ハングルを読もう!〜2つ以上のものを合わせて1つにする(合成)〜
岡山県笠岡市立笠岡東中学校
高田 京子
1.はじめに
 ここ数年,課題学習についての研究も進み,文献やホーム・ページ等でも多くの事例が発表されるようになってきている。
 個人的には,課題学習の出始めの頃の「マッチ棒や碁石,多角形を一定の規則性で並べて数え,数式化していく問題」が好きで,どの学年,どのクラスで実践しても,おおむね満足のいく授業になっている。しかし,課題によっては,生徒にとって難しすぎたり,数学的な価値が見い出せず,後味の悪い授業になるものもある。
 今回紹介する実践事例は,生徒の興味・関心を引く題材ではあるが,数学的な発展性という面では,今一歩であると感じている。もし,もっと,数学的な価値を高めることのできる指導法があれば,発展させていただきたいと考えている。

2.題材とねらい
 ワールドカップ開幕の直前,「 ぼく,ハングルが読めるよ。」と,うれしそうに言ってきた生徒がいた。一見難解なハングルも,ルールさえわかれば読めるというのである。韓国への関心の高まっていた時期でもあり,これを課題学習として取り上げることにした。数学のどの単元に結びつけようかと悩んだが,無理をせず,数学的な見方や考え方の学習ととらえ,つぎのように,ねらいを設定した。

  
ねらい
 2つ以上のものを合わせて1つにすること(合成)は,数学的な見方や考え方の大切な一面となっている。ハングル,点字,投影図などを使って,この考え方のよさを実感させる。

3.授業の実際(3年の課題学習として設定)
  
導入
 韓国の文字,ハングルでは,「こんにちは」は,「」と書く。
 どう読めばいいのだろうか。

(答え)アンニョンハセヨ
 ・授業に対する興味・意欲を持たせる。

問1
 ハングルには,一定のルールがある。そのルールを見つけよう。

  ・何も思いつかない生徒には,「ア,イ,ウ,エ,オ」を拾ってみるよう助言する。
  ・机間指導し,「ア行に○がついている」などに気づいている生徒には,「トは何を意味するか」など,考えを深めさせる。
  ・わかった生徒には,黒板を使って,説明させる。

ハングルの成り立ちを説明する生徒

問2
 ハングルは,子音を表す記号と母音を表す記号の組み合わせでできている。次の表を完成させよう。
      (答え)

  ・ハングルは,限られた記号の組み合わせによって,たくさんの種類の文字を作り出している。このハングルのすばらしさに気づかせる。
  ・他に,同じような構成になっているものはないか,考えさせる。(生徒の反応:ローマ字表,点字,九九表,座標,確率で使ったサイコロの表など)

問3
 右表は点字を示している。これらの点字も,子音を表す記号と母音を表す記号とを組み合わせて1つの文字がつくられている。子音,母音を表す記号はそれぞれどの部分だろうか。

解答を板書する生徒


(答え) 母音を表す記号:左から
子音を表す記号:上から


  ・点字を表す6点のうち,上2つと中左の3点が母音,下2つと中右の3点が子音を示し,これら2つの記号が組み合わされて1つの点字が作られていることを確認する。
  ・問2,問3をもとに,次のことを理解させる。

 2つ以上のものを合わせて1つにすること(合成)は,数学的な見方や考え方の大切な一面である。この考え方は,数学に限らず,化学,物理,言語など,いろいろな分野で利用されている。

問4
 次の,空間図形を,真上から見た図と,正面から見た図にわけてみよう。ただし,影の形と考え,中に見える線は考えないものとする。

  ・投影図については,学習していないため,深入りせず,2つのものを2方向に分けて見るという図形の見方があるという程度にしておく。
  ・アイウエオ表から空間図形へと,視点を変え,合成の考え方が,さまざまな分野で利用できることを実感させる。

(答え) 真上から見た図:左から
正面から見た図:上から


問5
 3つの組み合わせを考えてみよう。
 真上から見た図,真横から見た図,真正面から見た図が,それぞれ右図のように見える空間図形とは,いったいどんなものだろうか。ただし,それぞれ影の形と考え,中に見える線は考えないものとする。



問5の空間図形の3方向の投影図
(答え)

実際に作成した問5の空間図形

問6
 身近なもので,同じような構成になっているものをもっといろいろと,さがしてみよう。

  ・学習内容を発展させて考えていこうとする態度を養う。

4.おわりに
 ハングルの表の作成,3方向の投影図から空間図形を求める,など,多くの生徒が興味をもって取り組むことができた。数学的な発展性としては,点字を2進法につなげたり,座標やベクトルへの発展も考えられたが,今回は,「数学的な見方や考え方」の範囲で留めた。実施学年は3年生であったが,1年生でも十分可能な授業である。授業での生徒の学習状況や提出レポートは,評価におおいに役立てることができた。
 最後に,生徒の感想を紹介して,授業の評価の一部に替えることにする。

普通の授業ではできないことができて,おもしろかった。ローマ字以外思いつかなかったので,今度見つかったら気にとめておこうと思う。
今回の授業で,あるきまりを見つけることは大事なことだと思った。2つ,3つのものの集まりで1つのものができるという考えもおもしろいと思った。でも,頭を柔らかくして考えないと難しいなあ。
あのわけのわからないハングルに,こんな簡単なルールがあるのがわかった。

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