新学習指導要領では「数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・ 能力」をつけることを目指している。また今回の改訂で「学びに向かう力,人間性等」も目標の大きな柱としている。
今回の授業では,「見方・考え方」を働かせながら,知識および技能を活用し,仲間との協力で新たな問題を解決することに,重点をおいて考えたものである。必要な情報を読み取り,それを組み合わせ,さらに他にわかることがないか考え,解決の方法や内容,順序を見直したりすることで,数学的に考える資質・能力の育成を図りたい。また,自分の持っている情報を相手に伝えることや,相手の情報を良く聞くことで仲間作りにもつながると考えている。
単元は中学2年生で学習する「連立方程式」である。連立方程式の計算方法(加減法・代入法)を学習し,分数や小数の含んだ式など一通り練習が終わってから行った内容である。基本的な知識や技能の習得はもちろん大切だと考えている。しかし,計算問題ばかりでは,単純作業になってしまいがちで退屈になることもある。そんなときに,このようなカードゲームを利用しながら,さらに情報を整理し仲間と協力しながら解決していくことで,新たな気づきが生まれ,計算方法やそれぞれのものの関係性・配列を仲間と確認し合うことができる。
1段~4段までのショーケースがあります。
ただし,上の図は正しいものではなく,5箇所は2つ分のスペースを使用しており,壁がありません。このパン屋で売られている,パンのショーケースの配列と,それぞれの値段を答えなさい。
11種類のパンが並んでいる。 | カレーパン1個とクロワッサン1個とチョココロネ1個で 610円 |
あんぱん2個とドーナツ2個では 690円 |
カレーパン2個とクロワッサン1個とチョココロネ3個で 1330円 |
あんぱん1個とドーナツ4個では 720円 |
カレーパン1個とクロワッサン2個とチョココロネ4個で 1340円 |
あんぱんとクリームパンは 同じ金額 |
メロンパン2個と焼きそばパン2個では 620円 |
食パンはフランスパンの 2倍の金額 |
焼きそばパン2個は, あんぱん1個とクロワッサン1個を買った金額と 同じである。 |
フランスパンとコッペパンは 10円差である。 |
あんぱんは,右隣に唯一の 広いスペースがあります。 |
フランスパンはコッペパン より高い。 |
ドーナツ,メロンパン,チョココロネは 同じ段にあります。 |
フランスパン2個とコッペパン3個で 1220円 |
メロンパンとチョココロネの間には 空きスペースが1つあります。 |
チョココロネは空きスペースとのみ接しています。 (上下左右も含 む) |
コッペパンはクリームパンとドーナツのみと接しています。 (上下左右も含む) |
食パンは,左右をクロワッサンに挟まれており, 1つ下にはあんぱんがあるようです。 |
焼きそばパンは クロワッサン,あんぱん,クリームパン,フランスパン と接している。(上下左右も含む) |
フランスパンは 焼きそばパン,クロワッサン,クリームパンの3つ とのみ接しています。(上下左右も含む) |
このパン屋にはカレーパンもある。 |
今回このカードゲームを利用し,計算をお互いで何度も確認し合っている姿が見られた。配置の関係性についてはかなり難しいようであったが,根気強く取り組んでいた。授業ぎりぎりまで考え,休憩時間になっても考えている班もいた。授業後,生徒からは「難しかったが,またこんなゲームをしたい!」と言う声も聞こえた。すでに学習した内容を利用しながら,新たな問題を仲間と一緒に考え知恵を出しながら解決していくことは,数学だけに限らずあらゆることに生かせると感じる。単元の終盤には,このような活動ができるよう,基本的な知識・技能の習得の徹底と,それらを活用できる場面設定や問題を作りにこれからも励みたいと思う。