4年
一人一人のこだわりを大切にした学習指導
〜4年面積「陣取りゲーム:誰の陣地がひろいかな」の指導を通して〜
島根県大田市立池田小学校
田中 智香子
1.はじめに

 子どもたちは,広さを平面としての広がりだけでなく,空間的(広い:体育館・狭い:ホースの中)にとらえており,周りの長さや中にしめる物の数で比べたり、細長い形には広さがないし,曲線で囲まれた形は広げてもその広さは変わらないと考えたりしている。

 視覚的・直感的に大きさがとらえやすい面積は,3次元に広がる体積を理解するもとになり,この考え方は他の教科や生活とも深く結びついている。それだけに,実際の体験や具体的操作を通して豊かな量感(日常生活におけるものの見方やとらえ方)を育て,そのよさを感じ取らせることが大切である。

 そこで,概念獲得のために様々な活動を取り入れ,一人一人が自分の思い(=こだわり)を大切に,主体的に学び続けることをねらって,次のような点を試みた。

自分なりの考えをもつ自力解決の場を大切にする。

 活動を通して学ぶ子ども本来の姿を大切に,一人一人の操作活動の時間と場を保障した。導入時の陣取りゲームによる個々の疑問から共通課題を設定し,身の回りの広さと結びつけながら,面積の概念に迫った。さらに,思考過程を自分の言葉で書き残し,算数日記では学習を振り返り,数学的な考え方や友達のよさに気づく場を設けた。



みんなで追求する集団解決の場を大切にする。

 1番よい方法を求めたり,考えをまとめたりせず,それぞれのよさを認め,自分と似 ているか違うか,わからない所はどこか明らかにしながら,いつでも使える考え方は?簡単な方法は?自分がやってみたいのは?どれか求めた。また,同じ課題の者同士(ペア・グループ)の情報交換や役割分担を勧めた。

2.単元の計画(10時間)

第1次 陣取りゲームをしよう・・・1時間
第2次 広さを比べよう・・・4時間
第3次 面積を簡単に求めよう・・・2時間
第4次 大きな面積を求めよう・・・3時間

3.学習の流れと子どもの取り組み

  第1次 どっちが広い「陣取りゲーム」(1時間)

●陣取りゲームについて
 子どもたちは,すでに新聞紙やおはじきの陣取りゲームを経験してきているので教師が作成したシート(周りの長さがすべて24cmの四角形6種類(1)6×6(2)5×7(3)4×8(4)3×9(5)2×10(6)1×11を組み合わせ所々にすき間をもうけたもの)での陣取りゲームに挑戦した。

 すき間の部分も任意単位の考えのもととして後の時間に十分活用できると願った教師の意見に反して,子どもたちは全く使おうとしなかった。しかし,四角形が6種類あると発見すると,子どもたちはそれぞれを区別するために番号をつけた。

 最初は,2人ペアで自由に相手を決め,じゃんけんで勝った(選ぶ優先権が与えられる方から先に一番広いと思う一区画を自分の色で塗りつぶした。勝ったものだけ塗ると全然塗れない者がでるかもしれないといった子どもたちの考えから負けた者も必ず一区画塗った。教師側からの約束は,できるだけ自分の陣地を広げるために最初は隣り合った所から取っていくことを提案した。しかし,最終的には隣り合わない陣地ができても良しとした。

 視覚によって感覚的に広さをとらえやすいように,と考え隣接する四角形を取ることを提案した。

 第1回戦,勝敗を取った四角の数で決めた友達に対し「四角の広さが全然違うと思うから取った数では勝ち負けが決められないと思う」という発言から広さが意識され始めた。
 課題(シートの四角は全部同じ広さか)によって2回目に挑戦。子どもたちは,より広いと思われる四角を取り続けた。そして,勝敗はそれぞれが自分の陣地を切り抜き,同じ大きさと思う四角形を重ね合わせ,はみ出した部分や余った四角形だけを比べ合った。また,別のペアは一方の陣地にもう一人の陣地を張り合わせその違いを比べた。

陣取りゲームシート

(子どもたちはシートに番号をつけた)

A君 青   B君 赤

 
第2次 広さを比べよう「敷き詰め」(6時間)

 (1) 陣取りシートの四角は,全部同じ広さか?

 まず,周りの長さに着目し,縦+横=12cmで周りはすべて24cmとなり,6種類の四角形は全部同じ広さであると導く。しかし,「周りの長さが同じならすべて同じ広さか」という疑問からモール(24cmの長さ)の形作りに挑戦し,OHPシートの形重ねによって,長さが同じでも広さが違うと視覚的に納得した。


 (2)

 どうやって比べよう?

 <四角形は,同じ広さではなさそうだ>を探った。

【直接比較】切って重ね,はみ出した部分や余った所を比べた。

【間接比較】

一番広いと思われる形をもとに重ね,その半端を比べた。その他,一番小さいと思われる形をもとに,他の四角形を幅1cmの大きさに切りそろえ,それぞれをつないで一番長いものを求めた。この考え方は,基準を統一すれば比較できることを明らかにした柔軟な子どもの発想であった。

【任意単位】

パターンブロックの正方形によって広さをブロックのいくつ分で表した。


 (3)

 友達の考えを確かめよう。

 ブロック・おはじき・模型のお金・数え棒等を並べ,その結果「いくつ分かわかっても余りが多いと,もとの形は広いか狭いかわからない」という疑問が生まれた。また,1円玉を置いた子が,「中や周りに間が空くので,並べるのは四角い形が良さそうだ」と発言。しかし,一辺1cmの正方形を準備した教師の思いに反し,子どもたちは,「これは小さくて時間がかかりそうだから並べるのには向かない」ともらした。


 (4)

 どれだけ広いか確かめよう。

 <どちらがどれだけ広いか>に対し,前時よりもっと小さな丸を敷き詰めた子は,丸もすき間の部分も1個多いと導いた。きちんと並べるとすき間は同じ形(キラーンと子どもたちは呼び合う)になり,2つの形は比較できた。さらに,小さな形を一々並べるのは大変だという思いから一列目に並ぶ数の幅から全体に何列入るか求めた。

 また,「もとにする形が違うと比べられない」不満から「一辺2cmの正方形は便利か」といった疑問が生じ,余りの部分も一番小さな四角形(一辺1cmの正方形)ならきちんと入ることがわかった。そして,敷き詰めたものを見て「小さーい。でも,着々と入る。余りがなく,ぎっしり入る」と感心し,この形をそれぞれの思いで「四角四角」「1正方」と呼んだ。


 (5)

 余りの部分を求めよう。

 一辺2cmの正方形を並べ余った部分に1cm2を入れることで「一辺2cmの正方形は1cm2が4つ分でそれが6つだから4×6,余りに1cm2が11個入るから24+11で35。つまり,1cm2が35で面積は35cm2になる」と導いた。

 さらに,並べなくても簡単に求める方法:縦と横に1cmずつの線(印)を書き込み,1cm2がいくつ並ぶか考えた。また,縦と横の長さを測り,掛け合わせることを見つけ,「両方同じ結果になり,すぐ求められ早い」ともらした。敷き詰めは大変だが,余りの部分にきちんと並ぶ1cm2のよさを感じ,面積の数値化,公式にまでつなぐことできた。

 【敷き詰めで計算式を確かめた学習プリント】


 (6)

 周りの長さを比べよう。

 1cm2の組み合わせによって4cm2を作りながら,面積が同じでも周りの長さが違うことを確認した。

 
第3次 面積を簡単に求めよう(2時間)

 ピストル型の面積を求め,わかり合う。

 
第4次 大きな面積を求めよう(3時間)

 身近な場所の面積を計算で求めながら,時に1cm2や1m2を実際に敷き詰め,その結果を確かめた。子どもたちは,活動によって求めた結果を初めて納得したようだ。

4.おわりに

 具体的な操作活動の繰り返しによって自分の考えがもて,主体的な学びにつながったと思う。一人一人のこだわりを大切にしたために予定より2時間増えた今回のような取り組みが,どの単元でも可能であるわけではない。しかし,活動を通してじっくり考え,深め,広げる授業を組み立てることで,自分のひらめきのよさに気付き,友達のアイデァのすばらしさに共感できるとともに,その過程を通して算数のおもしろさや数理に気づいていくと考える。


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