平成23年度より小学校において全面実施となった学習指導要領の改善の基本方針を確かめると,以下のように示されている。
「科学的な見方や考え方を養う」「科学的な見方や考え方を育成する」という表現がある。「科学的」というのは,学習指導要領で実証性,再現性,客観性を検討する手続きを重視することと記されており,ここで,「科学的な見方」を,「考えた予想を確かめることのできる実験計画を立てて実験を行う。結果を分かりやすくまとめる。」とし,「科学的な考え方」を,「根拠をもった予想を立てる。結果から実験の目的に沿った考察をする。」として考える。
4年生において,「科学的な見方」と「科学的な考え方」を育てること,すなわち「科学的に考える力」を育てるため,次の仮説を立てて研究を進めることにした。
4年生の「空気や水をとじこめると」と「ものの温度と体積」「もののあたたまり方」の3つの単元で仮説を検証していく。本研究で扱う3つの単元は,空気と水または,空気と水・金属を扱っており,予想の根拠を考えるときに前単元の実験結果を理由にすることができたり,単元内で空気と水や水と金属など比較しながら考察したり,予想の根拠としたりできるだろうと考え,この3つの単元で仮説の検証を行った。
「空気や水をとじこめると」
「ものの温度と体積」
空気を扱う最初の単元である「空気や水をとじこめると」の導入に,4年生の児童が空気について知っていることを言いあった後に,ポリ袋に空気をとじこめ実感させたり,空気をとじこめた道具をもってきて遊んだりする時間を確保した。
ホワイトボードや移動黒板などを利用して,自分のノート以外にも友達の考えも参考にできる場を作り,既習の内容を整理した。
予想は実験の結果がどうなるのかを一文で書き,次の行に理由を書くようにする。「空気を冷やすとどうなるのかな」…(「ものの温度と体積」より)
「自分たちの予想はどんな実験でたしかめられるかな」…(「ものの温度と体積」より)
自分たちが考えた予想を図に表し,学級で予想を共有した後,同じ予想をした児童が同じグループになり,実験計画を考えた。
計画した実験の結果の見通しを,以下のようなひな形で表現させ,予想を実証できる実験かどうかをふり返らせた。
「空気や水をとじこめると」や「ものの温度と体積」では,結果を図や表を利用して記録した。また,「もののあたたまり方」では結果を主に図で記録するようにした。
「ものの温度と体積」より
手であたためた | 氷で冷やした | |
試験管の口の様子 | 石けんのまくがふくらんだ。(0.5cm) | 石けんのまくが試験管の中に入った。(0.7cm) |
考察は以下のようなひな形にあてはめてるようにする。これらの書き方を教えながら,各単元の学習を進めていった。
3つの単元を通して児童の見方や考え方が科学的になっていった。その変化を一人の児童のノートを抜粋しながら紹介したい。
「電気のはたらき」
実験:①と②の2つの回路でモーターと検流計の動きについて調べる。
実験の結果を予想できているが,根拠をまったく書くことができていない。
根拠を書くことに思い至っていない。
「ものの温度と体積」
実験:あたためた鉄球が輪を通るかどうか確かめ,体積の変化を調べる。
実験の結果を予想し,根拠として,既習事項を活用していた。
「もののあたたまり方」
「ものの温度と体積」
実験:せんをした丸底フラスコをあたためると。
結果を箇条書きにしてある。
実験:金属も温度によって体積は変わるのだろうか。
表を使うことで,いろいろな条件の記録をわかりやすくまとめることができた。
「もののあたたまり方」
実験:空気はどのようにあたたまっていくのだろう。
言葉では,わかりやすく表現できない場合に,図を用いることで,クラスの児童にわかりやすく伝えられ,結果を共有できた。
「空気や水をとじこめると」
実験:空気でっぽうで玉をとばそう
実験の結果から疑問に思ったことや結果について書いてあり,結果と考察を混同している。
「もののあたたまり方」
実験:金属がどのようにあたたまるのか調べよう。
結果から自分の考えを書くことができている。
結果は実験で起きた事実,考察は事実から自分が考えたことと,区別ができるようになった。