4年
考える楽しさを味わう理科学習を目指して        
〜もののかさと温度(空気)の実践〜        
北海道苫小牧市立ウトナイ小学校
鈴木 寿

1.はじめに

 ウトナイ小学校は苫小牧市東部に位置し,近年の大規模区画整理事業の推進による著しい人口増加により本年度開校した苫小牧市で23校目の小学校である。近くには千歳国際空港,苫小牧東部工業地帯がある一方,日本で初めての野鳥の聖域「サンクチュアリ」でもあり,国内4番目となる「ラムサール条約登録湿地」ともなっているウトナイ湖がある開発と自然の調和のとれた活気あふれる地域にある。

 担任している子どもたちは,明るく素直で意欲的に学習に取り組もうとする子が多く,理科の学習に対してもほとんどの子が好きと感じている。しかしなかには実験は楽しいと感じていても,予想したり,実験の結果をまとめたり,結果から考察したりすることに苦手意識を持っている子も少なからずいた。そこで,この学習を通して子どもたちに問題解決学習の方法を理解させるとともに,根拠を持って予想したり,工夫して実験に取り組み,考察したりするという「考える楽しさ」を十分に味わわせたいと考えた。


2.児童に考える楽しさを味わわせるために工夫した3つのポイント

1 子どもたちが選択したり,自由に取り組んだりできる実験活動
2 見通しを持って学習し,課題にせまる思考を促す学習シートの活用
3 情報交換やヒントが得られる実験別座席配置や学習の流れを示す資料の掲示


3.授業の実際

【単元の導入の実験】
 実験1と実験2を演示後,子どもたちにも自由に取り組ませ課題作りをする。
実験1
実験のポイント
フラスコの口は石けん水や油等をぬっておく
(空気もれ防止とすぐ栓が飛ぶようにするため)
必ず乾いたフラスコを使う
(水蒸気の体積変化の影響を排除するため)
お湯の温度は60℃程度でもよい
(百円ショップで売っているゴム手袋があればもう少し温度を上げても大丈夫)

実験2
実験のポイント
シャボン液はPVA洗濯のりや砂糖などを混ぜ,割れにくくしておく。(ジャンボシャボン玉づくりのホームページが参考になる)
一度温まった試験管を使うとふくらみにくくなる。


【児童の反応と問題】

実験1から

実験2から

空気でっぽうのようにポンと音がした。
空気でっぽうより(遠くに)飛ばない。
2回目は飛ばなかった。
ずっと力を入れたら大きくふくらんだ。
中の空気が温まっている・・・。
2回目はふくらまなかった。
   
両方の実験から
2つとも空気を温める実験だと思う。
冷たくするとどうなるかな?
水でやったらどうなるだろうか?

空気は温めると,なぜスポンジが飛んだりシャボン玉がふくらんだりしたのだろうか。


【予 想】
空気はあたためると上に行くから(24 人)
空気のかさがふえるから(7人)
火事のとき煙が上に行く
ゆげのように上に行く
全体に広がって上にも行く
空気のかさがふえるところがなくなって最後にスポンジが飛ぶ。

 学習シートにフラスコの中の空気の様子を想像してかくことができるようした。


【実 験】
 理科室にある器具や身の回りにあるものなどを使って自分の予想を確かめる実験方法を一人一人考えさせ取り組ませた。(児童の取り組んだ実験)
横にしても飛ぶ
お湯につけたタオルで下に向けても飛ぶ
横にしても少しふくらむ
風船のしわがのびる程度
見た目は変化がない
手応えの変化も微妙
メジャーなどを使えば?

体積変化だけでなく,水圧で容器がへこむため,空気が上に動いたと考えやすい。
空気のかさが少ないためほとんど風船はふくらまない。途中で試験管からフラスコに変えて実験。
容器をへこませない方が変化が分かりやすい。
少しへこませてしまったため,水圧で空気が上に移動してしまった。

 実験別の座席にすることによって,実験中も結果について話し合い,工夫して実験しようとする姿が見られた。

実験中の様子
学習の足あとの掲示
学習シート
 
【話し合い】
 実験結果からは,全ての子どもが空気のかさがふえたからだという考察を得ることはできなかった。フラスコの栓が横にしても飛んだのは,いったん上に向かった空気が跳ね返って横に飛び出したのではないかという意見も出た。


4.終わりに

 この実践は苫小牧市教育研究会理科部会の公開授業で行ったものである。子どもたちは自分の予想や実験結果をもとに,自分の感じたこと考えたことを本音で話し合いをしていた。自分で予想し実験方法を考えて学習に取り組んだことによって,進んで問題を追究し考えようとする問題解決学習の方法が身に付きつつあると感じた。

 実験の際には,その様子をできるだけ詳しく見たり,感じたりするようにアドバイスした。しかし,子どもたちは自分の予想した考えにこだわって学習に取り組むため,結果をその考えに誘導しようと実験したり,他の子の実験結果をなかなか受け入れたりすることができない子もいた。今回は子どもたちの意欲を引き出すために多様な実験を取り入れたが,多少制限を入れてもよかったかも知れない。

 次時では,空気を温めたり冷やしたりする実験にじっくり取り組ませた。それによってかさの変化の様子がよく分かり,子どもたちは温度によって空気のかさが変化することを納得できたようだった。

参考図書 「小学校理科・事象提示(170選)」角谷重樹監修 ぎょうせい
「基礎・基本が身につく理科単元ファックス資料集小学校4年」日置光久編著 東洋館出版

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