| 異学年交流を通じた理科学習 | |
−「理科実験祭り」の試み− | ||
徳島県美馬郡穴吹町初草小学校 藤本 勇二 |
1.はじめに
この学習では,子どもたちの思いや願いを生かしながら,異学年間の交流の場を作ることをめざしました。同時に科学実験や科学あそびを取り入れた体験活動を通して,自然科学についての興味や関心を高めたいと考えました。 初草小学校は全校児童33名,1学年1学級で,ほとんど同じ集団で過ごしているため,学年内はもとより異学年間でも大変仲がよく,上級生が下級生に助言したり,また下級生は上級生から学びながら,互いに協力しあって活動をしています。こうした異学年間の活発な関わり合いがある小規模校のよさを生かすことができると考えました。 2.「理科実験祭り」を開こう
「理科実験祭り」は,6年生が「ものの燃え方」の学習で学んだ水ロケット,ドライアイスロケットを違う学年にも紹介したいという思いからスタートしました。その第1回目が合同理科学習」です。 参観した保護者だけでなく,他の学年の保護者にまで説明したり,いっしょにやってみることを勧めるなど熱心に活動しました。さらに「染める」をテーマとして理科・生活科の合同学習も行ないました。酸・アルカリの学習の発展として草木染めを取り上げ,1・2年生は草木染めで作ったはがきを出す「お便りを出そう」の生活科単元として構成したのです。こうした流れを受け,さらに5年生の学習が加わり,実験や科学あそびのメニューを増やし,全校的活動として行ったのが「理科実験祭り」です。
3.発表する内容を決めよう 実践に当たっては,以下の点に留意しました。 1)関連と系統性のある内容を取り上げること。 他の学年の学習との内容的なつながりや発展性のある内容を選び,発表内容に系統性を持たせたテーマを検討しました。これにより学習したことをさらに発展させたり,もう一度吟味したりしながら,主体的な学習を進めることができると考えたからです。 2)「おもちゃ」や「科学あそび」を柱に異学年の活動をつなげること。
「おもちゃ」や「科学あそび」は,科学の性質を生かした活動であり,学習展開のどの段階にも取り入れることが可能です。しかも学年に応じた楽しみ方や学びが可能です。参加体験型の活動であるので,主体的な学習意欲も支えることができると考えました。 ▼出展コーナーの内容
理科学習との関連(「 」)・他学年とのつながり(◆)
6年生
活動場所
参加者は,各コーナーを担当する5・6年生から活動内容の紹介を聞いた後,マップを片手に思い思いのコーナーを回ります。活動後はマップカードにスタンプを押してもらえます。教師は各コーナーを子どもたちとともに回って,その準備・進行について(特に安全面の配慮について)助言するだけです。途中から町内の校長会の参観とも重なり,子どもたちの説明にさらに熱がこもりだしました。 「結晶屋」は派手さはありませんが,実体顕微鏡を生かしてきれいな結晶の世界を紹介できています。 「トトロ」は大人気で,ドラエモン人形も飛び出しました。あまり説明する時間がないようです。「ドライアイス」は,宙に浮くシャボン玉が好評でした。それに対する質問も多く出ていたので,途中から,宙に浮くシャボン玉をまず見せてからロケットの体験に進んでいました。 「イライラ棒」は,実際にやってみると喜ぶようで,大人にも大好評,金属の種類を変えた点がよかったようです。「草木染め」は,初草の特産であるハッサクを用いた点が効果的でした。また,ドライアイスを紫キャベツの液に入れると次第に色が変わって酸性の呈色を示すのが興味深かったようです。
5.実践の結果 実施後,子どもたちの感想からは,「発表してよかった」「またやりたい」といった記述がみられました。楽しかった,うれしかった内容についても「説明をよく聞いてくれた」「作った作品を持って帰ってくれた」「練習した発表がうまくいって」「みんなが楽しんでくれて」「喜んでもらって」などの記述が見られ,学習した内容や知識が生かされたことによる評価が大きいようです。また「理解してくれたかなあと心配でした」「もう少し溶け方についてうまく説明したかった」と自己評価をする記述も見られました。 参観した教師からは「子どもたちが楽しく活動していた」「どうしたらもっと飛ぶのかなという問いかけが自然にできていた」「教えてくれた5・6年生に感謝していた」という感想がありました。また「家でやってみよう」「6年の○○君はえらい」「理科がますます好きになった」等の参加者の感想から,実験や科学あそびといった体験活動の学習効果と,人と関わることに成就感や満足感を得たことが伺えます。理科学習が異学年交流を通じて好ましい人間関係を育てることに役立てることができたと考えます。 課題として,手順や安全面の説明はできたが,科学的な背景はどんどんくる参加者のためにできない,参加者も作れば次に行くという感がありました。内容の理解については,まだ不十分ではないかと思います。従って各学年の理科学習との連携が必要です。また,説明用の資料づくりの助言指導の難しさと,活動で教師がいつどのように介入すればよいかが残りました。 しかし発表・説明することから自分が関わる主体的意識の形成につながり,自分の力で学習を進めていくことになったと考えます。発表のための説明資料の準備活動が学習の振り返りとなり,これまでの学習を深め,習ったことの吟味やそして自分が担当しているという主体性を作り出しました。 「理科実験祭り」は,
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