概念は物自体に関したものであり,定義によって与えられます。観念は対象物に対して心の働きが加わったもの,つまり認識されたものです。したがって,概念は外的・共通的なものであり,観念は内的・個人的なものです。
概念は物自体に関したもので,心の働きとは無関係ですから,例えば「数とは……である」というように,その概念の定義が与えられたからといって,その意味内容がわかるとは限りません。
観念は認識ですから,程度の違いがあります。物の観念を育てることは,物についての認識を深めることであり,物に対するイメージを豊富にすることです。
例えば,6という数を見た場合,ブロックが6個ある,または鉛筆が6本あるといった具体的な存在が頭に浮かぶこともあるでしょうし,トランプの6のカードやサイコロの6の目のような象徴的な図を思い描くこともあります。また,計算に関連して,5+1と見たり,3×2と見たりすることも考えられますし,順序的に5の次の整数と考えることもあります。これが6のイメージです。これは,その数が出てきたときの様子に左右されますし,人それぞれによっても違います。こうした数に対する豊富なイメージ,つまり数の観念があれば,場合場合に応じて適切な姿を思い浮かべることができ,数を生かしていくことができます。
また,量は単位と数値で表されて初めて概念となります。しかし,実際の量は経験的なものであって,その経験の過程では初めから数値があるわけではなく,漠然とした大きさの感覚,つまり量の観念があって,それが概念化され客観化されて数値表現に至るのです。
このように,算数では,概念の理解ということよりも,観念の育成ということが,目標となるのです。