5年
一人一人が主体的に学び,基礎・基本を身に付ける少人数学習
〜数量関係の領域と関連付けた「面積」指導〜      
香川県高松市立栗林小学校
利國 佐代子
1.はじめに

 「面積」の学習は,量と測定の領域だけでなく他の領域の内容とのかかわりが深い。本実践では,それらの関連を意識した指導を展開し,基礎・基本を活用しながら「自分たちで算数を創っていく」力を育てていきたいと考えた。

 ここでは特に,面積の公式の発展として数量関係の領域と関連付けた指導を重視し,関数的な見方・考え方を育てるとともに公式への理解をより深めていった。また,第6学年の内容である比例関係についても,その素地として発展的に扱っている。

【本単元で大切にしたい基礎・基本】

 既習の図形に帰着して求積方法を考えたり,公式をつくったりする過程を重視し論理的な考えなど数学的な考え方を育てる。


 公式の活用を通して,関数的な見方・考え方を養う 。

2.単元構成と学習指導形態(全13時間)

 学 習 活 動 主 な 学 習 内 容 と 学 習 指 導 形 態


 「清少納言の知恵の板」で遊ぼう
(1時間)

・シルエット遊び
・図形の変身(長方形→正方形→平行四辺形→三角形)
T.T


 三角形や平行四辺形の面積の求め方を考えよう
(6時間)

三角形の求積

平行四辺形の求積
平行四辺形の求積

三角形の求積
少人数
順序選択


 面積の公式を使っていろいろな問題を考えよう
(3時間)

面積が2倍,3倍の平行四辺形のかき方を工夫しよう 面積が2倍,3倍の三角形のかき方を工夫しよう 少人数
習熟度別
 底辺や高さに着目して,面積の問題を考えよう T.T


 いろいろな四角形の面積を求めよう
(3時間)

・一般四角形
・台形 など
・一般四角形
・ひし形 など
少人数
課題選択
・練習問題    ・評価テスト 等 T.T

3.導入素材の工夫 〜清少納言の知恵の板〜

 図形を多様に考察し,面積の量感をともなった理解を図るために「清少納言の知恵の板」を導入素材とした。子どもたちは大変興味を示しゲーム感覚で夢中になって取り組み,求積方法を考える算数的活動においてもその経験を生かして等積変形や倍積変形を工夫する姿が多く見られた。

4.関数的な見方・考え方を育てる指導 〜第8時〜

  (1) 算数的活動の工夫 〜作図を通して体験的な理解を図る〜

 数量関係の指導が単に式や表の考察にならないように,ここでは基本図形を与え,面積を2倍,3倍…にする方法を考えるという算数的活動を通して,面積が高さや底辺の長さに依存していることを体験的に理解させる。

 児童は,方眼紙やパソコンを使って作図をしたりジオボードや具体物で操作をしたりして試行錯誤する中で,「面積が増えれば底辺の長さや高さも増えること」(依存関係)や「底辺の長さと高さのどちらかを規則的に変えていけば簡単に作れるということ」などを自分で発見していくことができると考えた。

【本時の算数的活動のよさ】

数の関係や図形を多様に考察する力を活用できる。


関数的な見方・考え方を養うことができる。


面積の量感や実感をともなったより深い公式の理解となる。


公式が数量の関係を簡潔に表しているという見方にふれる。

  (2)

 少人数指導の工夫 〜習熟度を考慮した課題選択コース〜

 「関数的な見方」は様々な問題解決において重要な働きをするものであるが,その指導は難しく児童の個人差も大きい。そこで,依存関係を調べる図形を児童に選択させることで習熟度を考慮した少人数のコースに分け,よりきめ細かな支援を行っていった。

平行四辺形コース
(基礎・基本を確実に)
 2倍,3倍の図形を基本図形の2つ分,3つ分と表すことが可能で,視覚的にも量的にも依存関係や比例関係がとらえやすい。
三角形コース
(発展的内容を含む)
 直観的な理解は難しいが,三角形の求積公式などこれまでの学習内容を活用することで対応や変化の特徴を発見することができる。

  (3)

 目 標 (三角形コース)

  面積が2倍,3倍…になる三角形を考察していくことで,三角形の面積が底辺の長さ や高さに依存していることが分かり,その変わり方の特徴をとらえることができる。

  (4)

 授業の実際(三角形コース)

  面積が2倍,3倍…になる三角形を考察していくことで,三角形の面積が底辺の長さ や高さに依存していることが分かり,その変わり方の特徴をとらえることができる。


【児童の表現方法】

児童の個性や認知スタイル,理解力などの実態に応じて,問題解決に必要なものを選択させる。 パソコンは「さんすうランチ ボックス」の作図ソフトを使用。

【教師の主な支援・援助活動】

底辺の長さと高さの両方を2倍,3倍している児童


両方を規則的に増やす児童

(1) 面積の計算をすることで間違いに気付かせる。

(2)

 式に表すことでなぜ4倍なのかに気付く。
2倍 4× 3÷2= 4倍
2倍
8× 6÷2=2


底辺か高さの一方を固定することに気付かない児童

(3) 前時までに学習した「面積が等しい三角形」のかき方の工夫を参考にするよう助言する。(右の図)

 (2)の式に表すことで片方だけ2倍すればよいことに気付く。


「底辺×高さ」の数の組み合わせを考える児童

 考え方としては認めていく。6p2の2倍は12p2
底辺×高さ=24になるような三角形を考える。
 
底辺(p)
高さ(p)12
面積(p2)1218 24


一方だけを2倍,3倍して作図ができている児童

 見つけた工夫を表に表して,きまりを考察するように助言する。


まったく見通しが立たない児童

ジオボードで試行錯誤させる。「面積が等しい三角形」の掲示物を参考にさせる。
面積が2倍,3倍の三角形を書いたワークシートを与え,底辺の長さと高さを測ることで,どこが変化しているか調べさせる。

【児童の反応例】


<平行四辺形コース>も主な学習活動は同じである。ただ,習熟度を加味したコースなので,児童の実態に応じて具体物を並べたり長方形に置き換えて考えさせたりするなどの支援の工夫を行った。
<発表にデジカメを活用>

5.おわりに

 変数が底辺と高さの2量になるため,5年生としてはレベルの高い活動になったが,どの子も自分の見通しを修正しながら一方を固定するという考えに気付いたり,高さか底辺を2倍,3倍にすればよいことを発見したりできた。一方を固定して考えるように初めに指示したクラスでは,児童は悩むこともなく学習を進め「簡単で楽しい」という感想だったが,本実践では「難しかったけどおもしろかった」という反応がほとんどで,自分なりに試行錯誤しながら問題解決に取り組むことや一人一人の考えを支援する少人数指導の大切さを実感した。今後の算数学習でも,「数学的な考え方」や「活用する力」を基礎・基本の中心に据え,「考える楽しさ」「わかる喜び」のある授業を目指していきたい。


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