6年

身につけた内容や技能の発展・活用を図る授業    
〜割合を使って〜    
東京都M小学校 S教諭

1.はじめに

 割合の学習は,児童にとって難しい学習内容である。しかし,日常生活では,割合の考えは分数や百分率を用いてよく使われている。そのため,割合の意味や求め方をきちんと身につけさせておくことがとても大切である。

 5年の割合の学習で,1/3mという量分数と1/3という割合分数の違いを明確に理解していない児童が多く見られる。特に割合分数の場合,文章問題が提示されたとき,どの数値がもとにするする量・くらべる量と見たらよいのかわからず,割合の学習を苦手としている児童が見られる。

 今回の授業は,3クラスを習熟度別の4つのクラスにわけて授業するようにした。 グループは,「チャレンジグループ」・「しっかりグループ1と2」・「じっくりグループ」の4つに分けました。

 この実践は,「しっかりグループ2」で行ったものです。



2.単元名

 「割合を使って」


3.単元目標

 全体を1と考え,割合和や差を考えて解くことができる。また,割合の差や積を考え,何倍にあたるかを考えて解くことができる。


4.単元評価規準

関心・意欲・態度 割合のよさがわかり,それを用いようとする。
数学的な考え方 全体を1として,それぞれの部分がどう表されるかを考えることができる。
表現・処理 全体を1として,割合の和や差や積などを考えて問題を解くことができる。
知識・理解 全体を1として,割合の和や差や積などを考えることの意味を理解している。

5.指導計画(4時間)   「しっかりコース2」

第1時 全体の具体的な量がわかっている場面を通して,全体を1としてみることに気づく。
第2時 全体を1と見ればよいことがわかり,割合の和を使って,問題を解くことができる。(本時)
第3時 全体を1と考えて,割合の和を使って,問題を解くことができる。
第4時 全体を1として,割合の差を考え解く問題や,割合の積を考えて解く問題ができる。


6.発展・活用を図る授業について

 割合の基礎・基本となる内容は5年で学習した。本単元では,具体的な全体的な全体の数値がわからなくても全体を1とみれば,部分の割合を求めたり,それに相当する量を求めることができることを学習する。この課題解決のためには,文章問題の構造がわかりにくいので,全体と部分の関係がイメージしやすい図などに表すことを手立てとする。また,すぐに立式できる児童には,その式が正しいことの根拠に図などを用いるように助言する。このようにして,発展・活用の問題解決に全児童が取り組むことで,割合の意味理解がさらに定着するものと考える。また,検討場面でそれぞれの考えのよさを見つけ発表し,相違点を明らかにしながらよりよい考え方に高めていき,発展・活用できる力を育ててく。


7.本時の指導(第2時 しっかりグループ1)

(1) 本時のねらい
全体を1と考えて,割合の和を使って問題を解くことができる。

(2) 展開

 
お風呂にいっぱいのお湯を入れるのに,
Aのせんで入れると10分
Bのせんで入れると15分かかります。

同時にせんを開いてお湯を入れると,
何分でいっぱいになるでしょう。
 

 
同時に水を入れるのだから,答えは10分より短いと思う。

水の全体の量がわからないので,全体を1として考えてみよう。

お風呂がいっぱいになる量を150リットルとして考えよう。

図や数直線に表して考えてみよう。

       

 
図に表してから考える。
面積図・線分図・数直線など
 
全体のお湯の量をきめて考える。
 
全体を1とし て考える。
     
 
Aのせん Bのせん あわせると
1/10 1/15 1分間にたまる量

1分間にたまる量で
図を区切っていく。
答えは,6分間
 
いっぱいになる風呂のお湯の量を150リットルとして考える。
1分間にたまる
お湯の量

Aのせん
150÷10=15(リットル

Bのせん
150÷15=10(リットル

両方で1分間に
たまるお湯の量

A+B=25(リットル

150リットルかかる時間

150÷25=6

答え 6分間
 
いっぱいになる全体の割合を1と見る。
Aのせんの1分間
1÷10=1/10

Bのせんの1分間
1÷15=1/15

両方で1分間に
たまるお湯の割合

1/10+1/15=1/6

いっぱいになる時間
1÷1/6=6

 

答え 6分間
                   
           

 

 
答えを発表する。 (6分間)
それぞれの考えについて発表する。
それぞれの考えのよさについて話し合う。
ア. 図に表すと,考え方がよくわかる。
イ. 全体の水の量がわかっているので,計算しやすい。
ウ. 全体の水の量がわからなくても,割合を使えば簡単に解けそうだ。
3つの考えの中で,簡単で似たような問題に使える考えはどれかを選ぶ。 (ウの考え)
時間があったら,下のような問題をウの考えで解く。

 
お風呂にいっぱいのお湯を入れるのに,
Aのせんでは40分,Bのせんでは60分でいっぱいになります。
両方のせんを同時に開いてお湯を入れたとき,何分でいっぱいになるでしょうか。

1分間にたまるお湯の量の割合 1/40+1/60=3/120+2/120=5/120=1/24
全体1をためるのにかかる時間 1÷1/24=24
答え 24分
           


 
全体を1として考える問題の解き方がわかった。
割合を使うと,数がどんなに大きくても解くことができる。
割合を活用した問題を日常生活から見つけてみよう。


8.本時の指導の実際   (グループに人数15人)

(課題提示の場面) 第1時に学習した場面との違いをかっきりさせた。 5分

T 昨日学習した問題とどこが違いますか。
C お風呂のいっぱいになる量がありません。
C AとBのせんでいっぱいになる時間しかわっていません。

(見通しの場面) 答えの予想と何を使って解決させるかについて発表させた。 6分

T 何分ぐらいでいっぱいになると思いますか。
C 10分よりは短くなると思います。
C 同時にせんを開くのだから,7分から8分ぐらいだと思います。
T 何を使って解こうと考えていますか。
C 図の表してとこうとおもいます。
C 全体のお風呂に量を決め,式からもと求めたいです。

(自力解決) 自分のやり方で解決させた。 15分

自分だけで解決した児童 6名
解決方法がわからず困っていた児童 9名
具体的な面積図をあげて考えるように指導した。 3名
全体のお湯の量を決めて解くように指導した。 6名

(発表検討の場面) 自分の考えを発表し,それぞれの考えのよさを見つけた。 18分

T 答えは,何分でしょう。
C 6分です。(全員が答えは合っていた)
T それぞれの考えを発表して下さい。
C1 私は,お風呂がいっぱいになるお湯の量を自分で決めて解きました (8名)
お湯の量を30リットルときめました。
Aのせん 30÷10=3 Bのせん 30÷15=2
1分間に 3+2=5 だから 30÷5=6 答え6分間です

C2 私は,まず図から考え答えを求めました。(指導案のアの面積図は略) (4名)
1分間にたまる量は, Aのせん 1/10 Bのせん 1/15
1/10+1/15=1/6 1分間に全体の1/6だから, 6分間です。

C3 私は,全体を1と考えてやりました。 (3名)
AのせんとBのせんに1分間にたまる量は,
1/10+1/15=3/30+2/30=5/30=1/6
全体を1と考え 1÷1/6=6 答えは6分間になりました。

T それぞれの考えの違いやよさについて発表して下さい。
C C1は,お湯の量をきめて解いています。
C2とC3は,全体を1と考えています。
C お湯の量をきめると,式や計算がしやすかったです。
C 全体を1と考えるとどんな入れ物でも求めることができます。

 ここで授業時間が終わってしまい,学習のまとめをした。


9.授業を終えて

 全体を1と考え解決しようとする児童が少なかった。全体を1と考えると,どんな場面でも解決できるよさを感じる授業にしたかったが,そこまでいかなかった。この単元を通して,全体を1と考えていけばよいことを,いつも意識させながら授業展開することが大切であると考えた。


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