これまで,児童は,あまりのないわり算の意味や計算の仕方を学んできている。ここでは,わりきれない場合はあまりを出すことで,これまでと同じようにわり算としてとらえることができるようにすることをねらいとしている。
あまりのあるわり算の意味をより理解させるための工夫
(1) 問題の工夫
13このメダルを1人3こずつわけると何人にわけられますか。
あまりのあるわり算の問題では,通常,問いの文を「何人にわけられて何こあまりますか。」となっているが,ここでは,「何人にわけられますか。」とした。
そうすることで,児童が問題解決をする過程で,これまでのわりきれる場合との違いに気づき,素直に「あれっ。」「おやっ。」という疑問が生じて「あまり」の存在に自ら着目し,図と関連づけて考えることができると考える。
(2) 事象→具体的操作→図→式の過程を大切にそれぞれを結びつける
これまで,あまりのあるわり算の指導では,操作や図などの活動を十分にとることなく,九九をつかった計算の仕方の指導に重点を置く傾向があった。そのため,「商やあまり」の意味が十分理解できず,あまりのあるわり算に抵抗を示す児童が多く見られた。
そこで,事象→具体物操作→図→式の過程を大切にすることで,これらが相互に結びつき,イメージ化できて,あまりの意味がより理解できると考える。
ものを分けるとき,あまりが出ることもあることを知り,あまりのあるわり算の意味を理解する。
学習活動 | 発問と子どもの反応・指導のポイント | |
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1 | 既習の問題をする。 |
問題①メダルが8こあります。1人に2こずつわけると、何人にわけられますか。
既習のわりきれるわり算を想起させる場合にも,事象や図・式を結びつけさせておき,問題②の解決の手がかりとなるようにする。 |
2 | 問題②を読んで自分なりに考える。 |
問題②13このメダルを、1人に3こずつくばると、何人にわけられますか。
まずは,自分なりに九九を用いたり,図をかいたりしながら考えさせる。 |
3 | 自分なりの考えを出し合う。 |
九九で考えた児童3×4=123×5=15 3の段の答えに13がないからこまりました。 図で考えた児童○○○○○○○○○○○○○図でかいてみたけど・・・。何人といったらいいかわかりません。
3の段の九九にないことやぴったりわけられずに1つ残ってしまうなどの児童の迷いを取り上げ,これまでのわりきれるものとの違いを明確にする。正答(4あまり1の考え)が出た場合は,取り上げて意味を説明させたり,全員で考えたりするとよい。 |
4 | 具体物操作や図で確かめる。 |
全体で確かめながら,残った(余った)メダルを「あまり」とし,表記の方法を知らせる。その際,事象(問題文)や操作と式とを結びつけながら,わり算でできることや「あまり」の意味を理解させる。
全体で式まで完成させた後,一人学びで図や式にまとめ,結びつけさせることで商やあまりの意味を理解させる。 |
5 | 用語や意味を知る。 |
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6 | 練習問題をする。 (1)類似の練習問題 |
問題③17このメダルを、1人3こずつ分けると、何人に分けられて何こあまりますか。学習したことをもとに自分の力で進めていくようにする。その際,式だけでなく,図や操作などで確かめさせ,結びつけられるようにする。 |
(2)式を見てわりきれるかどうか見ぬく問題 |
カードを見て即座に答えさせる。その際,3の段にある・ないということはどういうことか図でイメージ化できるようにし,わりきれるかどうか判断させる。 | |
7 | 本時の学習のまとめをする。 |
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(1) 「何人に分けられますか」と言う問いは,初めて「あまり」に出会う児童の素直な迷いをひきだし,児童自らが,答えをどのように表すかや「あまり」の意味について考える活動へと導くことができた。
(2) 具体的操作をしたことで,あまりの意味や表し方を全員で確かめることができた。また商やあまりを図や事象でとらえることができた。
(3) 練習問題では,九九を用いて答えを導き出した児童もいたが,図をかいて確認したり,図をもとに答えの意味を友だちに説明したりすることができ,図のよさを児童自身も感じることができていた。
(4) わり切れる・わり切れないの問題では,式と図とを結びつけることで,九九を用いた思考へとつなぐことができた。