1.はじめに
学習指導要領が改訂され,5学年に「合同な形」の単元が戻ってきた。本年度は移行措置として,5学年と6学年で学習することとなっている。
本単元では,合同の意味や性質を理解し,合同の観点から基本図形を見直すことや,合同な三角形や四角形の作図を通して,基本的な平面図形についての理解を一層深めることをねらいとしている。
指導に当たっては,なぜ重なり合う頂点や辺,角について調べなければならないのか,合同な三角形をなぜかかなければならないのかという必然性を持たせることが大切だと考える。また,子どもたちが興味・関心を持って取り組める算数的活動を多く取り入れることにより,図形に対する感覚を養い,子どもたち自身で図形についての新しい見方や考え方を発見していけるような学習活動を組みたいと考えた。
そこで,きちんと重ね合わせられる形を合同な図形として定義し,その性質を学習した後,伝言ゲームを取り入れた合同な形の作図に取り組んだ。
2.指導の実際
第1時 ぴったり重なる形はどれかな
2つの図形がきちんと重なる時「合同」であるということを知る
第2時 どことどこが重なるのかな
対応する頂点,辺,角の意味を理解する
第3時 合同な三角形をかこう(本時)
4人ずつの班にわかれ,リーダーを決める。
リーダーは,前に来て教師が持っている三角形の図がかかれた紙を1分間見る。
メモを取っても良いが,図をかくのは×
(辺 AB =6p,∠B= 30 °のように書く)
3分間でメモしたひみつを班員に伝え,紙にかいてある三角形と合同な図形を班の全員がノートにかくことができるか競争する。
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<結果>
班 |
1班 |
2班 |
3班 |
4班 |
5班 |
作図 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
・どの班も合同な図形をかくことができた。
・リーダーはすべてのひみつを伝えていた。
・かけない子には,班の中で教え合う姿が見られた
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伝えるひみつは3つまで |
伝言ゲームのルールを理解し,作図を全員ができるようになったところで,「伝えるひみつは3つまで」と条件を加えることで,新たな課題が生まれた。
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どのひみつを選ぶか班で相談した後,2回戦を行った。 |
<結果>
班 |
1班 |
2班 |
3班 |
4班 |
5班 |
作図 |
× |
○ |
○ |
× |
× |
選んだひみつ |
辺AB=5p
辺BC=7p
辺AC=6.3p |
辺AB=5p
辺BC=7p
∠B=60° |
辺AB=5p
辺BC=7p
∠B=60° |
辺BC=7p
∠B=60°
∠A=76° |
辺AC=6.3p
∠B=60°
∠C=44° |
・2班と3班が合同条件”2辺とその間の角”を選び,作図をすることができた。
・じょうぎだとうまくかけない |
・∠Cがわかればできた |
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・コンパスを使えばできるよ |
・∠Aじゃなく∠Cでいい |
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辺AB,辺BC,辺AC
3辺の長さ |
辺BC,∠B,∠C
1辺とその両端の角 |
2回戦目から伝えるひみつを3つに絞ることで,三角形の合同条件を子どもたちに見つけさせようと試みた。「2辺とその間の角」はすぐに見つかったが,あとの2つはうまくいかなかった。そこで,班の中でうまくいかなかった,その困りを話し合うことで,かかわりの中から「3辺が等しい」や「1辺とその両端の角」を見つけることができた。
見つけた3つの方法をまとめよう
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どの方法でもかけるか3回戦に挑戦しよう |
班 |
1班 |
2班 |
3班 |
4班 |
5班 |
作図 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
選んだひみつ |
辺AB=5.4p
辺BC=6p
辺AC=4.4p |
辺BC=6p
∠B=45°
∠C=60° |
辺AB=5.4p
∠A=75°
∠B=45° |
辺BC=6p
∠B=45°
∠C=60° |
辺AC=4.4p
∠A=75°
∠C=60° |
・どの班も合同な三角形をかくことができた。
・自分たちが見つけた方法だけでなく,違うやり方でもかくことができた。
3.考察
伝言ゲームを取り入れ,班対抗の活動を仕組むことにより,合同な三角形をかく必然性を持たせることができ,全員が意欲的に目的意識を持って作図に取り組むことが出来た。
伝えるひみつを減らすことで,念頭で図形を構成し,どのひみつを選べばよいか考えたり,作図したりしながら,子どもたち自身で三角形の合同条件についての新しい見方や考え方を発見していくことができた。
今回は時間と子どもの実態を考えて,伝えるひみつを3つに限定したが,「早く伝えるにはどうしたらよいか」と投げかけ,ひみつを減らしていく方法も考えられる。
「2辺とその間」はかけるが,「3辺が等しい」や「1辺とその両端の角」の考えが出にくかった背景として,コンパスや分度器を使い慣れていないことがあげられる。これらの活動の積み重ねの重要性を感じた。
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