授業実践記録(数学)
立方体の展開図を探してみよう
~グループ活動での学び合いを通して理解を深める~
単元:1年 空間図形
1.題材について
(1)平面図形,空間図形の単元は,それまでの正負の数,文字の式,方程式,関数の単元とは異なり,視覚的,直感的に情報を処理する学習,作図や立体制作等の作業を伴う学習が多く含まれ,生徒にとっては比較的親しみやすい単元となっている。
しかし,図形の認知が苦手な生徒にとってはわかりにくい単元でもあり,イメージが湧かなかったり,集中が続かなかったりする生徒もいる。
(2)『立方体の展開図を探し全部で11種類あることを確認する』というこの課題は,発見するおもしろさがあり,比較的多くの生徒が意欲的に取り組める学習である。展開図を切り取り立体(正多面体等)を制作する作業を行った後で,この課題を取り入れている。
(3)個人で考える場面だけでは,考えが進められない生徒もいるので,グループで教え合う場面も作りながら,学習を進めている。
2.授業実践
(1)指導計画
空間図形・・ | 1節:立体と空間図形(10時間) | |||
1. | いろいろな立体 角錐・円錐・角柱・円柱・正多面体 | ・・・・・・・ | 3時間 | |
角柱・角錐の展開図 円柱・円錐の展開図 | ・・・・・・・ | 3時間 | ||
立方体の展開図 | ・・・・・・・ | 1時間 | ||
2. | 空間内の平面と直線 | ・・・・・・・ | 2時間 | |
3. | 立体のいろいろな見方 | ・・・・・・・ | 1時間 |
(2)教材
- 記入用のマス目入りワークシート(図1)
- 黒板提示用の正方形カード(裏にマグネットシートを張る)
- 市販教材(正方形のパーツをはめ合わせて,立方体を作れる遊具。この学習では,正方形のパーツを6つ組み合わせて展開図を作り 立方体が作れるかどうかを確認する作業に使用する。)
【例】正方形のパーツをはめ合わせる
(3)授業の流れ
① 課題を提示する
ワークシート(図1)に,立方体の展開図をできるだけたくさんかいてみよう。
② 補足説明をする
(生徒から,質問がでます)
同じ展開図の上下をさかさまにしたもの(図2),縦横の向きだけを変えたもの,裏返しにしたもの(図3)を,別な展開図として数えることはできない。
これらは同じものだということをあらかじめ確認しておく必要がある。
③ 展開図を探す活動
個人で探す | ||
[生徒の様子] ・5~6個書いて,後が出てこない。 ・1~2個しか思いつかず行き詰まる。 |
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グループで探す | ||
[生徒の様子] ・互いに自分が思いつかなかった展開図を伝え合う。 ・市販教材で展開図を組み立て,本当に立方体になるかを確かめて見る。 ・見つけた展開図をワークシートに記入する。 |
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「全部でいくつあるのか」という質問がでたら,11種類あることを伝えて考えさせる。 | ||
ワークシートに,見つけたすべての展開図を書き込む。 |
④ 展開図を発表する活動
- 1班から順に1つずつ,見つけた展開図を黒板に提示していく。
- 次の班は,既に提示された展開図以外のものを提示する。
- 展開図として考えた図がすべて出つくすまで行う。
⑤ 展開図として認められるものを見分ける活動
まず,展開図として認められないものを指摘し,その理由も述べる。
4つの正方形がくっついているもの(ス) |
横に5つ並んでいるもの(ウ) |
横に5つ並んではいないが,組み立てたとき同じ面に2つ重なってしまうもの(オ)(ケ)(シ)(セ)(チ) |
- 展開図として成立するものは(ア)(イ)(エ)(カ)(キ)(ク)(コ)(サ)(ソ)(タ)(ツ)の11個
⑥ 11種類を早く見つける方法を考える活動
タイプ分けをして,順番に落ちなく探していく方法を考える。
1-4-1タイプ
一番長い横の列に4つ並ぶタイプ。その上下に1つずつ正方形がつく。上下につく2つの正方形の位置を変えていくと6種類の展開図が得られる。
1-3-2タイプ
一番長い横の列に3つ並ぶタイプ。その上に1つ,その下に2つ正方形がつく。一番上につく1つの正方形の位置を変えると3種類の展開図が得られる。
2-2-2タイプ | 3-3タイプ | |
3-3タイプは,一番長い横の列に3つ並ぶ1-3-2タイプの特殊形とも考えられるが,2-2-2タイプと同様にそれぞれ単独で考え出されてくることが多い。 |
思いつきでなく,ルールを作って探していくと,スムーズに11個を探し出すことができる。
3.授業実践を通して
- グループで教え合い,点検し合う活動では,多くの生徒が課題に対し主体的に取り組むことができ,『見つけた』という達成感を味わうことができる。
- 『なぜ展開図が11種類なのか』を考えてみたり,他の立体についても展開図を考えてみたりすることで,さらに発展的な取り組みへと進めていくこともできる。