5年
児童一人ひとりが見通しを持ち,
主体的に観察・実験に取り組む授業を目指して
東京都小平市立小平第1小学校
小熊 隆一

はじめに

 理科の授業で普段から心がけていることは,児童一人ひとりに目的意識を持たせることです。

 「何を調べるために実験・観察を行うのか」
 「どんな結果が出ることが予想されるか,その結果から何がわかるのか」

ということを大切にしながら授業作りを行っています。
ところが,実際には

 「実験・観察の仕方を間違えている」
 「何のための実験だったのかがわかっていない」
 「実験の結果から結論をまとめられない」

などの児童がいて,愕然としてしまうこともあります。何がいけなかったのか,どう指導すればよいのか,反省の毎日ですが,その中でも一つの指針になったのが,「流れる水のはたらき」の授業でした。

「流れる水のはたらき」の授業経過

1.授業計画

 近くに適した川がなく,見学にいけないことから,モデル実験(流水実験)を中心に学習を進めていこうと考えました。およそ以下のように授業を計画しました。

1 普段と増水時の川の写真を比較したり,川が氾濫し土砂が流れるビデオを見たりしながら,水のはたらきについて考えさせ,単元への動機づけをする。
2 実際に水を流すとどんなことがおこるのか見通しを持たせるため,流水実験機を使った演示実験を行う。水の流れ方や土の削られ方など観察のポイントを示し,気づいたことや考えたことを記録させる。

3 演示で興味をもったことを中心に班ごとに課題を作り,仮説・実験の計画を立てさせる。どんな実験をするかを全体で発表する。
4 計画をもとに実験を行い,結果をまとめて発表する。

 ところが実際には,2を終えた段階で,こちらが求めている侵食・堆積・運搬に着目できない児童がいて,自己の課題を作って実験を行うのは難しそうでした。演示実験の中で,「児童の視点作り」に対しての指導が不十分だったと反省しました。


2.プレ実験

 そこで,さらに見通しが持てるよう,実際に自分たちで流水実験を試してみることにしました。
 校庭の砂場で行いました。各々山を作り,頂上から水を流すという楽しい活動です。初めは,山にトンネルを作るなど,砂遊び自体を楽しんでいる児童も見られましたが,次第に水の流れに目がいくようになりました。水の量や斜面の傾き,水路を変えながら自由に試してみたことで,水のはたらきに対する意欲・関心が高まったようです。
 その後,各班で課題を作り,実験計画を立てました。流れの速さを紙片やチョークの粉(沈んでしまい,うまく観察できなかった)で調べたり,内外側の削れ方の違いを旗などの目印をもとに調べたりするなど,それぞれ工夫して取り組んでくれました。

3.確かめ観察

 各班で実験結果を発表した後,児童から「本当にそうなるのかもう一度観察したい」という声があがったので,再度演示実験をしました。この時は「ここに筋道を作って」「あそこに旗をたててよ」とあちこちで声が上がり,活気のある演示実験・観察になりました。

実体験の大切さ・ゆとりの時間の確保

 理科の授業では,児童の日常経験や既習事項をもとに授業・教材を作っていきますが,この授業を通して2つのことを考えさせられました。

 1つめは実体験の大切さです。実際に児童が自ら体験してみる方が,より学習意欲を引き出せ,事象への興味・関心を持たせることができるのだと改めて感じました。また,日頃から感じる児童の経験不足(今回では今までに川遊びをしたことがない児童もいた)や科学的な見方の未熟さを補うためにも有用だと考えます。

 2つめは指導計画を立てる時に,ゆとりの時間を確保することです。今回のように,児童の実態や授業展開によって,柔軟に対応できるからです。そのためには,指導内容を精選し,限られた時間を有効に使えるように計画していく必要があります。

終わりに

 振り返ると,まだまだ児童が主役,子どもありきの授業ができていないと反省させられた授業でもありました。児童一人ひとりが見通しを持って,主体的に学習できる授業を目指して,児童の立場にたった授業作りに取り組んでいきたいです。

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