本実践に取り組んだきっかけは2つある。
1つ目のきっかけは,定期テストごとに実施するアンケートの一項目である「授業で『こんなことがしてみたい!』というアイデア」の記入内容である。生徒が入力した内容は次のとおりである。
上記のように生徒の意見は,「入試に向けて力をつけたい」「今の自分の力を試したい」という思いに加えて「楽しく学びたい」という思いが伝わる内容だった。生徒の「~してみたい!」という思いが数学的な活動とつながり,私も「おもしろそう」と思えたことが挑戦のきっかけである。
2つ目のきっかけは,時期的に生徒が学習する教材が多様化したことである。三平方の定理の学習を12月中旬から1月中旬にかけて学習している。この時期,志望校の過去問等の問題集を学校に持参する生徒が増えている。これは私の反省であるが,授業の演習の時間に,学校で配布した教材を使わない生徒に対して,「まずプリントをやろうか。」と声をかけていた。このことを,教科担当同士で話している中で「もし,塾等の問題集を開くことを認めないのであれば,立て付けが間違っている」という助言をいただいた。知らず知らずのうちに教材は「学校で配布した資料のみ」と制限をかけていた自分に気づくことができた。そこで,様々な生徒の学習の段階や教材をフルに活用することができる課題について考えた。
なお,本校では,京都府の研究指定校として,「生涯にわたり学び続ける生徒の育成」を目指し,授業改善に取り組んでいる。本実践においては,他者との関わりを通じ,自己の学習を調整しながら主体的に学ぶ力をつけることも意識している。
本実践では,「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料 中学校 数学」に掲載されている「第3編事例3」を参考に学習活動に「問題作成」を取り入れることとし,特に,"目的に応じた"という部分にこだわるようにした。単に,生徒が問題と解説を作成し,互いに解き合えば,「できた」「できなかった」に終始すると考えた。本実践の"目的に応じた"とは,「この問題を解いた人(だれ)に,どうなってほしいか」を考えることであり,「その目的を達成するための問題や小問の構成,ヒント,解説の工夫」について熟考し,作り上げることを目指した。(例:三平方の定理に困っている人が基礎を習得できる。誰でも難関校の問題を解くことができる。など)
各自が目的を設定することで,問題の「作り手」の「意図」が反映される。その作品を「解き手」は「作り手」の意図を読み取りながら評価すること,「作り手」は「解き手」からの評価されることを通して,学習内容の理解を深めていくことを期待した。
三平方の定理は,「直角三角形に使う定理である」「90°を挟む辺と斜辺の関係である」という2点が押さえるべきことである。他の章と比べて,押さえるべき点は限られたものであるが,多くの場面で用いられる定理である。また,三平方の定理の学習は,図形と数式を統合的に把握することができる場面の一つでもある。問題を解く中で,「直角三角形を見いだすこと」「3辺の関係を適切に使うこと」を習得させ,その学びから得られる知識を整理することで,「(各自が設定する)"目的に応じた"三平方の定理を活用した問題と解説を作ろう!」に取り組むこととした。
(1) 単元計画の概要
単元を4つのステップ「①知識習得,②問題作成,③検証及び改善,④仕上げ」に区切り,生徒と計画を共有しながら取組を進めた。教師が「教える」場面では,学習内容の土台を築く内容を大切にし,生徒が「自分たちで学習を進める」場面では教科書や配布された教材等から「学んだ知識の使い方」や「つなげ方」等を学び取ることができるよう声かけの仕方や学習環境の整備を意識し取り組んだ。
| ステップ | 時数 | ○ ねらい【流れ】・■ 主な学習活動 |
|---|---|---|
| ①知識の習得 | 6時間 |
○三平方の定理を理解する。 ※本章の課題を予告する。 【スライド提示による授業
本章の課題:目的に応じた三平方の定理を活用した問題と解説を作ろう! ○三平方の定理を用いて様々な長さを求めることができる。 【ロイロノートで配信したワークシート
○本章のスケジュールや課題の概要について理解する。 ○前時の学習内容をもとに,様々な長さを求めることができる。 【課題の概要説明
○空間図形に糸を巻き付け,もっとも短くなるときの長さを求めることができる。 【演習
○次回の小テストに向けて,「基本の徹底」など,自分の課題に取り組む。 【演習
○学習内容の定着具合を,小テストを通して確認・整理することができる。 【演習
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| ②問題作成 | 3時間 |
○小テストの意図と課題の詳細について理解する。 【小テスト返却と課題の説明
○問題作成を通して,三平方の定理の理解を促すとともに活用場面について考えることができる。 【視点の整理
○問題作成を通して,三平方の定理の理解を促すとともに活用場面について考えることができる。 【活動
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| ③検証及び 改善 |
2時間 |
○作成した問題を共有し,評価し合うことで,意図が伝わる問題になっているかを確かめることができる。 【問題交流・評価
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| ④仕上げ | 1時間 |
○評価シートの内容をもとに,改善し,課題を提出する。 【改善・提出
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(2) 学習環境のイメージ
「教材,学習活動,(自己又は他者)評価」で使用する教材等が,各ステップで期待される役割を整理した。
(3) 活動振り返りシート
ステップ③「検証及び改善」では,「評価シート」による他者評価を通して,自身の問題作成について振り返った。こちらの生徒は,ヒントの出し方によって「解き手」が考える機会を奪ってしまうことに気づき,改善に向けて考えをまとめている。
問題の構成は「タイトル-問題-ヒント-解答・解説-意図・思い」の5つのパートで作成している。
【作品Ⅰ】
この作品は作成者自身が苦手とする問題と向き合っている。3辺の長さを文字に置き,相似な図形と三平方の定理を結びつけて解き進める問題である。対象を「だれでも」としたことで,解き手によって異なる欲しいヒントの量にどのように対応すればよいか困っている様子が見られた。相互評価等を通して,ヒントの並びを工夫し,解き手が何枚目までヒントを見るか選択できるように調整することで作品を仕上げた。
【作品Ⅱ】
作成者は「楽しく学んでほしい」という思いから「クリスマスツリー」を題材に問題を考えた。問題を作る中で,「どのような展開図になるのか,飾り付けのテープはどこを通るのか」等,級友と議論することや自分でクリスマスツリーを作ることで確認していた。
実際物を数学の問題として落とし込み,「三平方の定理」を使うために「必要な直角三角形を見つけること」や「補助線を引くこと」,「空間図形から平面図形にかき表すこと」など,基本的なことから応用的なことまで確認できる問題となった。
定期テストごとにその期間の学習についてアンケートを実施している。このアンケートで,「問題作成」が学びを支えるものだったかを質問したところ約9割が肯定的に回答した。その理由として次のような意見が挙がった。
生徒の意見や時期的な課題,私の反省から,本実践に至りました。まだまだ改善の余地がある実践ではありますが,参考にしていただけると幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございます。
【参考文献】