1) | 関数のよさを感得させる指導について
教科書の練習問題をやっている段階から,関数がどのようにして問題解決とかかわっているのか,変数のもっている意味は何なのかなど,正しくおさえて学習を進めていった。こうした姿勢はレポートを作成する際にも生きていた。
生徒は,「1次関数の式やグラフを用いて問題を解決することのよさ」を感得できたのではないかと思う。自らが考えた問いを追求してテーマを解決したり,仲間のレポート発表を聞くなかで「1次関数という道具を使えば,(過去のデータから未来を予測できることなど)いろいろな問題を考察できる」ということを十分に理解できたようである。また,1次関数という道具だけでは限界があることや,直線で傾向を捉えることができるのはほんの一部分だということも,かなりの生徒が気づいていた。 |
2) | 身近な事象を探る活動について
生徒の調べた内容は,環境問題を中心に実にバラエティーに富んでいた。教科書中心の数学では学ぶことできない内容を,意欲的に,あまり困難さを感じないで調べていた。今回の実践を通して,生徒の本来もっている追求意欲の高さに感心させられた。生徒の表情を見て,普段の授業がいかに閉鎖的なものだったか思い知らされた。授業の『感想カード』からも「今度は塩分濃度を調べたい」「空気中の有害物質について知りたい」といった意欲的な記述が多くみられて,とても嬉しかった。
実際にグラフや式から未来を予想する段階になって「先生,このまま増え続けるわけないじゃん」「絶対,1次関数にならないと思う」などという声があがっており,レポート作りの際にもその姿勢がみられた。生徒のレポートの考察には「こうならないことを祈っていますが」とか「こんなうまくいくとは思わないが」などといった分析がみられた。こうした分析が,今後の関数指導の場面で生かせるようにしたい。 |
3) | 「総合的な学習の時間」との関連から
図書館でいきいきと学ぶ生徒の様子を見て,「世の中のことをテーマにすることは望ましいことなんだなぁ」と実感した。図書のもつデータは説得力があり,生徒たちが目を輝かせて調べ学習を行っていたのが印象的だった。
調べ学習の時間は,ほとんど司書に頼ってしまったが,生徒たちの様々なリクエストに柔軟に対応してもらえた。図書館だけでは見つけられない資料でも,司書から調べ方のヒントをもらって自分たちで考え,関係機関に電話して聞き出したという生徒もいた(「新潟県の高齢者人口の割合」を県の高齢者総合相談センターに電話してFAXをもらったり,「新潟県の自動車保有台数」を新潟陸運局に電話して聞き出したりという姿がみられた)。
今回の実践は,自ら考え主体的に判断し,行動できる資質や能力をもった生徒の育成につながったと自負している。「数学科は総合から最も遠い教科」という声を聞くこともあるが,数学科授業をもっと外に開く努力をしていくべきだと痛感した。 |