ホーム > 教師の方へ > 高等学校(英語) > 授業実践記録(英語) > 「アクティブな授業」を目指して

教師の方へ

授業実践記録(英語)

「アクティブな授業」を目指して

香川県立高松西高等学校 高橋 真弓

1.はじめに

昨年度創立40周年を迎えた本校は,高松市郊外の自然豊かな丘陵地にある進学校である。生徒たちは坂道を自転車や徒歩で通学し,小鳥のさえずりをBGMに授業を受けている。授業態度や生活態度はたいへん真面目である一方で,教師の指示を待つ受け身的な姿勢が見受けられることがある。

いったん高校を巣立てば,生徒は先の読めない難しい時代を生きることになる。高校時代に,英語の授業の中でも,英語の運用能力はもとより,考える力や生きる力も身に着けてほしい。そこで私は,「アクティブな授業」を目標に授業改善を行っている。Vision QuestⅡLesson 11(p.36,p.37)を扱った授業を例にあげて,私が普段授業で行っている工夫を紹介したい。

2.Lesson11 1課分の流れ(配当時間約2時間)

① 予習

(1) 本文の単語・連語プリント(サンプル1)を完成させる。

(2) 教科書p.37のExercisesをノートに解く。

工夫ポイント

単語・連語のプリントに日本語を与えておくことで,生徒が教科書から答えを探す必要が生じ,必然的に事前に教科書にひと通り目を通すことになる。

サンプル1:単語・連語プリント(PDFファイル:62KB)

② レッスンの導入

p.36のモデル文を音声で聞き,TFで内容理解を確認した後,モデル文のテーマに沿った内容に関してペアで質問しあった。Lesson 11は世界遺産がテーマになっているので,ペアで自分の訪れた世界遺産について質問しあう活動を行った。会話に利用する例文はあらかじめ板書しておいた。

板書した例文

“Have you been to any World Heritage Site? Where have you been? Please explain how you liked it.”

ペア活動の後,数名の生徒を指名し,パートナーが訪れた場所とその印象について英語で説明をしてもらった。以下は,その一例である。

Teacher: Which World Heritage Site has your partner been to? How did he or she like it?

StA: StB has been to Hachijojima Island. He went there by boat. It was so far away, but beautiful. He had a great time.

工夫ポイント

ペア活動の内容確認では,パートナーが話した内容を説明させると,相手の発話を注意深く聞くようになる。また,主語や時制に注意を向けて答える必要が生じ,話法や時制の復習となることも期待できる。

③ 重要語句の確認(順番決めのための列ごとレース)

サンプル1のプリントで重要単語・連語の確認(発音を含む)をしたのち,重要単語・連語および文法事項の定着を「列ごとレース」で確認する。

列ごとレース

教室が縦6列ある場合,まず横1列目の生徒が起立し,教師が質問する。答えが分かった者は挙手し,答える。正解したら,その生徒のいる縦列にポイントが入る。次に横2列目の生徒が起立し,質問に正解したらその生徒のいる縦列にポイントが入る。横6列目まで答えたら,横1列目の生徒に戻る。最終的に,ポイントが少なかった列から指名する,という手順である。どんなにおとなしいクラスでも手が挙がる,お勧めの活動である。

Exercisesの解答など,授業における指名順を決めるために,授業の初めに行う。語彙,文法事項の定着や授業の活性化にも有効な活動である。

列ごとレースのスクリプト(Lesson18):(PDFファイル:59KB)

Lesson 11の重要語句確認のための列ごとレース

重要語句: the Prime Minister, uncle, be impressed by~, win the lottery, make a mistake

質問例

・What is the name of the present Prime Minister of Japan?

・Is ‘uncle’ your parent’s brother or your grandparent’s brother?

・What were you impressed by most when you went to Hokkaido on the school trip?

・If you win the lottery, how do you want to spend the money?

・When you find out that you have made a mistake, what kind of gesture do you use?

工夫ポイント

語句の意味を直接尋ねるのではなく,語句に関連した知識を尋ねたり,自己表現につながる質問を取り入れて,発信力の養成につながる内容にする。「なるほど!」と気づく瞬間(aha moment)を演出し,定着につなげる。解答が出た後,覚えてほしい語句を黒板に書き,再度全員で読む。教科書の英文に触れる前に難度の高い語句をしっかり理解し定着させておくことで,教科書の内容がとっつきやすくなり,学ぶ内容を理解しやすくなることが期待できる。

④ 自作プリント(サンプル2)による文法事項の導入

Lesson11は高校1年時に学んだ仮定法を扱っているが,2年生の秋の時点で正確な知識が定着している生徒はあまり多くない。そこで,文法事項導入には自作プリントを利用し,1年時に学んだことを思い出し,また,級友と共に考える時間を確保した。

手順としては,まず個々で解いた後,4人程度のグループで約5分間話し合った。その間,教科書やVision Quest総合英語の参考書,辞書などの参照も認めた。仮定法の基本を思い出し,理解した上で,p.36のStudy PointsおよびExpressionsの例文を提示し,仮定法の総復習を行った。

サンプル2:文法事項導入のプリント(PDFファイル:58KB)

工夫ポイント

プリントの内容は,生徒にとって身近な話題を取り上げ,ストーリー性を持たせた。他愛ない内容であっても,生徒たちは真剣に考え話し合った。このプリントでは,仮定と条件の違い,Ⅰ hopeとⅠ wishの使い分け,仮定法過去と仮定法過去完了の使い分けに焦点を当てた。「間違う→気づく→理解する」というサイクルを作り出すよう工夫した。

⑤ Exercisesの解答

授業初めの列ごとレースで決まった列順に指名していく。

工夫ポイント

指名する際,ひとり一問当てるのではなく,”The students of this line, please write the answers for No. 1. You can choose the problem you like.”( 「この列は大問1。どの問題を解いてもかまいません。」)と言って大雑把な当て方をすると,生徒は自分が解けそうな問題を解答しようと,とても素早く行動してくれる。また,予習していないともたもたして出遅れてしまうので,予習をしてくる必然性が生まれるという効果も期待できる。

⑥ Goal!を書く

生徒には英語表現ノート(サンプル3)を持たせている。授業中に約10分時間を取り書かせる。書いた後,時間があれば,ペアやグループで交換して,お互いのエッセイを読ませる。授業の最後に回収し,添削して返却する。よいもの(書く意欲を高めるために,評価の観点は「意欲・関心」とする。)にはシールを添付し,平常点として評価する。

ノートは春休み中に業者に作成を依頼し,年度当初に配布している。ちなみに作成費は一冊約200円であった。

サンプル3:英語表現ノート(PDFファイル:1,984KB)

工夫ポイント

大きな字で書けるようにA4サイズで作成。左ページに英作した後,右ページには清書のページを設けている。また,日記のページや,シールを添付するページも設けている。さらに,定期試験ではGoal!に類似したテーマの自由英作文を課している。

⑦ Study Points・Expressions暗記テスト

p.36のStudy PointsとExpressionsを理解した後,Study PointsとExpressionsの例文の和文英訳テストを行った。7割で合格であるが,不合格になったら,合格するまで再テストを繰り返す。年度当初は再テストの生徒が大勢いたが,最近はほとんどの生徒が一回で合格するようになった。

工夫ポイント

暗記は自宅学習にゆだねたが,テスト前にリード・アンド・ルックアップなどを通して,再度英文を頭に焼き付ける時間を設けた。

3.成果と今後の課題

授業中眠そうにする生徒がいなくなった。また,お互い教えあう姿勢が身に付き,授業に向かう態度が能動的になってきた。英語表現ノートを2年生全員に持たせて3年目になるが,校外模試の表現力の成績に伸びがみられる。添削は手間がかかるが,継続が実力につながっていることを実感している。

しかし,まだ課題もある。授業スタイルが教師主導で,「自立した学習者の育成」へのさらなる工夫が必要である点,生徒が自分の意見を口頭で述べる時間や練習が不十分である点などである。また,表現ノートの評価項目もさらに工夫が必要である,例えば,”Poor”(不可)という評価は”Try again”(再提出)に改定したいと考えている。

私が究極の目標と考えている「考える力や生きる力をつける授業」となるように,これからも様々な先生の取り組みから学びつつ,さらに授業改善を進めていきたい。