6年
学習したことを日常生活に生かしていく実践
愛知教育大学附属名古屋小学校
伊藤 勝治
1.はじめに

 各単元の授業では,子どもの課題意識がつながるように各授業をまとまりに分けて,そのまとまりの中で日常生活での場面を同じにして問題を解決させるように心がけている。なぜならば,日常生活のある場面において,学習したことを確実に活用できるようにするためである。

 そして,今回紹介する実践は,日常生活のある場面で確実に活用できるようになった学習内容を,日常生活の他の場面に自ら活用できるようにするために考えた単元である。

2.単元の構成(4時間完成で,3つの活動で構成する)と子どもの活動の様子

 (1) つかむ活動(1/4時間)

つかむ活動でめざす姿

 ノートを見ながら日常生活のどんな場面でどんなことを学習したのかを振り返り,単元を通した価値を確認して,自分の追求すべき課題や問題を明確にする。

1) 今までの学習内容を想起する。

T:「日常生活のどんな場面で問題を解決して,どんなことが分かりましたか」
 校舎の高さを測ったよ。縮図を作って考えていけば校舎の高さを求めることができた。
 未来都市を作るために立体を勉強した。展開図を作るには,いくつかの面を辺が対応するようにくっつけていけばよかった。 etc.

 2学期に学習した内容を想起する時,子どもたちの中から「もう忘れたよ」という声もあがったが,実際には日常生活の場面と密着させて行った授業や体験活動を通した授業の内容をよく覚えていた。また,みんなが意見を言い合うことによって「あっ,やった,やった」と言ってノートを振り返り学習内容を想起できた。


2)

 各自の問題をつかむ。

T:「では,学習したことが身のまわりのどんな場面に使われているのかを考え,問題を作っていこう」

支援:教科書や図書室などの資料を準備したり,自由に校内を歩かせたりして,日常生活のいろいろな場面を見つめさせるようにする。

子どもたちの取り組んだ日常生活の場面

天井にあいている穴の数を調べる。


人間の呼吸と走った距離の関係を調べる。


電車のダイヤグラムについて調べる。


貯金箱に貯まったお金(10円玉)の数を調べる。


コーンの形について調べる。


ゴミ箱の体積を調べ,さらにゴミの量との関係を調べる。


コーヒーカップ(円錐台の立体)の体積について調べる。


煙突の形とその表面積について調べる。


教室内にあるスピーカーの形について調べる。


玄関の柱の形や幼稚園の建物の形について調べる。


トイレットペーパーの形について調べる。


日本地図を使って2つの都市の距離について調べる。  など


 (2)

 調べる・高める活動(2,3/4時間)

調べる・高める活動でめざす姿

 自分の問題を既習の学習内容をもとに粘り強く解決し,問題を解き合うことによって友だちの考えを知る中で自分の考えを高めていく。また,友だちが取り組んでいる日常生活の他の場面の問題を,既習の学習内容を活用して解決することができる。

1) 各自,見通しをもとに問題を解決する。

子どもたちの活動の様子

【貯金箱に貯まったお金(10円玉)の数を調べる】 【日本地図を使って2つの都市の距離について調べる】
10円玉は全部で何gになるのかな? 実際にどのくらいの距離になるのかな?

【煙突の形とその表面積を調べる】

【天井にあいている穴の数を調べる】
地面と煙突との角度は何度かな? 長方形の中にいくつの穴があるのかな?


2)

 友だちの問題を解き合い,自分の問題に対する結論を明確にする。

子どもたちの活動の様子

友だちの問題を解いている。 作成者に質問して,解き方を説明してもらっている。


 (3)

 振り返る活動(4/4時間)

振り返る活動でめざす姿

 自分の課題や問題に対しての考えをまとめ,課題や問題が解決できたことに満足するとともに,日常生活の他の場面で価値内容を活用できたことを実感する。

1) 日常生活のどんな場面で活用できたかを振り返る。

T:「日常生活のどんな場面で問題を活用することができましたか」

 みんなが解決した日常生活の場面をどんどん発表し合うことによって,子どもたちは学習したことがいろいろな場面に活用されていることを知っていった。


2)

 追求してきたことを振り返り,まとめを書く。

T:「自分がこの問題を取り組んで,友だちの考えを理解してどんなことが分かったのかを発表して下さい」

子どもたちのまとめ

スピーカーの立体も,実際の大きさの△/□にして,それをもとにして展開図を書いて組み立てればできた。授業で学習した展開図とは違って複雑な形になったが,できてよかった。
(A子)


たくさんある10円玉の数を数えるには,今までと同じように,ある数の重さや厚さを調べて考えていけばよい。はかりでちょっどの重さになる数で考えると正確な数を見つけることができる。
(B夫)

3.実践を終えて

 初めて上記のような実践を行ったが,子どもたちが意欲的に取り組む姿を伺うことができた。しかし,つかむ活動で日常生活の他の場面になかなか目を向けることができない児童がいた。このような児童に対してインターネットや図書室の本などを利用して支えたが日常生活の中に子ども自ら課題を見つけだしていくのは大変なようである。
 今後,学期に一度ずつのペースで行い,児童が日常生活の中で自ら課題を見つけだし,見通しをもって解決できる力を身につけてくれたらいいなと思っている。



前へ 次へ

閉じる