6年 比とその利用

自ら等しい比に気づき,比の性質を見出す指導

1 指導のねらい

前時まで,比の意味と表し方,比の値の意味と求め方について学習してきている。本時では,その考えを基に比の相等の意味や性質を理解させることをねらいとしている。指導にあたっては,具体的な場面によって理解させるようにすることが大切である。

2 私のアイディア

(1) 具体的な場面で比が等しいことに気づく教材の工夫

「同じ時刻にかげの長さを測定した」という場を設定する。

同じ時刻に測定したのはどれだろう

棒とかげの長さの割合が同じものとそうでないものを提示することで,棒とかげの長さに自ら着目し「棒とかげの長さの割合」,「棒と棒,かげとかげの長さの割合」に気づくことができる。

(2) 等しい比の性質に自ら気づき,その意味を理解をさせるための工夫

等しい比の性質に気づかせる際には,「これも同じ時刻に測定したものだろうか」と具体的な場面(エとオ)を提示する。式と具体的な場面を結びつけさせることで,比の性質に気づくことができる。

3 授業の実際

1 目標

比の値が等しいとき2つの比は等しいことがわかり,その性質を調べることができる。

2 展開

学習活動 発問と子どもの反応・指導のポイント
1 同じ時刻に調べたのは,どれかを考える。
同じ時刻に調べたのはどれでしょう。
アとイだと思う。かげの長さは棒の5分の4で,イも5分の4になっているから。
ぼくもアとイだと思う。その理由は,イはアの棒の長さの3倍になってかげも3倍になっているからです。
figure06_02
ポイント
かげの長さは,棒の長さで決まることを測定の絵をみせて具体的につかませた後,課題解決させる。
2 比の値を求め,等しい比の意味,用語を知る。
image06_02
本当かどうかかげと棒の割合を比や比の値で確かめてみよう。
<子ども達のノート>
ア 40:50   40÷50=
イ 120:150 120÷150=
アの比は40:50だから比の値はになります。
小数で表すと,0.8になります。
イの比は,120:150だから比の値はです。
ウの比は,90:100で比の値はになります。
アとイは比の値が同じになっていたから,同じ時刻に測ったんだと思う。
比をみるとイはアの3倍になっている。
このように比の値が同じ時2つの比は等しいといって次のようにかきます。
40:50 = 120:150
ポイント
比の値と比の性質,2つの考え方を整理し,等しい比の意味をおさえる。
3 等しい比の性質を理解する。
40:50=120:150をみて何か気づいたことはありませんか。
アとイを見ると,棒の長さが3倍になると,かげの長さも3倍になっている。
ウは,棒の長さはアの長さの2倍になっているけど,かげの長さは2倍になっていないから等しくない。
比が等しくなるのはどんな時でしょう。
両方の数に同じ数をかけないといけない。
これは同じ時刻に調べたと言えるでしょうか。
言えます。それは,比で表すと80:100になり,比の値がになるからです。
棒の長さもかげの長さも2倍になっているからです。だからfigure06_05とかける
これはどうだろう。
言えます。20:25になり,比の値は5分の4になります。
両方とも2でわっている。
ポイント
等しい比の性質を自分たちから見いだすように①同じ数をかけたもの②同じ数で割ったものを順に提示していく。

等しい比をみると何かきまりがありそうですね。
両方の数に同じ数をかけたり,わったりしている。
そうですね。等しい比には次のようなきまりがあります。 a:bの両方の数に同じ数をかけたり,両方の数を同じ数でわったりしてできる比は,みんな等しい。
ポイント
具体的な数の等しい比から,教科書を見せて一般化を図る。
4 練習問題を解く。
<一斉練習>
①4:6=20:
②5:4=:32
③30:40=3:
<個人練習>
2つの比が等しいか調べましょう。
④4:6と12:18
⑤20:35と40:70
⑥15:25と3:5
⑦3:4と4:5
⑧6:8と9:12
練習問題をします。には何が入るでしょう。
30です。6×5をすればいいからです。

20÷4をすると,5倍になっています。だから,6×5をします。

ポイント
比の性質を使った練習は,カードを使って一斉で行う。等しい比かどうかを調べる練習はプリントで行い,比の値や等しい比の性質のどちらを使ってもいいようにする。
5 本時のまとめを行う。
今日は,どんなことがわかりましたか。
等しい比を見つけるときには,比の値を求めればいいことがわかりました。
比が何倍になっているかを考えればいいです。
等しい比が使われているものを探したいと思いました。

4 授業を終えて

(1) 「同じ時刻にかげの長さを調べたのはどれだろう」と問うことで子どもたち自らが「かげは棒の何倍だろう」と比の値に着目していった。また,教科書に提示された(ア)(イ)だけでなく(ウ)のように等しい比ではないものを入れることで,等しい比にに気づき,理解が深まった。

(2) 等しい比の性質を見出す場面では,式と場面を対応させながら指導したことで「比の両方の数を同じ数でかけたり,同じ数でわったりしてできる比は等しい」という比の性質に児童自ら気づき,理解することができた。

事例集トップへ戻る