1年
うちのひと     
〜家族のつながりの深まりをもとめて〜     
吹田市
織田 龍彦

1.単元について

 子どもが人として成長するもととなるのは,家族の受容・思いやりであろう。この単元では子どもが家族の家でしていることを見直し,家族のつながりを実感し,やっぱり家族っていいなという「家族のよさ」をとらえてくれたらよいと思っている。「家族の手」を手がかりにして,家族が具体的に何をしているかを調べることによって,さまざまなことをしていることに気付く。そこで,そのなかでも,いちばん好きな「手」の場面を絵に表現する。それは,子どもにとって快い・家族の愛情のこもった場面であり,絵に表現する過程で家族の思いをふくらませ,わたしたちのためにしてくれていることが実感される。
 そして,そんな家族にしてあげられること。食器はこび,りょうり,かたもみなどたどたどしさをもちながらも実行していくことやそれに対する家族のメッセージによってほのぼのとした家族との関わりで,より家族のつながりが深まっていくと考えられる。


2.評価

 ○興味関心
 第1次1時 興味関心を持って,手形をとっているか。
 第1次3時 何をする手かカードに書かれているか。

 ○

思考・表現
 第1次5時 好きな手の家族の様子を絵に表現することができるか。
 第2次1・2時 がんばり券,おてつだい券,プレゼントを工夫してつくることができるか。

 ○

気付き
 第1次5時 家族がみんなのために,自分のためにやってくれていることに気付いているか。
 第3次1・2時  家族のつながりのよさを感じているか。


3.授業の実際

活動計画(全10時間)と実際
 学習活動教師の支援と留意点



家族の手形を見て自分の手形をとる。
自分の手形を見て手の感じを書く。


自分の家族の手形をとり,手の感じを書く。
【一週間程度,時間をとる】
家族の手形を見せ,思ったことを発表させる。
誰の手形だったか紹介し,自分の家族の手形をとってみたい気持ちにする。



家族の手形をつなぎあわせ,家族の手形の特徴を発表する。
【お母さん,お父さん,兄・姉,弟・妹】
家族の手の特徴を発表させることによって,何をしている手なのか,調べる活動へと発展させる。





家族の何をしている手があるのか調べる。
【日曜日をはさんで1週間程度時間をとる】
何をしている手かベスト6
[おとうさん]
 (1) あそんでくれる
 (2) もちあげる
 (3) 仕事をする
 (4) 車のハンドルをにぎる
 (5) ファミコンをする
 (6) タバコをすう
[おかあさん]
 (1) 料理を作る
 (2) 洗濯をする
 (3) 仕事をする
 (4) 掃除をする
 (5) 裁縫をする
 (6) 化粧をする
[兄・姉]
 (1) いっしょにファミコンをする
 (2) 虫をとってくれる
 (3) 時計を合わしてくれる
 (4) 動物をだく
 (5) 野球をする
 (6) ピアノをひく
[弟・妹]
 (1) おもちゃで遊ぶ
 (2) フォークとスプーンを持つ
 (3) 拍手する
 (4) 絵本を見る
 (5) ゆびしゃぶり

家族が何をしている手なのか発表させる。
わからないところ,もうすこしくわしいことを知りたいことを交流させる。



家族の手のなかで好きだなと思う手の場面を絵に表わす。
【お母さん,お父さんの絵が多い。40種類】
 (1) 車を運転する
 (2) 私といっしょに遊ぶ
 (3) カメラを持つ
 (4) ファミコンをする
 (5) 料理を作る
 (6) 茶碗・コップなどをもつ
 (7) ワープロをうつ
 (8) 洗濯・掃除・洗い物をする
 (9) 弟をだく
 (10) 壊れたものをなおす
 (11) 煙草をもつ
 (12) ジュースをかってくれる
 (13) 日曜大工をする
 (14) テレビをつける

選んだ手の絵はこんなところがあるから好きだというわけをできるだけ書かせる。
絵が描きにくい児童に対しては具体物を示す。






こんな家族にどんなことをしてあげられるか。





がんばり券,お手伝い券,プレゼントを作る。
 (1) かたもみ(21人,お父さん・お母さん・おばあちゃん)
 (2) お料理(9人,お母さん・兄)
 (3) 食事のあとかたづけ(3人,お母さん)
 (4) ビールをつぐ(3人,お父さん・お母さん)
 (5) 弟のめんどう(3人,お母さん)
 (6) 掃除(2人,お母さん)
 (7) お風呂洗い(お父さん)
 (8) ふとんのかたづけ(お母さん)
 (9) 背中をこする(お父さん)
例1
例2
家族にしてあげられることをがんばり券,お手伝い券,プレゼントにしてみよう。



お家のひとにしてあげたことを話す。
【したことを話すとともに,裏面に書かれた家族のことばを読む。】
例3
例4
したことを話させるとともに家族からのメッセージも読ませる。

楽しかったことを絵に表わす。
楽しかったことを紹介する。


4.成果と課題

 家族の手で子どもが快いと感じるのは家族で車での移動やいっしょに遊ぶという場面の手である。無意識ではあるが,料理・洗濯・掃除など母親に感謝する手,日曜大工など父親のたくましさに魅力を感じる手もある。
 このような手に対して,子どものできること。感謝の気持ちを表わしてか,「かたもみ」が圧倒的に多い。料理・あとかたづけも多い。弟の世話,親にビールをつぐ,お父さんの背中をこするなどほほえましいものもある。
 それに対して家族からのメッセージ。「かたたたき,強くなったりよわくなったりしましたが,とても気持ちよかったです」「ほんとうに長生きしてよかった」「弟2人おいて安心して買い物に行けました」「冷やしたビール,そして娘についでもらえるビールはなんともいえない」など家族からのメッセージにほのぼのとした家族愛がうかがえる。「おにいちゃんにサラダを作ってあげるといっていたのに本人が実行するまで黙って見ていました。でも一度も作りません。心のなかではしなくちゃと思っていたのでしょうが」というメッセージもある。してあげたいと思っても,続かなかったりこのようにわすれたりするものである。でも,この活動で家族に対して改めて,思いを馳せたことは確かである。家族の手形をとるとき『お母さんの帰りが遅く,帰ってもいそがしいから手形をとれないので,手形をとる紙いらない』と言い張ったM君の母親から「仕事で帰りが遅いためなかなか肩もみはしてもらえません。でも休みの日などお願いすると気もちよく引き受けてくれます。1〜2分と短いですが結構やさしいMです」というようなメッセージがとどいている。家庭の事情はいろいろあるが,工夫次第で家族のきずなは深まるものである。
 なお,事前に,活動の目的・内容を知らせ,手形をとる・何をしている手か調べる・お手伝い券の裏にメッセージを書くなど子どもが言ってきたら協力をして頂きたいと学年便りなどで知らせておく必要がある。


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