本校では,2019年度より男子校から共学になり,これを契機に探究活動を開始し今年で3年目となります。
今後,日本における社会構造の変化(人口減,超高齢社会,Society5.0など)は挙げたらきりがありません。
社会現象(課題)を自分事として捉えリサーチし,問題(課題)解決のスキルを身につけたり,論述力をつけることなどは,大学入試改革における「主体的な学び」への対応とも一致します。もちろん,探究活動だけで全てをまかなえる訳ではありませんが,この探究活動をきっかけに生徒たちが主体的,対話的な深い学びを身につけ,様々な場面で活用していけるようになるのではないかと考えています。
また,外部アドバイザーとして,岡本尚也先生(一般社団法人Glocal Academy代表理事)のご指導をいただき探究活動の指導を行っています。
通常は,各学年の探究活動担当の先生が進めることが多いとは思いますが,本校では,各学年の探究活動の先生と情報共有し,私の所属する21世紀型教育推進部が,探究活動を取りまとめ進めています。この体制のメリットは,高校1年生から高校3年生までの3年間の全体を見て進めることがきること,学年による指導のばらつきがなくなるといった点です。3年間この体制で取り組み生徒の探究活動の軌跡が見え,活動自体が標準化するのでデメリットよりメリットの方が大きいと実感しています。
21世紀型スキル4つのC「Creativity(創造性とイノベーション)・Critical Thinking(批判的思考力と問題解決)・Communication(コミュニケーション)・Collaboration(協働)」を具現化できるひとつが,この探究活動であると考えています。
高校生は全員BYODのコンピュータ(Chromebook)を活用し探究活動を進めています。具体的には,Googleスライドなどの共同編集,フォームによるアンケートの集計,Classroomによる課題配信及び提出など積極的に活用しています。
高校1年:個人で探究のスキルをつける
教科横断的に学習する中で,探究活動の重要性や意義を理解し探究の基礎となる情報収集,課題解決や研究計画を身につけることを目標としています。実際には情報科と協力し,授業でChromebookの利用方法,知的財産権やロジックツリーやブレーンストーミングなどの課題解決を実践的に学び探究活動を進める上での基礎を学習します。年度の後半からは学年の全体会を定期的行い,基本的には各クラスでテキストを使い本格的に探究活動がスタートしていきます。
※例年岡本尚也先生の「探究活動講演会」を実施しています。
岡本尚也先生の講演の様子
高校2年:グループによる探究活動の実践
4つのCが本格的に始まります。年度当初に各クラス3~5名のグループを作り,そこから探究活動の実践がスタートします。各グループには,担当教員が1名つき,探究活動の時間以外にも,必要に応じて,助言やサポートをします。但し,生徒の主体性がなくならないようにあくまでも「伴奏者」として関わっています。高校2年生では,年間を通じてグループ活動が中心となり,年度後半には校内発表を行い,数名の代表グループについては,講堂での全体発表を行っています。
校内発表の様子
高校3年:論文(探究論文)まとめ
高校2年生よりグループで進めてきた探究活動のまとめとして「探究論文」を作成しキャリア形成の一助を目的とする。1学期のみの活動になり,グループで探究論文を作成することにより,今まで取り組んできた探究活動の集大成とする。
高校1年生 ※例年岡本先生の講演会実施
高校2年生 ※年に複数回全体会実施 必要に応じて担当教員の助言
高校3年生
探究活動を進めるにあたり,同じ時間帯に複数学年の探究活動を進めることもあり「BOT」として,マスコットキャラクターを製作しました。
探究君
設定:生徒に寄り添った先生役。顔をQの字にしています。
ちなみに頭の黒いのが種(SEED)で探究活動が進むにつれ,成長し最後には花が咲きまた種に戻ります。
探犬
設定:生徒役として,質問したり疑問をもったりする犬がモデルになっています。
究ちゃん
設定:大事なことを繰り返し,連絡する役割,九官鳥がモデルになっています。生徒はペンギンと間違えていました。
・まとまった時間の確保 ・コロナ禍の影響による活動の制限 ・外部評価の導入 ・図書館の有効利用
・バディ制度(先輩が後輩の面倒をみる)など
岡本尚也先生が主催されている「高校生国際シンポジウム」への参加を始めて2年目となります。
2020年度は「民間用ドローンに対する日本の制度改正の必要性」および「日本における外国人参政権欠如に対する解決の提案と考察」,2021年度は「ロードセルによる3Dプリンタ出力の簡易強度試験装置の試作について」の発表(いずれもプレゼンテーション発表)を行いました。
このコンテストは,例年1月頃に発表要旨(2ページ・PDF)を提出し,審査(倍率約2倍)を通過すると,2月末に行われる本大会においてプレゼンテーション発表またはポスター発表を行い,優秀な発表については国際大会での発表権や優秀賞・優良賞などを受賞できるというものです。
例年SSH校やSGH校も多数出場し,非常にハイレベルな発表が行われています。この大会に参加することで,他校における先進的な探究事例や,「探究」における流儀・作法の実践的な情報を得ることができ,非常に大きな意義がありました。生徒・教員両方の視点から「統計的に妥当な数値処理と,その示し方」「プレゼンテーション資料作成過程による論理的な構成能力」「質疑応答に対応するための想定問答の作成」「参考・引用文献の適切な利用(特に『なぜそう言えるのか』という論理性の涵養)」などの学習・指導に大変有益だったと感じています。コロナ下の情勢で参加を開始したため,これまでリモートでの参加しか行えておらず,今後は是非,発表会場(鹿児島市)に足を運び,他校の生徒・教員と交流を図っていきたいと考えています。
国際シンポジウム発表の様子