6年
校庭の樹木を活用し,         
生き物と自然環境のしくみを捉える工夫              
東京都大田区立矢口小学校
右近 彰秀

1.はじめに

 「たったひとつの地球 この地球のさまざまな自然の中で
生物はどのようにくらしているのだろうか。」

 このような課題意識をもって学習していくためには,身近にある自然環境に触れたり働きかけたりする自然体験が土台として必要ではないだろうか。その中で自然の不思議さや巧みさを実感しつつ,地球全体の自然へと視野が広がっていくのではないだろうか。都市部で生活する子どもたちにとって,一番身近な校庭の樹木や草花とそこに集まる生き物たちに触れ,その営みを年間を通して観察していくことが,前記の課題意識を育てるうえで有効であると思われる。

2.単元のねらい

 ・動物や植物の生活を観察し,生き物と空気,食べ物,水,とのかかわりを知る。

 ・校庭の樹木をしらべ,動物や植物と環境との関係について考えをもつ。

3.単元の展開

 (1) 生物とかんきょう( 生物と養分 生物と水 生物と空気 ) 7月

 (2) 自然とともに生きる  2〜3月

 1. 校庭や公園の樹木の役割を考えよう
  学校周辺の航空写真を活用し,樹木を意識させ役割を考える
  樹木の役割を3〜4項目にまとめ,モデル図に書き込む

 2. 樹木に集まる生き物を考えよう
  コナラに集まる虫や鳥などの生き物を考える
  樹木に集まる生き物たちをモデル図に書き加える

 3. 校庭の樹木を紹介しよう
  樹木カードと樹木地図を作ろう

4.学習のようす

 (1) 生物とかんきょう

   1) 葉から出る水分しらべ

 連日30度近い日が続く7月,子どもたちは汗まみれになって遊んでいる。

 「こんなに汗が出るのに,木は汗をかかないのだろうか。木の下にいるととっても涼しい。」

 こんな対話を交わしながら,葉がどれくらいの水分を蒸散するか調べてみた。

葉から出る水分しらべ

   2) 葉の中の水分量しらべ

 草花は,根からたくさんの水を吸い上げているようだけれど,体の中にはどれくらいの水が入っているのだろう。

 手のひら大のオシロイバナの葉1枚の重さを量ったあと,アイロンを当てて乾燥させ,元の重さと比べてみた。

葉の中の水分量しらべ

 (2) 自然とともに生きる

   1) 自然のしくみのモデル図つくり

 1・2学期に学習した内容を思い出しながら,樹木と水や空気の関係,樹木(植物)と動物の関係を中心に,自然のしくみについて,自分なりのモデル図つくりに取り組んだ。

 活動の中では,遠足で拾ったコナラの幼樹や理科室に届いた昆虫標本などを紹介し,児童の興味が持続することに留意した。




木に集まる生き物ワークシート


コナラの幼樹写真


自然のしくみモデル図

   2) 樹木カード・樹木地図

 校庭にある樹木の中から,思い出に残っている木を1本選び,その紹介をパソコンを使ってハガキ大のカードにまとめた。花や葉の特徴,木の肌や枝の出方などを,自分のことばで具体的に表現させるようにした。

 その後,校舎をかきいれた図に学年全員のカードと樹木の写真を貼りつけ,卒業記念として掲示した。


樹木カード

樹木地図
5.自然への関心を高める工夫

 ○樹木クイズ

 季節季節に花を咲かせた樹木のひと枝をビンに入れて展示し,簡単な説明とヒントをつけ,樹木の名前を答えてもらう活動である。ひと月に2回程度の割で続けてみた。毎回,低中学年を中心に20〜30人が参加してくれた。

 ○動植物の観察・展示

 花壇の一部を野草園とし,芽生えてくる草花や訪れる虫を観察したり,容器に入れて展示したりしてみた。続けていくうちに,子どもたちや教職員から様々な動植物が持ち込まれるようになった。

6.おわりに

 生き物や環境への関心を育てるには,日常的に児童の気付きや発見を取り上げ,それを他の児童に紹介する機会を設けることが大切である。同時に,児童にアピールするような自然環境を整えることが必要である。校庭に,チョウの幼虫たちの食草となる木,野鳥の餌となる実をつける木,紅葉する木,果物が実る木,山菜として利用できる木などに植えてみてはどうだろうか。

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