中学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
英語

端末を活用した授業実践とその振り返り

宝塚市立御殿山中学校 牧野 志保

1.はじめに

2019年以降,文部科学省はICT教育を積極的に推進しており,特に2020年度以降はGIGAスクール構想の実施によって,中学校教育の現場でもICTを活用した授業が急速に広がっている。ICTとは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略であり,教育現場ではタブレット端末やパソコン,電子黒板,インターネットなどを活用した学習活動を指す。ICT教育の目的は,単に機器の操作方法を学ぶことではなく,情報を収集・整理し,自分の考えを表現したり,他者と共有したりする力を育てることにある。

文部科学省が進めているGIGAスクール構想では,「児童生徒一人一台端末」と「高速大容量ネットワーク環境」の整備が進められている。これにより,生徒一人ひとりの理解度に応じた「個別最適な学び」や,生徒同士が意見を共有しながら学ぶ「協働的な学び」が重視されるようになった。 

宝塚市においても,小中学校で一人一台のタブレット端末が整備され,調べ学習や課題提出,プレゼンテーション活動など,さまざまな場面でICTが活用されている。

英語科においてもICTを活用することで,生徒の学習意欲や表現力を高めることが期待されている。例えば,自分が読む(話す)英語を録音して課題を見つけたり提出したり,動画教材を用いて実際の英語表現に触れたりすることで,主体的に学ぶ場が増えている。

また,グループで意見を共有しながら英文を作成する活動なども行いやすくなっている。

一方で,ICT教育には課題もある。教師側のICT活用能力の差や,機器トラブルへの対応など,不安材料は多々ある。私自身もICT機器の活用にはかなり苦手意識があり,できる限り避けようとしていたのが本音である。しかし,現在の教育現場ではICTの活用が必要な場合も多く,生徒たちにとっても身近な学習ツールとなっている。そのため,2024年度に勤務校が市内研究授業を行うこととなったのをきっかけとし,自分自身もICT活用に挑戦し,生徒が主体的に学べる授業を実践することにした。苦手意識があるからこそ,実際に授業で活用しながら学び,指導力向上にもつなげていきたいと考えた。

(図1)英単語地図と組み合わせて英文を作るためのカード

(図2)絵で表した地図

2.「道案内」

「道案内」については,小学校でも取り上げられていて,ある程度は既習事項とも言える。また,実際に外国人に道を尋ねられた経験のある生徒,また海外旅行で場所を聞きたかったけれども言えなかったという生徒もいる。

実際に教科書(Blue Sky)の2年生では

Which bus goes to Sakura Zoo? 

How often does the bus come? が重要表現であり,バス停での会話が想定されている。

3年生では

Take the Karasuma Line to Karasuma Oike.

At Karasuma Oike,change to the Tozai Line.Get off at Nijojo-mae.

がKey Expressionsであり,京都駅から二条城までの行き方を観光案内書で尋ねているという場面が設定され,地下鉄に乗り換える際,路線図を使用して表現する単元である。

ALTとのTTを行い,実際の場面をイメージしやすくするとともに,当時の勤務校の生徒たちは阪急電車を利用して移動することが多く,路線図を使用して何線に乗るか,どこで乗り換えるか,ということを取り上げようと考えた。

そこで,オクリンクを使用し,道案内の定番の表現を復習し,建物の名称を確認し,実際に地図を使用してコマを動かしながら目的地にたどり着けるか,そしてペアで目的地を考え,そこへ案内する人と案内される人に分かれてロールプレイングを行った。地図は英単語を載せているもの,それを絵で表現しているものの2種類を送り,段階を踏んで進めていった。次に,オクリンクのカードを使用し,"Go straight","Turn right","at the second corner"などのカードを組み合わせて,口頭での表現から文字へと繋げた。

阪急電車の路線図を送り,ALTが観光客となり,学校の最寄り駅から出発して宝塚駅へ(乗り換えなし),大阪梅田駅へ(乗り換えなし),王子公園駅へ(乗り換えなし),桂駅へ(乗り換えあり),神戸三宮駅へ(乗り換えあり),最後に蛍池駅へ(乗り換えあり),そしてそこからモノレールに乗って大阪伊丹空港へ向かうというルートを考えた。宝塚駅には宝塚大劇場があり,3学期に観劇する予定があったこと。大阪梅田駅は,休日に買い物や食事,映画鑑賞に出かける生徒が多いこと。王子公園駅には王子動物園があり,昨年度校外学習で訪れたこと。桂駅は3学期に計画していた嵐山への校外学習の乗り換え駅であること。神戸三宮駅は,翌年に校外学習を予定していたこと,そして蛍池駅は修学旅行で空港集合を予定していたので,モノレールの乗り換え駅であることを考え,設定した。

シンプルな地図で練習し,路線図を見せると,普段公共交通機関を使わない生徒は最寄り駅を探すことから戸惑っていた。乗り慣れている生徒が教え,また駅を点ではなく路線図を見て線で繋げることで,「〇〇はこんなところにあったんや!」,「△駅でも□駅でも乗り換えられるけど,△駅の方が人が少なさそうやん。」,「空港ってこうやって行くんや!」などという声が聞こえてきた。ペアで言い方を確認し,ALTを案内してくれる発表者を募ったところ多くの手が上がり,積極的に路線図を見ながら目的地へ案内しようとする姿が印象的だった。

(図3)基となる表現

(図4)路線図(出発駅と到着駅を色で結び,乗り換えの有無などをイメージする)

3.タブレットのみでの授業

始めは,①案内の仕方を復習,②建物の名称を確認,③地図を用いて案内,④乗る路線や乗り換え表現の練習,⑤路線図を見ての案内,⑥案内文を英語で書く,という流れを考えていたが,オクリンクの地図を用いて,コマを移動させながら目的地を確認することに生徒が熱心に取り組む様子,そして机の上が教科書・ファイル・ノート・筆記用具・タブレットでいっぱいになっているので,ALTとも相談し,「タブレットのみを用いての道案内」の授業をしようと計画した。そして,次の授業ではタブレットは使用せず,教室前面の画面に地図を提示し,読み書きを中心とする授業をしようと計画した。タブレットを用いることで英語に苦手意識を持っている生徒も取り組みやすくなる面もあり,主体的に学ぼうとする姿勢も増えると同時に,「書く」という機会が減ってきているようにも感じている。「英単語は見れば分かるけど,書くことには自信がない。」という生徒も多くいる。実際,読めるけど漢字が書けない…,ということが私にも何度かあった。「書く」ことだけが全てではもちろんないが,「書く」機会が減ってきていることと,「書く」ことが必要な場合もあるということは実際にあると感じている。どのように「書く」機会を作るか,タブレットと効果的に併用するかということは,これからもっと研修を積まなければと感じている大きなポイントの1つでもある。ICTやタブレットを使った英語の授業は,動画や音声をすぐに使えたり,生徒も気になったことをすぐに調べたり,発音を聞けたり,一人ひとりに合った学習ができるなど,効果的な面がとても多い。特に,発声練習やネイティブの発音を自分のタイミングで聞けたり,録音した自分の声を聞くこともできることには大きなメリットがあると思う。一方で,入力やタッチに頼りすぎることで「書く」ことが少なくなっていることも事実である。海外では「アナログ回帰」という動きがあるということも耳にする。ICT機器を使用することだけが目的ではなく,どう活用するか,ただ使うのではなく目的に応じて活用することが大切だと感じている。デジタルとアナログ,それぞれのメリットとデメリットを理解し,バランスよく活用すればさらに効果的なものになると思う。生徒たちがどのような力をつけることができるかということも課題として,これから取り組んでいかなければならない。今回,苦手意識しかなかったICTを活用した授業作りに取り組み,考えていかなければいけないことがはっきりとしてきたことも,プラスであったと思う。

4.英語(外国語活動)との出会い

学校を異動し,以前小学校4年生の時に外国語活動を担当した児童たちを,中学校2年生で再び教えることになった。小学校では週に1時間の外国語活動の授業を行っていただけであったが,中学校で再会した際,多くの生徒たちが当時の活動・指導内容や授業で取り上げた歌,使用していた教材や教具に至るまで覚えていたことに驚かされた。歌など,ほぼ覚えていて歌って聴かせてくれた。アルファベットのbとdの見分け方,先生が教えてくれたこと覚えてる!と何人もが言ってくれた。小学校4年生でのことが,これだけ生徒たちの中に残っていることに本当に驚いた。短い時間ではあっても,児童たちにとって外国語(英語)との出会いは強く印象に残るものであり,その経験がその後の英語学習への興味や意欲に繋がっていくことを感じた。この経験を通して,「外国語(英語)との最初の出会い」が非常に大切であることを改めて認識した。しかし,小学校から中学校へと進学すると,英単語や英文を書いたり読んだりすることに苦手意識を覚える生徒が増えていくことも事実である。「英語への興味」を持続させるためにも,今後もICTの活用,そして小中連携などについて取り組み,周りの先生方と協力し,情報共有を行いながら指導法についても常に見直していかなければいけないと感じている。そして今,教えている生徒たちにとって,義務教育における英語(外国語活動)との出会いに関わった英語科教諭として,卒業までをしっかりと見届けたいと思っている。

(図5)小学校で作成した「行きたい国とその理由」

■参考資料:外国語科(英語)学習指導案

【引用】