令和元年に発表されたGIGAスクール構想に伴い,授業の中でもタブレット端末を導入する機会が増えた。本学年の生徒は,ICT機器を使用することには意欲的で,学級活動の際,タブレットを使ってルールを説明したり,発表したりするなど,ICT機器を使って自分の考えを表現しようとする姿が見受けられる。しかし,数学的根拠に基づいて,事象を説明することには苦手意識を抱いており,挙手・発言する生徒が少なくなってしまう。また,問題文の中から必要な情報を読み取ることができず,どのように解けばよいかわからなくなってしまう姿も多く見られる。
全国学力・学習状況調査等の結果からも,「数学的な表現を用いた理由の説明」に課題が見られる。特に中学校第1学年では,一部の学習内容が小学校から中学校に移行する中,「数学を学ぶ楽しさ」や,「実社会との関連」に対して諸外国と比べると低い状況にあり,数学の学習に対し肯定的な回答をする生徒の割合が低下する傾向にある。
学習指導要領では,主として日常生活や社会の事象にかかわる過程と,数学の事象にかかわる過程の二つの問題発見・解決の過程を重視しており,「思考力,判断力,表現力」を身に付けるのにあたり,多くの場面でこの二つの過程が活動を通して実現されるよう示されている。
以上のことから,生徒には確定的な答えを導くことが困難な事柄についても,数学的根拠をもとにして,自分の考えを表現してほしいと考え,本研究の主題を「データを基に,自分の考えを表現することのできる生徒の育成」と設定した。
学習課題 | 授業内容 |
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卒業生を送る会で使う紙ふぶきをつくろう |
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紙ふぶきの滞空時間を測定しよう |
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測定したデータを表にまとめよう |
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測定したデータをグラフに表そう |
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紙ふぶきの形や大きさをもう一度考えよう |
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データをもとにして,1A(クラス)のベスト紙ふぶきを決めよう(本時) |
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グループ後半の発表を聞き,考察してみよう |
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ものごとの起こりやすさについて考えよう |
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時間 | 生徒の学習活動と内容 | 教師の支援・留意点 |
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1 本時の学習課題を知る。 | ||
データをもとにして,1Aのベスト紙ふぶきを決めよう |
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5分 |
2 各班のまとめたデータを見て,どの班の紙ふぶきが一番ふさわしいか,グループになって,考えたことを発表し,考えを共有する。
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15分 |
3 グループ全体の意見をタブレット端末にまとめる。 |
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30分 |
4 グループの考えを発表する。 |
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40分 |
5 全体の意見をまとめて,1Aのベスト紙ふぶきを決定する。
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本時では,まず第5時で作成した「発表ノート」をもとに,グループで発表した。「発表ノート」を作成したことで,生徒が自分の考えに自信をもって発表する様子がみられた。発表を聞く生徒も,図を見ながら発表を聞くことで,発表する生徒の意見を十分に理解することができており,「発表ノート」を使用したことの有用性を感じることができた。発表する生徒も,「4班の3.7cm×7.5cmの長方形が,一番長い時間で安定していて,どの度数の滞空時間も長くていいと思った。」などと,タブレットを見せながら話すことができた。
次に,グループで1つの「発表ノート」を作成するために,タブレット端末内のグループ機能の使用方法について説明した。どの班でも,誰の「発表ノート」をもとに編集をするかや,発表内容などについて,「最大値」という言葉を付け加えて説明することを話し合うなど,活発に意見交換ができていた【資料1】。
グループでまとめた意見を,クラス全体で発表する時間では,「4班の長方形がいいと思います。最大値が,クラスで一番大きく,平均値も他の班に比べて一番大きいです。安定して長いので,運任せにならないためいいと思いました。」と,数学的根拠だけでなく,代表値が表すデータの意味について触れながら発表する様子がみられた。発表の結果,8班中7班が,「4班の3.7cm×7.5cmの長方形」が最も滞空時間の長い紙ふぶきであるという結論に至っており,クラスのベスト紙ふぶきについて,全員が納得することができた。最後に,別のクラスのベスト紙ふぶきのデータ【資料2】【資料3】を,タブレット端末を使って配布し,どちらのクラスの紙ふぶきがよいか考える時間を設けた。「最大値が大きく,50回中2回も最大値が出ているから,B組の方がいい。」「最大値は大きいけど,A組の方が全体の記録がいい。」など,グループ内で様々な意見が飛び交った。生徒Aは,「A組の方が良いと思っていて,階級の高い数値より低い数値に注目すると,B組の方が低い階級に度数が多いから,記録が安定していない。」とグループの中で意見を話した。代表値がほとんど同じデータを比べる時間を設けることで,ヒストグラムや度数分布多角形の形から,データの分布の様子について考えることができた。クラス内のデータだけでは,記録の良いデータが明らかであったため,この時間を設けたことは有効であったと感じた。全体発表では,どの生徒からも,「データの分布から,自分たちのクラスの方が滞空時間の低い記録が少なく,安定している。」といった意見が出てきた。