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数学

式の意味を読み取り説明する力の育成
―第3学年「二次方程式」の実践を通して

高知県佐川町立佐川中学校 圓岡 悠

1.はじめに

平成29年度に実施した全国学力学習状況調査の報告書では,「事象を数学的に表現したり,数学的に表現された結果を事象に即して解釈したりすることを通して,事象が成り立つ理由を筋道立てて説明すること」に課題があると示された。本時の題材の領域・内容は,第1学年の「数と式」であり,改善するためには第2,3学年の単元においても継続した指導として式の意味を読み取る活動や説明する活動などの体験を取り入れる必要があると考える。

そこで,今回の実践では次の2点に重点をおいた授業実践を行った。1点目は,教科書の内容に記載される基礎・基本的な課題設定にしたことである。2点目は,全国学力学習状況調査において課題であると示された「事象を数学的に表現したり,数学的に表現された結果を事象に即して解釈したりすることを通して,事象が成り立つ理由を筋道立てて説明すること」についての改善を図る内容を取り入れたことである。また本時の題材は図形を移動させる問題であることから,ジオジェブラを活用することで生徒の興味や意欲を引き出すとともに内容の理解にも繋げていきたい。

2.実践事例

(1)本時のねらい

図形を動かすことで面積の性質を捉え,道幅を求めるための方程式を立てることができる。

(2)評価規準

面積の性質を捉え,道幅を求めるための方程式を立てることができている。

(数学的な見方や考え方)

(3)指導案

学習活動 指導上の留意事項 評価規準
(評価方法)
導入

10分

1 問題を提示する。

縦が10m,横が12mの長方形の花だんに,下の図のような同じ幅の道を縦と横に作り,残りの花だんの面積を80㎡にします。この道幅を求めましょう。

2 図に長さや面積を書き込む。
(個→ペア→全体)

・支援を要する生徒への支援として,縦と横の長さやどこの面積が80㎡になるのか手でなぞらせ確認させる。

3 道幅は求めるにはどうしたらいいか考える。

・「文字で表す」というキーワードを生徒から引き出したい。

・道幅を文字に置き換えることを共有させる。
(予想される生徒の反応)

・四つの面積の一辺の長さをχ,yにしたらできそう

・道幅をχとしたらできそう

展開



20分

4 道幅を求める方程式を考える。
(個→グ→全)

・まず最初に「等しい関係を見つけ方程式を立てる」というキーワードを引き出してから個人思考させる。

・方程式は,①道の面積の方程式
12χ+10χ-χ2=12×10-80
②花壇の面積の方程式
(χ-12)(χ-10)=80
の2通りがある。

・もし,一方の解き方しか出なかった場合には,方程式を提示しどのような考え方をしているか読み取らせる。

・「解が適切かどうか確かめる」ということも最後に確認させる。

・面積の性質を捉え,道幅を求めるための方程式を立てることができている。(ノート)

展開



15分

5 12χ+10χ-χ2=12×10-80はどのような方程式を表しているか記述する。
(個→グ)

・右辺に着目させ,右辺が道の面積の方程式であることを確認する。また,全体の面積から花壇の面積を引いている事も確認させる。

・グループ活動の後,「縦の道の面積」,「横の道の面積」,「道の重なっている部分の面積」というキーワードを全体で共有させる。

・十分満足できる生徒の説明は,「左辺は,横の道の面積12χと縦の道の面積10χ文字を足した面積から道の重なっている部分の面積χ2を引いた道の面積を表している。」

まとめ

5分
まとめ

・説明を書くポイントとして,
①主語を書く
②単項式を一つ一つ考える
といった2点を押さえさせる。

3.成果と課題

授業では,道の面積の方程式についての考え方だけが生徒から出てきた。そのため,グループ活動(展開①)で1つの方程式に焦点を当てて考える時間になった。記述の場面(展開②)では,展開①の生徒同士と考えた方程式であったり,共通のキーワードを決めておいたりしたことで,多くの生徒が方程式について説明できたと考える。また,教師から花だんの面積の方程式を提示し,なぜこのような方程式になるのか読み取らせた際,生徒の発言から「切ってくっつける」や「移動する」といった考え方を見いだしたことも成果といえる。

2学期中間テストで本授業の内容と同様の課題を提示し,説明させる問題を出題した。解答では,図1や2のように記述できている生徒がいた。しかしながら,一方で,「左辺は,横と縦の長さの面積を出して,重なり合っている所を引いている」のように言葉の記述はできているが,方程式のどの項に当たるのか数値を記述できていない解答も多く見受けられた。これは,本授業で記述のポイントとして丁寧に押さえることができなかったことが原因であると考えられる。

本授業は,第3学年単元「二次方程式」での式の意味を読み取り説明する力の育成を目指した授業提案であった。今後の課題としては,生徒達の説明する力の育成を目指すために全学年のどの単元においてもこのような授業作りの工夫を考える事である。


図1

図2

4.おわりに

日々の授業で生徒に振り返りシートを記述させている。その中で,授業に対する取り組む姿勢について振り返りをさせている。それが,下の表1である。

表1
レベル5 相手が理解できる説明ができた
レベル4 相手が分からなくても説明をしようとした。
レベル3 意欲的に取り組めた。
レベル2 説明を聞いた後,取り組むことができた。
レベル1 全くやらなかった。

この振り返りシートを行うことで,日々の授業に積極的に取り組もうとする生徒が増えてきている。問題に対して疑問を持ったり探究したりする中で,友達同士が質問し合ったり,悩んだりすることを共有することで説明する力が培っていくと考えている。