5年
一人一人に説明活動を位置づけた学習活動の工夫
〜「植物の実や種のでき方」の学習を通して〜
福岡県広川町立中広川小学校
跡部 正徳

 

1.はじめに

 みなさんも,植物の学習のとき,クラス全体での観察中心で単元の学習が終わってしまい,一人一人が問題解決学習を行うことができなかったという経験はありませんか。私も,いつも悩みの種でした。そこで,植物単元でも一人一人が自分なりの問題意識をもち,観察・実験して問題解決できる理科学習指導を試みてみました。実際に行ったのは,5年生の「植物の実や種子のでき方」の単元です。アサガオで学習したおしべやめしべ,結実の仕組みが,他の花にもあるのか一人一人が調べるという,学習した内容を「活用する」場を設定することで,より深い理解につながると考えました。

 また,子どもたちに一人一花を担当させて調べ,グループの中で自分が調べた花には,おしべ,めしべがあるか説明活動を仕組むことで,どの子もアサガオの特徴と比較しながら,調べたり,考察したりして,すべての子どもたちが活躍することができると考えました。

 

2.指導にあたって

 本単元は,花にはおしべやめしべなどがあり,花粉がめしべの先につくとめしべのもとが実になり,実の中に種ができることを理解することをねらいとします。

 まず,代表的な花として「アサガオ」で調べます。その後,他の花もアサガオと同じようにおしべ・めしべがあるのか一人一人が花を選び,調べていきます。そこで問題になるのが,どんな花を用意するかです。子どもたちがもってきた花や学校に咲いている花では,1つの花にたくさんのめしべがあるなど調べにくかったり,全員分の花が用意できなかったり等の問題が出てきます。そこで,今回アサガオで培った知識・技能が活用しやすい4つの花を用意し,提示しました。それが次の4つです。

【花を選んだ条件】
@9月ごろに咲いている花
Aおしべ,めしべがある程度はっきりしていて,子どもたちが調べやすい花
B1つの株から,たくさん花が咲くもの

 このような条件を満たした花であれば,子どもたちが自分の力で調べ,単元終わりまで十分花を用意できると思います。

 

3.単元計画(9時間)

(1)アサガオの実や種と種なしブドウと種ありブドウを比較して,単元のめあてを立てる。@
(2)アサガオで実や種ができる仕組みを調べる。C
 
(a)アサガオの花を分解し,どこが実や種になるか調べる。1
 
(b)アサガオの花粉はどんな役目をしているか調べる。1
 
(c)アサガオは花粉がめしべの先につくと実や種になるか調べる。2
(3)アサガオ以外の花もおしべ,めしべがあるか調べ,グループで説明活動をする。B
 
(a)学習グループで一人一花選び,花を調べる。1
 
(b)同じ花を選んだグループで説明活動をする。1
 
(c)学習グループで説明活動をする。1
(4)種なしブドウは,つぼみから種になる段階の中で,どこで薬を使うのか考える。@

 

4.学習の実際

(1)自分が選んだ花を調べる活動と発表原稿作り


 アサガオでおしべ,めしべの観察や実や種ができる仕組みをおさえた後,他の花にもおしべやめしべはあるのか調べる活動を仕組みました。どの子も自分が選んだ花には,おしべやめしべがあると予想し,アサガオのおしべやめしべの特徴を観点に調べていきました。そして,調べたことを発表原稿にまとめていきました。そのとき,下のようなある程度発表のモデルを書きこんだ学習ノートを用意してまとめさせました。


【A児の発表原稿】
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【B児の発表原稿】
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 このように,子どもたちによってまとめ方もまとめる技量もちがいます。これでは,子どもたち全員に説明したいという意欲や自信をもたせることができません。そこで,同じ花を調べたグループで説明活動をして,自分の考えや説明の仕方を明確にしたり,詳しくしたりする場を仕組みました。

(2)同じ花を選んだグループでの説明活動と発表原稿の付加・修正




【詳しくなったA児のノート】
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【書き加えたB児のノート】
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 同じ花を調べたグループで説明活動をした後,A児は,友達の意見を取り入れて自分なりの詳しい説明を書くことができました。ある子どもは,顕微鏡を使って,説明するよさも取り入れることができました。
 B児は,友達が顕微鏡で見ためしべの先の形を聞いて,それを取り入れ,めしべの先は,花粉が付きやすい形をしていると書き加えることができました。


(3)学習グループでの説明活動

 発表原稿を付加・修正した後,子どもたちは自信をもって,自分が調べた花を学習グループの友達に説明することができました。また,自分たちの力でどの花にもおしべやめしべはあると問題解決することができました。C児は,「花にはおしべやめしべは絶対ある。」と自信をもった考えをつくったり,D児やE児のように形や大きさはちがうがおしべやめしべはあるということに気づいたりしている子もいました。この単元では,子どもたち一人一人が最後まで意欲をもって問題を追究し,どの子も活躍できる学習ができたと思います。
【C児】
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【D児】
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【E児】
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5.おわりに

 子どもたち一人一人に問題解決学習を仕組むために,今回取り組んだアサガオ以外の花を使って,どの花にもおしべやめしべはあるかという説明活動は有効だったと考えます。

 また,ある程度こちらで説明のモデル化をしていたこともどの子も説明できる場を仕組む手立てとして効果的だったと思います。しかし,なかなか全員がどんな活動をしてるか把握できないので,めしべの胚珠を花粉と勘違いしている子もいました。そのような子どもには,事前に学習ノートを確認して,修正してあげたり,そのグループの説明活動に入って,補足するなどの配慮が必要だと思います。



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