この指導では,線対称の意味や性質について理解させ,線対称という新しい観点に着目して基本的な図形を考察することをねらっている。この際,算数的活動を通して安定性のある均整のとれた図形の美しさに着目させ,図形に対する豊かな感覚を育てていくこともねらっている。
そのためには,線対称という新しい観点に自ら気づくような教材や場の設定をしたり,線対称に着目して図形を考察したりする活動を取り入れていくことが大切である。
(1) 既習の図形を考察する観点から線対称に自ら気づく教材と活動の工夫
— 教材の工夫 —
これまでに学習した基本図形や身の回りにある図形で線対称,点対称,そのどちらでもない図形を提示する。
— 活動の工夫 —
新しい観点(線対称)気づくよう,段階的に図形を提示し,仲間集めの観点を考えさせていく。
(2) 線対称な図形を習得させる活動の工夫
「線対称な図形をさがしましょう。」
身の回りにある図形や点対称な図形なども入れておき,線対称の習得を図る。
線対称の意味が分かり,線対称な図形を見つけることができる。
学習活動 | 発問と子どもの反応・指導のポイント | |
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1 | 図形を見て話し合う。 |
図形を見て名前や定義,性質など児童の言葉を引き出しながら図形を見る観点を整理していくようにする。 |
2 | 仲間集めをする。 (1) 正方形の仲間 |
最初に正方形を仲間の学校に入れることで,これまで学習した図形の観点でいろいろな仲間集めをさせる。 |
(2) 正方形と正三角形と同じ仲間 |
正三角形を入れることで,直角や辺の数でなく,「辺の長さ」や「多角形」に絞っていける。 |
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(3)正方形と正三角形とちょうと同じ仲間 |
「ちょう」の形を提示することで,「これまでの見方では仲間集めができない」「同じに見るためにはどうすればよいか」と考えさせ,新しい見方の「折り曲げて重なる」ことに気づかせたい。 グループで話し合ったり,図形を動かしたりしながら考えさせる。気づかない場合はちょうを曲げようとする操作をしてみせる。
一人一人に1〜10までの図形を持たせ,図形を折り曲げる活動をさせることで,線対称の意味をつかませていく。活動を通して対称の軸が1本ではないものがあることに気づいた時は,児童の言葉を取り上げるようにするが,詳しくは次時に扱うようにする。 |
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3 | 用語「線対称」「対称の軸」を知る。 |
線対称の特徴をまとめるため,図形の名前を考える活動を取り入れる。そして,教科書で正しい用語や定義を知らせていく。 |
4 | 身の回りから線対称な図形を見つける。 |
教材の中には,基本図形だけでなく,身の回りの記号やアルファベットなど入れておく。また,点対称な図形も入れておき,折り曲げる操作ではぴったり重ならないことにも気づかせていきたい。 |
5 | 学習のまとめをする。 |
学習を振り返って,線対称な図形の特徴をなるべく児童の言葉でまとめていく。 |
(1) 正方形の仲間を集める活動を通して,児童はいろいろな観点で図形を見ることができた。また,段階的に仲間集めの観点を絞っていったことで,既習の学習を活用して仲間集めの観点を考えることもできた。教材の中に基本図形だけでなく,ちょうちょを入れたことで,2つに折り曲げたらぴったり重なるという線対称な図形の観点にも自ら気づくことができた。
(2) 練習の際の教材として,図形だけでなく,文字や記号も入れたことで,身の回りには線対称な図形がたくさんあることに気づくことができた。また,点対称な図形も入れたことで,線対称な図形との比較ができ,次の学習につなげることができた。