EXCEL(表計算ソフト)を用いて数学しよう!
佐賀大学文化教育学部附属中学校
伊藤 春雄
1.実践の意図
 平成12年度に,第2学年で「資料の整理」を指導するにあたり,現行の指導要領では高校以降へ統合された内容を,総合学習の情報教育や選択数学の中で実施できるように考えて実践してみた。指導のねらいも情報活用能力で育てるべき「課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力」を意識して作成した。

2.「資料の整理」と「課題学習」の実践
  (1) 指導のねらい
 コンピュータ(表計算ソフトを使用)で,度数分布表,平均,相関図等で資料を処理する能力を高め,情報を発信することができるようにする。

  (2)

 生徒の実態
 表計算ソフト(EXCEL)を使用することは,はじめてであるが,コンピュータリテラシーについては,第1学年の総合学習の中で身につけてきている。

  (3)

 実践
 次の表に示すように8時間の学習計画を立て,課題学習として本校生徒の生活習慣病のデータを分析する学習を設けた。学習の流れ2)〜6).については,まずコンピュータを用いて教師と一緒に作業を行い,次に,その操作を各自が行うという形式で学習を進めた。

〈学習の流れ〉〈配当時間 …8時間〉

1) 用語の理解
  
0.5時間

2) 度数分布表の作成

1.5時間

3) ヒストグラムと度数分布多角形

1.0時間

4) 相対度数とグラフ

1.0時間

5) 階級値による平均

1.0時間

6) 相関図と相関表

0.5時間

7) 課題学習

2.5時間

 「学習の流れ」の1)については押さえた用語を,2)〜6)については用いたEXCELのシートを,7)については完成した生徒の資料をそれぞれ紹介する。

●資料

  1) 基本的な用語
階級,度数,累積度数,度数分布表,ヒストグラム,度数分布多角形,相対度数,階級値,範囲,相関図,相関関係が強い,相関関係がない,相関表

  2)

 度数分布表の作成


  3)

 ヒストグラムと度数分布多角形

  4)

 相対度数と度数分布多角形

  5)

 階級値による平均

  6)

 相関図

  7)

 課題学習

【課題】
 本校の生活習慣病に関するデータを度数分布多角形,または,相関図を用いて分析してみよう。

○生徒の提出レポート(1)


[考察] 学年が高くなるにつれ,体脂肪率は右の方にずれていっている。

〈3年男子の悪玉コレステロ−ルと動脈硬化指数の相関関係〉


[考察] 悪玉コレステロ−ルと動脈硬化指数には相関関係がある。

○生徒の提出レポート(2)

〈体脂肪率分布〉



[上のグラフからの考察]
 全体的に15%〜20%に集中している傾向があることがわかります。さらに3年生になると,分布がだんだん 広がってくることから,(全体的な傾向として)“肥満”になってくることがわかります。
 これらのことから,3年生になっても,勉強ばかりしていないで,運動をしなければいけないと思いました。
 右の表は,2年男子の体脂肪率と,中性脂肪を比較したものです。単位が違いますが,相関関係はわかると思い,下のグラフを書いてみました。
 散分図にするとよくわからなかったので,面グラフにしてみました。最初,積み上げ式にして,相関関係があるものと思っていましたが,きちんとしてみると,図のようになりました。

 

[考察] 同じ“脂肪”という言葉がついても,体脂肪率と,中性脂肪は,さしているものが違う。ただ,山の形が似ているところも所々に見られるので,すごく弱いながらも,相関関係があるともいえると思う。

  (4)

 生徒の反応
 コンピュータを利用して学習を進めていくため,一回の授業を楽しみながら受けていた。また,実際のデータを用いて分析をはじめると相関関係は,強い場合ははっきりわかるが,そうでない場合を見分けるのは難しいようであった。さらに,生徒からは相関関係から実際の因果関係等の疑問が生まれてきた。また,ここでは生活習慣病のデータを用いたのでデータの意味や医学的な根拠を求めようとする姿も見られた。

3.実践の成果
 「資料の整理」の学習をEXCELで進めることができた。また,生徒が「資料の整理」を学習する意味を捉えることができた。コンピュータで学習する場合,できないということがはっきりするので質問する生徒やできる生徒と遅れている生徒が助け合う場面が見られた。生徒の感想にも「たくさんのデータを処理する時,コンピュータだとやり方をしっかりわかっていれば,何回も同じような作業をせずに簡単に行なえる。」「3年生の総合学習でアンケートを処理するときに用いたい。」とあった。

4.今後の課題
 第2学年の「資料の整理」の単元で指導を行なったので,時間の不足と最初からコンピュータの操作から入ったため,EXCELの操作の学習が中心となってしまった。また,健康に関する意識を高めるためにも,本校の生活習慣病のデータを用いたが,生徒の興味関心をひくには今一歩であった。
 次回は,選択数学の中で実施をし,机の上で紙と鉛筆を用いて分析をすることから始め,次に,コンピュータを利用し,コンピュータの有用性を実感させたい。また,自ら調べたいデータを集め,分析をさせたいと思っている。

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