数学の授業を通して生徒には,体系的で調和のとれた数学そのものの美しさはもちろんのこと,既知から未知を明らかにしたり,問題を発見して解決したりする,学ぶことそのものの楽しさも実感させたいと考えている。そのために,日ごろの実践では以下のことを意識している。
①生徒が問いをもちそれを解決しようとする単元構成
既習内容との比較や条件変更などによって,新たな問題を発見できる単元構成を心掛けている。単元の終末には単元最初の板書を提示するなどして,「できるようになったこと」や「解決に有効な方法」を強調する。
②「誤り」から学ぶ授業構成
生徒が「自分なりの方法」で解決を試みた結果生じた誤答や,多くの生徒が陥りやすい誤答を積極的に取り上げ,「なぜ間違いなのか」を考えることで「正しい方法」の先にある深い学びの実現を目指す。
上記のことを意識しながら,生徒の「どうして数学を勉強しなきゃいけないの?」という問いが,「数学が楽しい!もっと勉強してみたい!」にとって代わる授業を目指し,日々実践を積んでいる。
<4章の学習内容>
時 | 学習のねらい(○)と主な活動内容(・) |
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(4)単元の評価規準
知識・技能 | 思考・判断・表現 | 主体的に学習に取り組む態度 |
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(6)本時の展開
学習活動 | 教師の働きかけと予想される生徒の反応 | ■評価基準(観点) ○留意点 |
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導入 |
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展開 |
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学習課題
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終末 |
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まとめ |
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自分ではどのような補助線を引いたらいいか見当がつかず,見通しが持てない生徒も複数名いたため,証明そのものではなく①~④の補助線のみを学級全体で共有した。そして,「証明ができそうだと思える補助線はありますか。仲間の考えを参考にしてみよう。」と促した。①や②の補助線を使うと証明できそうだという生徒が多くいたため,2つの証明が完成できた生徒は,それ以外の補助線でも証明できないか考えるよう促した。複数の生徒が,以下の点に気付いた。
一方で,③や④の補助線が適切でない理由を考える際は,理由に気づいた一部の生徒が説明し,それに学級全体が納得する,という構図になってしまった。このことについて同業の先輩に相談したところ,補助線の図ではなく証明を考察する時間があるとよかったのでは,とご助言をいただいた。
本実践では生徒の記述の負担を軽減するために,補助線のみを共有・比較したが,例えば右のような誤った補助線を基にした証明は,仮定を使わずに三角形の合同条件を導くことができる。このことから,二等辺三角形ではなくすべての三角形に共通する証明になってしまっているという矛盾に気づかせ,その矛盾を生んでいる根本的な原因は補助線であることを見出せたかもしれない。今後も,生徒の思考に寄り添った手立てを検討したい。
今回の実践では,よりよい証明を求めて,自分なりの考えをノートにかいたり仲間の証明と自分の証明を比較したりする姿が多く見られた。また,適切な補助線とそうでない補助線の違いとして,「仮定をよく見て,結論を使わずにかけているか」という視点を持てばいいと自らまとめた生徒もいた。正しい証明のみを共有するのではなく,正しくない補助線の引き方やその理由を考える時間を取ったことで,学びはより深まったと考える。生徒が問いをもち,誤りからの学びを促すことで,間違えることを否定的に捉えず,そこから学ぶ前向きな姿勢を醸成することができると考えている。間違えることを恐れなければ,学ぶことのよさは生徒により実感されるのではないだろうか。これからも生徒が生き生きと学ぶ数学の授業づくりを目指したい。