カリキュラムマネジメントや魅力的な学校づくり,ICT導入など,現在勤務している中高一貫校では様々な研修が行われています。私は教員歴15年目ですが,若い世代の先生方が難なく取り入れることでも二の足を踏むようになったり,生徒の若さに自分との隔たりを感じるようになったりするようになりました。そこから始めたのが「アンケート」と「授業進行ワークシート」です。アンケートを取り,生徒の需要や生徒の考えていることを言語化していきながら授業を進めると,お互いにとって良いことがあるように感じます。
コミュニケーション能力に個人差があることから,まず私は「安心できる教室を作ろう」と伝え,エンカウンターの授業を取り入れています。初回の授業ではペアワークで日本語で会話をさせ,2回目以降の授業で日本語で話したことがらを英語にしていくようにしています。
<例>
※感想を書かせるフォーム(Wordで「顔」を変換すると出てくる絵文字を使っています。)自由に書かせ,気になる生徒はすぐ声をかけたり学級担任と校務支援システムで連携をとったりします。誰のどういうところが良かったかも書くように促し,生徒も教員も顔と名前と特徴を一致させたりするのにも役立ちます。
「勉強のことでも,そうでなくても,困っていることや悩んでいることはありませんか?」とテストの上半分に記入する欄を設けます。裁断機でテストを半分に切り返却するとプライバシーも守れます。これも,気になる生徒には声をかけたり校務支援システムで連携を取ったりします。悩みごとには誰かが特定できないようにぼやかして授業の初めに共有したりします。毎週あるネイティブ教員の授業の内容を復習させたりしています。
<資料1:連休明けアンケート>
私は生徒に考えさせて,授業中に取り組むテストを作らせるようにしています。多くの先生方はテストメーカーなどを活用し小テストを作成することが多いと思います。私は授業プリントや小テストは手書き率が高いです。ノートや裏紙に手書きや切り貼りをして,そのまま印刷しています。
<いわゆる「覚えモノ」>
白紙を配る(裏紙でもよいし,枠を作って印刷して配布してもよい)→上下左右1cm余白を設けること,〇〇先生作題と書き始め(ここは作る生徒の名字を入れさせる),クラス番号氏名記入欄・テスト範囲(めあて)・出題方法や出題数を板書→作業させて回収→そのまま授業で活用。
自分が間違えたものや間違えそうなものを入れてごらんとか,出す順番にもこだわってと指示を出すとプロ顔負けのテストができます。私は毎回大いに褒め,「〇〇先生」を持ち上げています。「もうこれこのまま出題しようかなー」「先生よりよく考えて出してくれていてすばらしすぎるわこのテスト」など,解説をしながら毎回ほめるようにしています。不規則動詞とかではその生徒の苦手や得意が見えてくるので,作題の時に配慮ができる(難易度の予測が立てられる)ので,複数回実施するといいと思います。
<資料2:不規則動詞の生徒作成テストフォーマット>
<帯活動での英会話10 Questionsは「先輩・後輩」に向けて作らせる>
「仲良くなれるにはどんなことを聞いたらいい?」「それって英語でなんて言うの?」を日本語で投げかけ,ある程度見本を作ったワークシートを持たせるところからスタートします。高校生には『Vision Quest 総合英語 Ultimate(啓林館)』の疑問詞のページを開けさせたりして作成させます。少し時間をとったら,実際にペアワークで自分たちで使ってみて,少し和ませてから回収します。打ち直したものを次回以降の授業で使ったり,他の学年で使ったりします。数回取り組むと,指示を英語にしても抵抗なく授業が進行します。電子辞書や英会話の本を頼りにストックを作っている生徒やこっそり手紙のようなメモを持ってくる生徒も出てくるので,おすすめです。「先輩や後輩が君たちの英語の質問に英語でこたえるよ。『役に立てますように』と思って作ろう。」と指示すると,私の思いつかないような質問が出てくるので楽しいです。
<資料3:高1コミュ英ワークシート>
<ちょっと難しい題材のとき「日本語リテリング」>
A41枚の白紙を配り,教科書の1レッスンの内容を1枚にまとめるよう宿題を課します。そのとき,「グループディスカッションで使うこと・誰かのためになるものを作ること・絵など自由・ネットからの情報でもよいので豆知識を入れるなど楽しく読めるようにして」と伝えます。もちろん信ぴょう性などで不安はありますが,生徒は楽しくまとめてきます。
同一学年を複数クラス担当するときは,必ず両方のクラスのワークシートをそれぞれのクラスへ持ち込み,グループディスカッションをさせます。頑張っている生徒を選ばせる投票用紙や,分かりやすかったのでありがとうという「ありがとうカード」を持たせ,回収してとりまとめ,相手の生徒に届けるまでしています。
<資料4:ありがとうカード>
熱心に取り組む生徒が多く出て,教科書の内容が頭に入りやすいようです。音読やリスニングなど,この作業の後に取り組ませますが,意味の分からない状態より生徒の協力度が格段に上がっているように見受けられます。
「ファイブラウンドシステム」導入学年で行き詰まりがでたとき,この手法を取り入れ,教室に安心感が戻ってきた実感があります。また,「そんなことがあるのか」「こう教えるといいのか」という気づきが毎回もらえるので,私から見るとまさに「生徒が作る指導書」です。感想や感謝は授業の冒頭にひとことふたこと程度ですが必ず伝えています。
必要に応じて小冊子や英語担当者通信を発行してフィードバックをします。また,学年末にポートフォリオにして返却しています。
<資料5:生徒からのアンケートから生まれた小冊子の例>
預かったワークシートやアンケートのうち,年度末に個人別ポートフォリオにしてホチキス止めして返却するものはすべてA4サイズで作成しています。成長が実感できたり,指導要録所見作成の一助になったりするので,私が長く続けている取り組みです。
各クラス,熱心な生徒はそれなりにきちんとしたルールや努力を重ねています。新聞記者のように取材してデータ化しておき,補習教材や授業のPowerPointの表紙に貼ったりします。現物やエピソードを紹介すると生徒はよく勉強するようになります。パソコンやタブレットのカメラで許可を取ってその場でデータ化したり,教室へスキャナを持って行ってデータ化したりしています。
電子辞書はいつどこで買ったものか,型番は何か,普段使うコンテンツは何かなど,細かく聞きます。紙の辞書は書画カメラやプリントで生徒に提示します。面倒でも,手本を見せるようにしています。
他の先生同様,音読指導やリスニング指導などは徹底的に取り組みます。デジタル教科書やICTツールもどんどん活用しています。担当する学年によっては「ファイブラウンドシステム」など,今までと全く違う授業展開もします。
アンケートをとり,それらを中心に生徒同士や生徒と教員の交流ができたらいいと思って日々授業をしています。教員が生徒の意見を聞いているという姿勢を見せることで,授業への取り組みもよくなっています。私の作るオリジナルテキストやプリントは生徒に書いてもらったイラストを多く取り入れています。「こんなの書いてほしい。」と教員がオーダーすることで,生徒の自己効力感も育つと思います。また,他の生徒が教材を楽しみにしてくれている様子も見受けられます。もちろん様々なことは手間ではあるのですが,生徒との交流を楽しみながら教科書の内容を深めることができるので,とても楽しいです。スキマ時間に作業することに慣れてくると負担に思わなくなったりします。また,学習係の生徒と共同で作業をしたりするなど工夫して取り組むといいと思います。私の日々の実践の紹介が,お役に立てたらとてもうれしく思います。