平成14年の開校当初より,全校生徒が3年間探究に取組むという先進的なカリキュラムを実践してきました。平成21年よりSSH校に採択され,現在Ⅲ期目です。SSH事業で開拓した高大・地域・海外連携を活かし,全校体制で取組む探究活動を深化させています。
【探究に関わる科目】令和4年度入学生
それぞれの授業計画は、「探究情報推進部」が立案し、授業担当者会で協議の上決定する。
全日制
普通科単位制
1年次6クラス
【SSH研究指定】
第Ⅰ期 平成21年~平成25年
第Ⅱ期 平成29年~令和3年
第Ⅲ期 令和4年~
課題研究メソッド 使用のタイミング・用途 | |||
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時期 | 単元 | ページ 内容 | |
1年次 |
4月 | 「日々の記録」書き方 | P171 パラグラフライティング |
5月 | 問いを深める方法 | P44-47 「問い」を立てる・発展させる | |
6月 | データサイエンス入門 | P114-119 グラフの種類とその特徴 | |
9月 | SDGsプロジェクト | P33 社会に存在する課題を知る | |
11月 | プレゼンテーション | P141 プレゼンテーションのポイント | |
12月 | 課題研究ガイダンス | P12-22 課題研究の概要 | |
1月 | 研究テーマを考える | P24-42 研究テーマを決めるためのポイント | |
2月 | 研究をする上での守るべきこと | P93-94他 研究倫理など | |
2年次 |
5月 | 課題研究RQと仮説 | P43-92 RQと仮説の立て方のポイント |
6月 | 研究計画書作成 | P96-97 研究計画書のポイント | |
調査・実験等 | P102-130 調査・実験の方法,まとめ方等 | ||
11月 | ポスター発表の準備 | P150-152 ポスター発表のポイント | |
3月 | 論文作成方法 | P132-140 169-170 論文作成のポイント |
*2年次生には,上記ページだけでなく課題研究を進めるための参考書として,必要に応じて活用するよう指導しています。
全校生徒を対象とするSS探究Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを柱とするプログラムに加え,突き抜けた人材を育成するため,希望者を対象に「祥雲STREAMプログラム」(「探究」を中心に据え,本校の特色であるロボット工学,環境,農業等の要素を加えた祥雲型STEAM教育)を開発しています。
新学習指導要領と本校のSSHⅢ期の計画に合わせ,令和4年度より探究活動の目標を見直しました。
「自ら学ぶ力」を図のように10の要素に分解し,身につけるべき目標を明確にしています。また,それらを,評価の3観点である「知識・技能」(=学びの基礎力),「思考力,判断力,表現力等」(=学びを深める力),「学びに向かう力・人間性等」(=学びに向かう力)に対応するよう整理しました。
また,全校生徒をSSHの対象としていることから,「科学リテラシーの育成」を目標として明記しました。科学的なものの見方・考え方は,より良い社会を築くために,理系選択生徒だけでなく,全生徒に必要な素養だと考えています。
科学リテラシーとして育成したい4つの態度
1年次に探究の基礎を学び,2年次に生徒自らテーマを設定し,課題研究を行います。この研究は,協働力を育てるため,グループでの活動としています。3年次は,2年次に行った課題研究を深め,4000字以上の論文にまとめます。さらに,研究の集大成として,全校生徒が参加する学校行事である「祥雲探究祭」で発表します。
探究の授業は,全て2名の教員によるチームティーチングとし,可能な限り経験者と未経験者を組み合わせます。また,生徒への対応は,「指示」ではなく「助言」であることを心がけています。
生徒自ら課題研究のテーマを設定することに困難を感じ,毎年工夫を重ねています。課題研究を効果的に進めるためには,漠然とした疑問を細分化する過程が必要であることに気付かせるため,令和4年度より,「『なぜ』を深めるプロジェクト」導入しました。
1年次の始めにこのような学習を行うことで,疑問を深める習慣が身に付き,「課題を発見する力」の向上を図ります。
令和2年度に全校生徒が参加する「祥雲探究祭」を創設しました。それまでは,年次ごとに,代表者による発表会を行っていましたが,他年次の活動を知ること,全員が発表する機会をもつことが重要であると考えました。3年次生全員が,課題研究の集大成として,口頭とポスターの2種類の発表に挑戦します。また,2年次生は,課題研究の中間発表を行い,3年次生や大学教員から助言を得て,研究計画を修正する機会とします。
この1日は,先輩・後輩,教員・生徒の立場を超えて,自由に研究活動を楽しむ雰囲気づくりを心掛けています。テーマの「伝えよう 疑おう 語り合おう」には,たとえ先輩の発表であっても,全てを鵜吞みにするのではなく,本当にそうなのか?と疑問をもち,質問し,語り合うことを大切にしてほしい,という思いを込めています。
開催後のアンケートから,生徒の成長が感じられる大きな成果が得られたことがわかりました。教員からは,「今年初めて1年次生を担当したが,3年次までの見通しが見えて有用であった」「3年次生だけでなく,1,2年次生の成長につながる。やはり,縦の関係は大切だと感じた。」等の感想があり,本校に必要な学校行事として共通理解が得られ,毎年の開催が定着しています。これまでコロナ感染拡大のため,一般公開ができませんでしたが,感染が収束すれば,様々な立場の多くの方々に参加いただき,生徒により大きな刺激を与えられることを期待しています。
課題研究の評価項目・規準や解説プリント,ワークシート等をまとめ,本校独自の書き込み式ノート「エウレカノート」を作成しました。1年次末の課題研究準備の段階から3年次前期まで使用します。このノートを利用することで,生徒はもとより,課題研究の指導に慣れていない教員にとっても,全体の流れを把握して見通しを立てることが容易になりました。また,評価基準について生徒と教員の間で共通認識をもつことで,段階ごとの目標が明確になります。さらに,記録が蓄積されるため,ポートフォリオとしての役割も果たします。このノートのPDF版は本校WEBサイトで公開しています。
SS探究Ⅱ,Ⅲは学校設定科目としているので,5段階評定が必要です。生徒の探究活動をどのように評価し数値化するかは,SSH第Ⅱ期の大きな研究課題でした。試行錯誤の結果,現在は,表のような年間評価計画(SS探究Ⅱ)により評価を点数化しています。それぞれの項目について,担当者間で統一できるよう評価基準を定め,担当者会で擦り合わせを行っています。
探究活動を深めるには,社会の問題に関する知識や研究を進めるための技能が必要です。1年次のSS探究Ⅰで探究の基礎を固めますが,1単位だけでは十分ではありません。そこで,1年次で開講する一般教科の科目において,探究に関わる知識や技能を学ぶ時期と内容をまとめ,教科間での共有を図りました。これにより,教員同士が連携し,探究を深める体制を整えていきます。
すでに,数学Ⅰや情報Ⅰにおいて,データ分析に関する内容を6月に学習し,SS探究Ⅰの「データサイエンス入門」と連動させたり,生物基礎では,教科書の最後に掲載されている「生態系の保全」を5月に学習することで,SDGs(特に環境問題)への理解を深められるようにしたりする工夫を始めています。
科 目 | 知 識 (主に社会問題) |
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生物基礎 |
生態系の保全 |
音楽Ⅰ |
黒人差別問題 |
英語コミュニケーションⅠ |
気候変動 食糧問題 労働問題 |
家庭基礎 |
消費生活と環境問題 |
情報Ⅰ |
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科 目 | 技 能 |
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現代の国語 |
小論文の書き方 |
歴史総合 |
統計・グラフ ディベート |
数学Ⅰ |
データの分析(統計的探究プロセス,仮説検定の考え方等) |
数学A |
仮説検定と反復試行の確率 |
物理基礎 |
測定値と有効数字 |
英語コミュニケーションⅠ |
表現活動 |
情報Ⅰ |
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最後の項目で述べましたが,探究と一般教科の連携を深めていくことが今後の課題の一つです。一般教科の学びが探究に活用されると同時に,探究で身に付けた「力」により一般教科の理解が深まらなければなりません。その相関を明確にし,評価する方法を検討していきます。