1.単 元 関数(3年)
2.主 眼
身の回りにある関数事象について,調べてみたいテーマを決め,それらを地域などに取材して調べ,グラフや数式化することで,関数の特徴を知ることができる。
3.コンピュータ利用の目的と使用ソフト
校内LANが構成され,さらにインターネットに接続が可能になると,コンピュータを通信手段の道具として利用することが可能になる。例えば,課題解決のための情報を収集する際,直接取材が困難な場合は,企業のホームページを利用したり,その件に詳しい方にE-mailを使って質問することができるようになる。
また,まとめの段階では,調べたデータをパソコンを使ってグラフ化したり,デジタルカメラを活用することで,工夫のあるプレゼンテーションを作ることができる。さらに,実践をホームページで公開することで,校内だけでなく他校や一般の方などから,多種多様な意見や批評,新たな情報を入手することができると考えた。
<使用ソフト>
(1) 「HAPER Cube2 for Win Ver.2.1(ズズキ教育ソフト)
(2) 「Internet Explore 5.0」(マイクロソフト)
4.学習計画
・課題の決定,グループ作り | …… | 1時間 |
・地域に取材 | …… | 放課後 |
・絵コンテ,グラフ作成 | …… | 2時間 |
・プレゼンテーション完成 | …… | 1時間+放課後 |
・クラスで発表会,まとめ | …… | 2時間 |
| | 計6時間 |
* | 計画は各グループで作成し,時間が足りない場合は,放課後や家庭での時間を利用するようにした。 |
5.授業の流れ
(1) | 課題の設定,グループ作り
教師がいくつかの課題を提示し,生徒はその中から調べてみたい課題を見つけ,同じ課題の生徒でグループを作り,それぞれの個性を生かしながら作業分担を行った。生徒が選んだテーマは以下である。
・ | 「タクシーの運賃について」 小型タクシー,ジャンボタクシー,運転代行,貸し切りの時の料金について。 |
・ | 「複利計算について」 100万円を銀行の普通預金,定期預金で10年間預けたらいくらになるか? また,消費者金融で100万円借りた場合の一日の利息は? |
・ | 「放物線について」 身の回りにある放物線らしきものをデジタルカメラで撮って,放物線かどうか調べる。 |
・ | 「制動距離について」 車は急には止まれない理由について |
・ | 「電気料金について」 電気料金はどうやって決まるか。一般家庭と大企業と同じ計算式なのか。 |
・ | 「水道料金について」 水道料金はどうやって決まるのか。風呂屋と一般家庭も同じ計算式なのか。 |
・ | 「ガス料金について」 都市ガスとプロパンガスでは,なぜ料金が違うのか。 |
・ | 「荷物の送料について」 ゆうパックと宅配便ではどちらが得だろうか。 |
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(2) | 地域に取材
生徒は,課題解決のため,地域の企業や公共団体などに直接出かけ,必要な情報を収集した。取材をする前に電話でアポイントメントを取らせたり,担当の方に質問する内容などは,すべて生徒に考えさせた。さらに詳しく知るために,企業などのホームページを検索したり,関係するホームページの担当者にE-mailで直接質問をするグループもあった。
また,「放物線について」をテーマにしたグループは,デジタルカメラで放物線と思われる建造物や噴水などを写したのだが,途中で真正面から写さなければならないことに気づき,かなり苦労したようだ。 |
(3) | 絵コンテ,グラフ作成,プレゼンテーション完成
集めたデータやグラフから,2つの関係を関数の式に表した。さらに,グラフや式からどんなことがいえるか(例えば電気料金は,一般家庭と大量に電気を消費する大企業とではどちらを優遇しているか。また,荷物を送るには,何sまでなら郵便局のゆうパックの方が得なのか等)考察するよう指導した。最後に,それぞれが分担した画面をリンクさせ,グループのプレゼンテーションを完成させた。 |
図1 ガスの料金について |
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これは,ヘルメットの頭の上を写したものです。xが5のときにyが1なので,y=x2/25になります。これが放物線ならxが8のときはyは2と3の間にくるはずなのにyは3になっていて y=3x2/64という式になってしまったので放物線ではなかった。 |
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図2 放物線でなかった例
図3 ウォータークーラの場合
図4 急停止距離について
(4) | クラスで発表会,まとめ
自分たちが作ったプレゼンテーションの画面を,液晶プロジェクタ―を使って発表した。その際,自分たちのグループだけでなく,他のグループの発表内容(数学的にどうだったか)と,画面構成や発表方法(情報伝達力)の両面を評価しあった。 |
(5) | ホームページで情報発信
授業後に生徒の承諾を受け,すべてのグループのプレゼンテーションを,本校のホームページに載せた。公開することで,他クラスや他学年の生徒から感想や意見を聞けただけでなく,学外の生徒や一般の方からも,E-mailを通して多様な意見や感想をいただくことができた。また,それらのアドバイスを受け,授業後も内容を更新するグループもあった。 |
6.指導の成果
このような,我々の身の回りにある関数を地域に出て調べるという課題は,数学が苦手な生徒も積極的に取り組むことができた。授業の最後に,単元のまとめとして,「関数とは何か」という質問をしたが,全員の生徒が自分の言葉で表現できるようになった。
また,グループ内で協力することで,数学が得意な生徒,インタビューのうまい生徒,パソコン操作の得意な生徒など,数学の授業を通してお互いのよさを認め合うこともできた。
7.今後の課題
今回は普通の授業で行ったが,どうしても放課後などの時間が中心となり,授業計画よりかなり時間がかかってしまった。また,いろいろな課題に取り組むため,教師の指導が十分に行き届かず,ややいい加減なまとめをしたところもあった。
今後は,このような実践を,選択数学や総合的な学習の時間で,複数の教師で取り組む必要があると感じた。さらに,生徒によきアドバイスができるよう,私自身がいろいろ体験したり,全国の先生方とML(メーリングリスト)などを通じて,情報交換をする必要性を感じた。
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