オイラーの定理
長野県A中学校
1.題材について
 (1) 線分の図
 線分の図で,1つ1つの線分を辺,その両端の点を頂点ということにする。
 頂点の数をv, 辺の数をeとする。

 1つの樹形があったとき,これから,端の枝にある線分を1つとった樹形をつくる。すると,vもeも1つずつ減るからv−eの値は変わらない。枝にある線分をとる操作を,さらに続けていっても,v−eの値は,やはり変わらない。そして,最後に,1つの線分となり,このとき,v−e=1だから,もとの図についてもv−e=1となる。

 (2)

 線分と面の図
 線分の図に,それがかこむ面を含めて考えることにする。
 頂点の数をv,辺の数をe,面の数をfとする。


 図のように外側の辺を1つ取り外し(頂点は残す),これを辺に持つ面も同時に取り除くと,頂点の数は変わらず,辺の数は1つ減り,面の数は1つ減るから,v−e+fの値は変わらない。この操作を繰り返し行っていっても,その途中での,v−e+fの値は変わらない。そして,図形はついには,樹形(閉曲線を1つも含まない線分の図)になって,そのとき,v−e=1,f=0となる。だから,v−e+f=1である。したがって,もとの図についてもv−e+f=1となる。

 (3)

 オイラーの定理
 多面体の頂点の数をv,辺の数をe,面の数をfとする。

 1つの多面体Pで,頂点の数をv,辺の数をe,面の数をfとする。
 多面体Pから,1つの面を取り除く。できた穴を広げて,残りの面全体を,つながり具合を変えずに,平面上の線分と面との図Fにする。
 この図Fにおいては,頂点の数はv,辺の数はe,面の数はf−1であるから,
  v−e+(f−1)=1
 したがって,多面体Pの頂点,辺,面,v,e,fについて,次の関係が成り立つ。
オイラーの定理: 多面体で,頂点の数をv,辺の数をe,面の数をfとすると,
v−e+f=2

 (4)

 正多面体の辺の数
 多面体では,どの辺も隣り合う2つの面(多角形)の辺になっているので,正多面体では,(辺の数)=(1つの面の辺の数)×(面の数)÷2の関係が成り立つ。

 (5)

 発展
右図のような線分と面の図で,頂点の数をv,辺の数をe,面の数をfとする。v,eは変わらず,穴が1つ空いているとf−1,2つ空いているとf−2となるので,
  ア)v−e+f=0  イ)v−e+f=−1
一般に穴がn個空いているとすると,v−e+(f−n)=1−nとなる。
図のような立体の表面で,頂点の数をv,辺の数をe,面の数をfとする。v,eは変わらず,穴が1つ空いているので,面の数は立体なので2つ減り,f−2となるのでv−e+f=0
一般に穴がn個空いているとすると,v−e+(f−2n)=2−2nとなる。

2.授業の実際(多面体の場面)と考察
 T これは,なんていう立体かわかりますか。
 S 四角錐
 T 頂点はいくつですか。…5個です。面は…5です。
辺は…8本あります。多面体でも頂点,面,辺の関係がありそうですか? 去年つくった立体を持ってきたので,それを持っていって数えてもいいですよ。
 *見取図を配付する。
 T 多面体の頂点,辺,面の関係を調べてみましょう。
 T 予想がついた人は,前から正十二面体,正二十面体を持っていってそれについても確認してください。<机間指導>
 T 発表してください。
 S1 v−e+f=2
 S2 e−v=f−2
 S3 e−v−f=−2
 S4 (e−v)−f=−2
 T 正十二面体,正二十面体でもこの関係は成り立ちそうですね。ところで,面の数を数えなくても計算だけで出した人はいるかな……。少し考えてみよう。
 T 正二十面体で面はいくつある?
 S 20個
 T 1つの面の三角形に辺はいくつありますか。
 S 3本……。3×20=60本
 S 1つの辺を重なってるところは2回数えているので,2で割ればいいんだ。
 S 3×20÷2=30だ。
 T では,正十二面体も計算で出すとどうなりますか。
 S 1つの面は5角形になっていて,それが12個あるから5×12=60で,同じように2回ずつ数えているので,2で割って30です。
 T それでは最後に,どんな多面体でも,どうしてこのような関係が成り立つのかその根拠を考えてみてください。
 T 四角錐について考えてみます。右の面を取り外して,上から押しつぶしたとしてみます。どうなりますか。
 T 面の数はいくつありますか。
 S 4つ
 T これは平面の図になって,前にやったv−e+f=1が成り立ちます。
 T そうなるとしたら,この立体についてはどうなりますか。
 頂点の数はv,辺の数はe,面の数はf−1だから……。
 S v−e+(f−1)=1だ。この式を移項すると,v−e+f=2になる。
 T 多面体で頂点の数をv,辺の数をe,面の数をfとすると,v−e+f=2が成り立ちます。これをオイラーの定理と言います。

 ここで学習したことをまとめると,このように辺,面,頂点の関係を調べるには,
(1) まず,いくつか実際に調べてみること
(2) ある関係,きまりを見つけること
(3) 本当にそのきまりに当てはまるか,いくつかの例で確かめてみること
(4) そのきまり,関係が成り立つために必要な根拠を明らかにして説明をする必要があること
 これが一般に,数学的事実,きまりを見つける手続きである。

 T

 条件を変えて,自分で問題をつくってみよう。
 例えば,穴の空いている場合やくりぬいた立体があります。自分で辺,頂点,面の関係を調べてみよう。その問題はきまり,法則がうまく見つかるかもしれませんし,うまく式に表せるかもしれません。しかし,きまりが見つからないかもしれません。いずれにせよ,ここで学習したことを参考にしてみてください。
 ○考察
あるきまりが立てられれば,それはあくまで仮説であり,その根拠を考えさせる,または,説明させることを大事にしたいと思い生徒に考えさせたが,教師の側で説明してしまうことが多く,もっと生徒の議論を深めさせることが必要だと思った。
ほとんどの生徒がそのきまりを発見することができ,不思議だという感想を持った生徒が多かった。そのきまりが本当に成り立つかさらに,いくつかの例で試している生徒もいたので,その考えを全面に出して強めてやればよかった。(思考実験)

3.成果と今後の課題
 ・授業のねらいは帰納的な手続き,数学的事実を発見する方法を身につけることとして行った。どのようなことを発見されると言うこともさることながら,どのように発見するかというところに焦点を当ててみた。見つけたきまりをさらに本当にそのきまりに当てはまるのか,いくつかの例で確かめてみることや見つけたきまりを確定した事実として使うのでなく,そのきまりが成り立つ根拠というものを説明すること(演繹的な説明)の必要のよさというものを大事にしたいと考えた。
 ・今回は,ほとんどの生徒がきまりを見つけることができたが,それを自分で説明すること,根拠を明らかにすることは難しく,教師側でかなり全面に立って行ったが,演繹的な説明の必要性が理解できた生徒が多かったように思う。2年の論証の指導だけでなく帰納的な手続き,演繹的な説明のよさというものを意識的に指導していくことが必要であると思う。


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