4年
楽しくやろう,対流の実験       
−4年「物のあたたまり方」から−        
大阪府  A
1.はじめに

 4年生の「物のあたたまり方」は,学習の流れを子どもたちの興味・関心に沿って柔軟に進めることができ,また,実験や観察の方法を子どもたちに考えさせられるなど複線型の授業にも適した単元です。

 この単元では,金属,水,空気の熱の伝わり方について取り扱っていますが,このうち,金属の熱伝導については,現象が子どもたちの意識と一致していて,実験方法を考えさせても,すぐにバターやパラフィン(ロウ)を使ってその溶ける様子から調べるというような確実な方法を考えついてくれます。

 ところが,水や空気の対流となるとそうはいきません。最近では循環風呂や全自動風呂などが普及し,湯船をかき混ぜる経験すらしたことのない子どもたちでは予想すらままならないのです。子どもたちに調べる方法について考えさせてみましたが,ほとんどがビーカーの水をアルコールランプで温め,アルコール温度計を使って温度を測るという方法を考えました。

 アルコール温度計では上部と下部の水温を測り比べても,なかなかその差がはっきりとあらわれてくれません。そればかりか,あちらこちらに移動させられる温度計は,かきまぜ棒と化してしまっていました。さらには,底に温度計を密着させてしまい,やはり金属同様,底から順にあたたまってくるという結論になってしまいました。

2.サーモ変色シートの利用

 このようなことは,温度の変化を視覚的にとらえることがむずかしいからだといえます。そこで,私は,サーモ変色シート(ヤガミ製)をよく使っています。サーモ変色シートは,藍色のシートで,温度が45度を超えるとピンクに変色し,さらに温度上昇してもピンクのまま,変色しません。いろいろな形に切って使えますし,裏面がシールになっているので何にでも簡単に貼れます。また,10p×15pのものが,10枚で5000円と,比較的安価です。その他にも,サーモテープや液晶シート,液晶インクがあります。それぞれの特徴をまとめてみました。

(1)サーモ変色シート

はがき大の大きさで,切っていろいろな場面で使えます。
比較的安価です。

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そのままでも水やお湯の中に入れることができますが,耐水性がそれほど高いわけではありませんので,何度も使いたいときは,透明テープなどで上からカバーをしたほうがいいかもしれません。幅24oまでなら,スコッチのクリアテープが便利です。


(2)

サーモテープ

比較的安価で使いやすくなっています。

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広い面の実験,再利用や長期の使用にはあまり向いていません。長期の使用には,サーモテープをプラスチックに封入(または印刷)され,スティック状になっているものが市販されている。


(3)

液晶シート

大きさも適当で,切っていろいろな場面で使えます。サーモ変色シートと違って,段階的に色が変化するため,熱の伝わり方がとてもわかりやすいです。色の変化がとてもおもしろく,子どもたちが興味を持ってくれます。

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とても高価(10p×10p1枚1800円前後,30p×30p1枚9800円)です。


(4)

液晶インク

熱の伝わり方を調べようとする金属棒や金属板などに直接塗布して使います。金属棒などの熱の伝わりかたを調べたりするのに向いています。

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やや高価(501セット7800円前後)です。熱の変化はよくわかりますが,一定温度を超えると元の色に戻ってしまうので,熱が固まりで移動しているように感じられてしまうことがあります。

3.水の対流

(1)なかなか便利,サーモ変色シート

 熱された水が上層から温まっていく様子を調べる方法として,試験管の水をアルコールランプで熱する実験がよく紹介されています。この場合,理科室によくある外径18o,内径15oの試験管(18o管)を使うことが多いようです。私も,以前は18o管を使っていました。試験管上部を温め,下部に熱が伝わらないことを示す実験はうまくいきましたが,下部を温めた場合はなかなかうまくいきません。教師実験ではうまくいっても,アルコールランプを使っての子どもの作業では,火加減の調節がうまくいかない上に,試験管内の水の容量がとても小さいため,一瞬にして加熱が進み,変化を観察する時間がないからです。そのため,水も金属棒と同じように温まるというような印象を持った子どももいました。

 そこで,外径24oの試験管(24o管)を注文して使うことにしました。24o管の場合は水の容量も十分にあり,また,サーモテープの代わりに,サーモ変色シートをプラバンに張ったものに変えたところ,とてもよくわかるようになりました。

 とくに,サーモ変色シートの場合は,十分な大きさがあるので,試験管の内径いっぱいになるよう作ることができます。そのため,底部で温められた水が斜めにした試験管の天井をもやもやと上の方へ移動していき,上の方がどんどん温められていくようすが,色の変化によってよくわかりました。


(2)

ちょっと不思議な感熱液

 また,直接,液体の温度変化を調べるための道具として,感熱液があります。液を薄める水の量で,温度変化に対する反応が変わります。その水加減はとてもデリケートなので,必ず予備実験が必要です。ただし,色変化の反応は可逆性がありますので,一度薄める水の量を見極めて用意してしまえば,そのままで何度も使うことができます。

感熱液の作り方

  用意するもの
・塩化カルシウム ・塩化コバルト ・メチルアルコール
・ビーカー ・ガスバーナー

作り方

(1)塩化カルシウム500gに100の水を加える。その中に塩化コバルト30gとメチルアルコール500を加え,加熱沸騰させ,塩化カルシウムを溶かした後に冷却する。(量は割合を示しています。適当に加減してください。)溶け残りができた場合は,濾過して取り除いてください。
こうしてできた紫色の液が原液です。加熱すると青色に変化します。

(2)

原液に水を加えて薄めていくと紫色から赤色に変化していくとともに,青色に変わる温度も高くなっていきますので,目的にあわせて水の量を加減してください。(基本は原液1に対して水1〜1.5の割合)

 実際,授業で使ったときも,ビーカーの上から順に色が変化していくため,上から温まっていくことがよくわかりました。また,加熱をやめ静置しておくと,温かい水が上方に集まっている様子がはっきりわかります。

4.空気の対流

(1)簡単製作,ペットボトル煙箱

 空気の対流も視覚に訴えることが難しいので工夫が必要です。段ボール箱で煙箱をつくる方法もありますが,子どもたち一人ひとりが実験するためには,準備が大変です。そこで,子どもたちが,簡単に対流の観察ができる実験ができないだろうかと探していたところ,ペットボトルでできる実験道具を見つけました。

 ペットボトルの下部に線香の通る穴をあけ,お湯を入れてから,線香を差し入れ,煙の動きをみます。ペットボトルの上部を切り取り,逆さにかぶせてから氷を入れてから同様の実験をしてみると動きが顕著になります。

 さっそく,子どもたちに道具を作らせて,やらせてみました。わずかな時間ですが,温められた空気が上昇し,そして,冷やされて下降する様子を見ることができました。すぐに内部が煙だらけになり中の様子が分からなくなりますが,何度でも繰り返し試してみることができます。


(2)

子ども大喜び,熱気球で遊ぼう

 温められた空気が上に行くことは,ストーブの上にビニールのゴミ袋を広げることでよくわかります。袋には空気がいっぱいたまり,上に上がろうとします。しかし,最近はセントラルヒーティングの学校も増え(現任校もそうです。),ストーブを使った実験が困難な場合もあります。それに,ちょっと子どもたちをびっくりさせてやりたいという気持ちもあって,ビニル袋の熱気球を作ることにしました。ヘアドライヤーを使った熱気球が教科書に紹介されていますが,実際に火を使ってあがる熱気球も簡単にできます。4年生の子どもたちでも少し時間がかかりましたが,何とか作ることができました。クラブなどで作ってもおもしろいです。

 作り方はいたって簡単。細いピアノ線で輪を作り,ビニル袋の口にセロテープで貼り付け,袋の口を広げます。あとは,アルミホイルで小さなお椀を作り,細い針金でピアノ線の輪からぶら下げるだけ。わずか10分で出来上がり。アルコールに浸した脱脂綿をお椀に乗せ,火をつけます。とにかくできるだけ軽く作ることがこつです。それと,ビニル袋は必ず薄手のポリエチレン製のもの(さわるとしゃらしゃらと音のするもの)を使うこと。くにゃくにゃのものは重くてあがりませんし,熱にも弱いです。

 火をつけた熱気球は,天井までゆっくりあがり,火が弱くなると再びゆっくりと降りてきます。子どもたちは大喜び。しかし,以前,同様の実験を行ったときはすぐに授業どころではなくなってしまいました。というのは,天井に設置している火災報知器が反応してしまって,全館に非常ベルが鳴り響いたからです。実験するときは,火災報知器の真下でやることだけはくれぐれもさけた方がよいでしょう。

5.終わりに

 子どもたちにとって,直接五感を使うことのできない事象を調べることはなかなか難しいものです。授業がうまくいかなくて,いろいろな実験を教えていただいたり,工夫したりして,わかりやすいものにしようと努めてきましたが,それでもやっぱり,「???(なんでこの実験でそんなことがわかるの?)」という顔をしている子どももいます。まだまだ修行が足りないようです。

引用・参考文献
・'88理科実技研資料集(泉南郡小教研理科部)
・理科授業をおもしろくするアイデア大百科(明治図書)
・楽しくわかる実験・観察(新生出版)

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