6年
実生活に結びついた実験で理科好きの子どもを育てる     
〜「水溶液の性質」の発展として〜     
三重県鈴鹿市立長太小学校
鈴木 雅人
1.はじめに

 「おもしろいなあ」「不思議だなあ」といった現象を見たり,体験したりした子どもは,その後,好奇心の目を育て,自然事象に自らかかわろうとすると考える。そして,その現象や体験の原理を追究しようとしたり,それらを生かして実生活に応用したりするようになるであろう。つまり,「生活→実験→生活→実験・・・」という繰り返しを行うことで,より理科好きの子どもが育って行くであろうと考える。

 6年生の「水溶液の性質」では,生活場面において経験している「すっぱさ」「甘さ」「塩からさ」などを生かしたり,トイレ用洗剤や,パイプクリーナーなど身近に酸性やアルカリ性のものを見つけ出したりすることができる単元である。また,リトマス紙の代わりに身近な果物や野菜を使って酸性・アルカリ性の判別を行うことができる。本単元を通して,理科の授業と自分たちの生活との関わりを深めていってほしいと思った。

 そこで,教科書に記載されている「はってん」に加え,子どもたちが興味をもち,家庭でもできそうな実験を行うこととした。

2.「水溶液の性質」の実践

 (1) 水溶液を集めて実験しよう

 授業では,薄い塩酸と薄い水酸化ナトリウム水溶液,食塩水,炭酸水,石灰水などをリトマス紙で調べることになっている。一通り調べた後に,「他に調べてみたいものはないですか。」と問うと,「ビール」「レモン汁」「みそ汁」など家庭で使っているものが出された。そこで,あらかじめ集めておいたフィルムケースをよく洗浄させ,そこに家庭にあるものを入れて、もってこさせた。

 その結果,果物果汁,みそ汁,ビール,酎ハイ,海水,漂白剤,液体洗剤,酢など様々な水溶液が集められた。早速リトマス紙の実験を行い,表にまとめさせた。



 (2)ものを溶かす

 意外に酸性の水溶液が多いことに気付いた子どもたちに,「薄い塩酸のようにものを溶かすことが出来る水溶液はないだろうか。」と疑問を投げかけた。

 すると,「先生,レモン液でコインをこるときれいになるよ。」という声があがった。

 そこで,コイン(1円,5円,10円,50円玉)を各自が持参した水溶液でティッシュペーパーにつけてこすらせてみた。

 結果,レモン汁は10円玉をきれいにしたのもの他の水溶液はうまく結果が出なかった。


 次に,卵の殻を酢の中に入れて見せた。すると,泡が発生し,溶け始めているのがわかった。

 そこで,「酢の中に卵1個を入れるとどうなるでしょうか。」と問うた。

 子どもたちは,「殻が溶けて中味が浮かぶ。」「中味も溶けてなくなる。」「中味が透けて見える。」など多様な予想を行った。

 そこで,鶏とウズラの生卵,ゆで卵を酢の中に入れた。ウズラは表面の模様がすぐに分離した。1日たつと白い泡が立ち,溶けてるのが確認できる。5日ほどで,殻は完全に溶け,薄皮に包まれた卵が残った。


 薄皮を丁寧にはがすと写真のようになった。

 光にかざすときみが透けて見える。ゆで卵は白く固まっているので写真のようにはならなかった。子どもたちの中からは,「家でもやってみたい。」という声が多数聞かれた。



 (3) リトマス紙の代わりに

 水溶液の見分け方としてリトマス紙を使用する以外に,教科書(啓林館)には,「植物のしるで水溶液を調べよう」においてムラサキキャベツの汁を用いた実験と,「はってんチャレンジ」において,なすやぶどうの実の皮,あさがお,ペチュニアの花びらを用いて調べる方法が例示されている。これらの中で収集できたムラサキキャベツ,なす,ぶどうに加え,果汁100%のブドウジュース,パインジュース,オレンジジュース,ピーチジュース,アップルジュースも用いて実験を行った。

 まず,ムラサキキャベツとブドウは,細かい網に包んで搾り取る方法で液を採取し,実験を行った結果,見事成功。

 その後,各ジュースで調べた結果,ブドウジュース以外は反応がよくわからない。

 「ムラサキっぽい色のものなら成功するみたいだ。」「ブルーベリーはどうだろう。」「色の濃い花びらでもやりたい。」などの声があがった。

 そこで,家庭でも水溶液をつくって実験したい子どもに,酢と重曹をフィルムケースで分け与えた。


 翌日聞いてみたら,ブルーベリーのジャムで実験を行った結果うまくいかなかったという声が聞こえた。

 (4)自動車の排気ガスで

 本単元の導入と「はってん」に酸性雨のことと簡易水質検査試薬の使い方が記載されている。

 実際雨が降ればできる実験であるが,もっと直接的な実験を行った。

 それは,自動車の排気ガスをビニル袋に集め,水と混ぜ合わせ,水溶液をつくり,BTB液反応を調べたのである。

 結果,水は黄色くなり,自動車の排気ガスが酸性雨の原因となっていることを認識することができたのである。

3.まとめ

 「先生,家でレモンの輪切りで10円玉こすったらぴかぴかになったよ。」「ぷよぷよ卵やったら出来た。」「海水友だちといっしょに取りに行ったよ。」本単元の学習中によく聞かれた子どもたちの声である。このように子どもたちは,理科の授業で行うこと,行ったことに興味を示し,自らの生活に働きかけていったのである。


【参考文献】
親子でひらく科学のとびら 新しい理科の教科書 小学6年生
   左巻健男・生源寺孝浩編集   文一総合出版
新たのしくわかる理科6年の授業  玉田泰太郎 あゆみ出版

前へ 次へ


閉じる