えを認め後で生かせるようにする。
6. 発表し,考えをまとめる。
 
マッチ棒の総数をy本とすれば,
 y=2x+1
となり,一次関数と読むことができるか。
7. 式に表された数について考えてみる。
2x+1や2xや1には,どのような意味があるのか。
図に表してみよう。

 
1は最初の1本,あとは2本ずつ増えていく。
図に表すことで問題の構造がみえてくるようになる。
【追求問題】
 2x+1=x+(x+1)と形を変えることができる。このと きのx,x+1を図に表すことはできるのだろうか。
進んでいる生徒には追求問題を提示していく。

8. 自己評価する。
 
教師が提示した変形の式を図に表すことができるか。

3.第2時の学習内容について(時間にゆとりがあるときの場合)

 第2時の追究問題のように「式を変形して図に表すことはできないか。」と発問すれば,「2x+1=2(x+1)−1」など,生徒は自由に式を変形する。これによって式を読む学習が深まるであろう。ここで注意すべきは,複雑な式を取り扱うことによって,文字の式のよさを実感できなくなることである。生徒の実態から判断したい。
 また,「課題の条件を変えよう」と発問すれば,「正三角形を正方形や正五角形に変えて並べてみたら」などの答が生徒から返ってくる。これにより深化的課題として学習が継続されるであろう。

〈正方形の場合〉3x+1(本)

 これを扱い,さらに時間があれば下のような問題を提示していきたい。

【問題A】
 2人が交互に,1からある数まで順番に数字をコールしていく。ルールは,『(1)1回にコールできるのは2つまで』『(2)最後の数をコールしたら負け』とする。
 1から10まででやってみよう。

1  2  3  4  5  6  7  8  9  10

【実施例】
→ 先手の負け

 先手が勝ったり,後手が勝ったりすることを経験させながら,必勝方法があるかどうかを調べる方向にもっていく。そして多くの生徒が,

「10の場合は後手が3,6,9をコールできるので後手が有利である。」

ことに気づいてくる。
 次に,数を変えて11の場合や12の場合はどうかと経験させる。10の場合が後手有利だったことから,同様に考えながら実験を重ねていくうちに

「11の場合は先手がまず1をコールすれば,4,7,10をコールできるので,先手が有利である。」

「12の場合は先手がまず1,2をコールすれば,5,8,11をコールできるので,先手が有利である。」

 もっと数を変えていけば,このルールでのまとめが次のようになる。

「最後の数が(3の倍数)+1の場合は後手が有利,そうでないときは先手が有利。」

 このゲームの学習が深まれば,先の「マッチ棒の総数を求める」と関連させたいものである。『数をコールする』を『棒を左端から取る』と考えれば,図に表すわすと,

最後の数が(3の倍数)+1の場合,
(後手が有利なとき)


→正方形がちょうどx個できている。

 後手が先手に合わせて,ちょうど何個かの正方形になるように取ればいい。

そうでないときは先手が有利

→端数があり,それを先手が取れば
  ちょうど何個かの正方形になる。

問題Aにあるルール,

 『(1)1回にコールできるのは2つまで』

 『(2)最後の数をコールしたら負け』

の条件を変えようと考えると,さらに主体的な学習が期待できる。

 教科書「数学3年」(平成14年度版,啓林館)p.148に,「石取りゲーム」というゲームが紹介されている(下記参照)。

 次のようにルールを決めて,2人でやってみましょう。

 1. はじめに,3個以上の石を一列に等間隔に並べる。


 2. 2人が,この石をかわるがわる取っていく。

 3. 1回に取る石は1個または2個とする。
 ただし,2個取る場合は,はじめにとなりあって並んでいる石に限る。

 4. 最後に石を取った人を勝ちとする。

 2年で今回紹介したような学習内容を身につけていれば,「何か必勝方法はないだろうか。」と生徒は考えるだろう。まず着目するところは全体の数であり,何個取ればいいのか考えるのが自然の発想である。しかし経験を重ねるうちに,数だけではなく取る位置が重要なことに気づいてくる。ここで重要視したいのは,

『少ない数(3)からスタートして,数を増やしながら必勝方法を調べよう』

という帰納的な考えである。教師から「これまでの学習に関連づけられないか?」と発問すれば,並んだ石の対称性をくずさないようにすることが大事であることに気づく生徒が出てくる。
 指導書には次のように解説されている。

『先手が,最初に中央の石(石の個数が奇数の場合は1個,偶数の場合は2個)を取り,その後,後手の取り方に合わせて,並んだ石の対称性をくずさないように先手が石を取っていけば,いつでも先手が勝つことになる。』

 教科書では3年に掲載されているが,1年または2年でも充分に扱える内容であり,課題学習として計画的に実践していくことが重要である。

〈引用・参考文献〉
 ・教科書「数学1年」(平成4年1月31日 検定済,啓林館)
 ・教科書「数学3年」(平成13年3月10日 検定済,啓林館)


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