4年
量感を豊かにする「角」の指導の工夫       
新潟県十日町市立千手小学校
増井 一久

1.はじめに

 「量と測定」の学習では,「比較」をとおして,「量の概念」と「測定の技能」を身につける。量の直接比較,間接比較,任意単位による比較,普遍単位による比較,そして,間接測定が単元の主な学習の流れとなる。

 本単元「角とその大きさ」においてもこの流れを大切にして学習を進める。ただし,これだけでは知識と技能習得に重点が置かれてしまう。そこで,「式に表すことで,量感を豊かにする」ことをねらいとした授業を指導計画に位置付けた。


2.単元名 4年生「角とその大きさ」

3.単元の目標

関心・意欲・態度   角の大きさに関心を持ち,角の大きさに着目して,身近にある図形をとらえようとする。
数学的な考え方   角をもとにする角のいくつ分と見たり,角を求めたり,かいたりする方法を考えることができる。
表現・処理   分度器を用いて角を求めたり,かいたりすることができる。
知識・理解   2つの辺の開き具合としての角の意味を理解し,大きさを表す単位(度)が分かる。


4.指導計画(全10時間)

目標 主な学習活動
角の意味を理解し,角の大きさについて大小を比較することができる。
1 絵を見て三角形の角に着目する。
2 三角定規の角を合わせて大小比較する。
3 角の定義を知り,2本の鉛筆で角をつくる。
4 つくった角を写しとり,重ねて比べ合う。
一組の三角定規のそれぞれの角に記号をつけ,角を写しとったり,重ねたりして,「記号を使った式」に表すことができる。
【本時】
1 三角定規の角に記号をつける。
2 三角定規の角を写しとったり,重ねたりして「記号を使った式」をつくる。
3 見つけた「記号を使った式」を発表し合う。
4 友だちの考えを追体験する。
角度の単位について知り,分度器を使って角の大きさを測定できる。
 
1 分度器について,そのしくみや角の大きさの単位について知る。
2 分度器を使って,角の大きさを測る。
3 練習をとおして,分度器の使い方に慣れる。
 
半回転や一回転の角の大きさについて理解し,180°より大きい角を工夫して測ることができる。
1 180°と360°について知る。
2 180°より大きい角のはかり方を考える。
3 考えを発表しあい,多様な測定方法を知る。
4 練習をとおして,180°より大きな角の測定になれる。
体を使って,色々な大きさの 角を見当づけてつくり,量感を養う。
1 教科書のふろくで角をつくる。
2 体を使って,色々な角を表現する。
3 工夫したことを発表しあう。
角のかき方を理解し,分度器を使って色々な角を工夫してかくことができる。
1 角の測定方法を生かし,角のかき方の手順を知る。
2 300°の角のかき方を工夫する。
3 練習をとおして,角のかき方に慣れる。
かたむき分度器をつくり,それを使って色々な場所の角の大きさを測ることができる。
1 かたむき分度器のよさについて話し合う。
2 かたむき分度器をつくる。
3 かたむき分度器を使って,色々な角の大きさを測る。
三角定規の角の大きさを知り,一組の三角定規を組み合わせてできる角の大きさについて考えることができる。
1 三角定規のそれぞれの角を測定する。
2 三角定規の角を合わせ,計算によって角を求められることを知る。
3 一組の三角定規の角を組み合わせ,75°,105°,120°,150°をつくる。
補充問題を解き,これまでの学習の理解を確かにする。
1 分度器で角を測定する。
2 時計の針の動きから,角度を求める。
3 指定の図形を描く。
4 計算で角を求める。
10
「たしかめ道場」
1 教科書P64の練習問題を解く。


5.授業の実際  「三角定規の角の式づくり」の授業(2/10時間)

本時のねらい
  一組の三角定規のそれぞれの角に記号をつけ,角を写しとったり,重ねたりして,「記号を使った式」に表すことができる。

授業の様子
 
あ三角定規
か三角定規
【学習1】「三角定規」と「角」に名前をつけよう

 一組の三角定規を用意させ,直角二等辺三角形の定規の角に,「あ」「い」「う」と印をつけさせ,「あ三角定規」とネーミングした。

 同様に直角三角形の定規の角に,「か」「き」「く」と印をつけさせ,「か三角定規」とネーミングした。

【学習2】「記号を使った式をつくろう」

 三角定規の準備が整ったところで,「今,印をつけた角の記号を使って式をつくりましょう。」と投げかけた。

 「何をしたらいいのかよく分からない。」という表情の子どもが数名見られたので,2人の子どもに考えを発表させることにした。

 すかさずW男さんが,「先生,あかが同じです。」と発言した。それを聞いて,私は,あかと板書した。

 次に,T子さんが「いたすうあです。」と発言した。私は,いうあと板書した。

 この2つの説明で課題が明確になり,子どもたちの表情も「早くやりたい!」のように変わった。

 この後,自力解決の時間とした。子どもたちは,角を作業プリントに写し,そこに三角定規の角を合わせ,思い思いに「記号を使った式づくり」を行った。約5分間の追求後,上記2式の他,次の式が発表された。
かい×2 かき×3 かくき
い×2=き×3 あう×2 あい×2
あき×3 くきき かう×2
あ÷き=3 あきく あいう
か×2=き×6 あ×2=う×4


【学習3】「友だちの考えをもっとよく知ろう」

 発表を聞いただけでは,友だちの考えを十分に理解できない子どももいる。また,自分では気づかなかった考えを知りたいと思っている子どももいる。

 そこで,友だちのプリントを見合う場を設けた。複雑な式をつくった子どもの席では,多くの子どもが足を止め,プリントをのぞき込み理解を深めていた。

【学習4】「友だちの考えを使ってもう一度やってみよう(追体験)」

 追体験することで,友だちの考えに対する理解を深めたり,考えのよさに気づいたりすることができる。更に,友だちの考えを生かして,新たな考えを生み出すこともできる。

<Y男さんの作業プリント>
 Y男さんは,M子さんが発表した,

 か×2=き×6

 の式がずっと気になっていった。【学習3】では真っ先にM子さんの考えを確かめに行った。そして,【学習4】で,その考えを追体験した。

 すると,Y男さんは,あかが等しいなら,

 あ×2=き×6

 だってできると考え,作業を行った。

 更に,式を変えれば,

 か×4=き×12

 これもできるのではないかと考え,さっそく作業を始めた。

 Y男さんは,「友だちの考えを生かして,自分なりの考えを生み出し,予想どおりの結果が得られたことがとても嬉しかった。」と授業感想に喜びを書いていた。


6.授業を終えて

 角度の意味も分度器の使用法も知らない子どもたちが,「記号を使った式づくり」を行った。試行錯誤しながらの作業をとおして,一組の三角定規の6つの角を使って様々な式をつくり上げることができた。

 式づくりでは,始めは作業から得られた結果を式に表していたが,次第にY男さんのように,式変形によって新たな考えを生み出すようになっていった。

 記号をつけた角を式で表す学習は,量感だけでなく,式の見方を広めることにも効果的であった。

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