中高一貫教育を行う本校では,中学1・2年次に中学校の学習内容の大部分を履習することになっている。週4コマの理科は,理科1(物理・化学分野)と理科2(生物・地学分野)という名称で2コマずつに分けてそれぞれ異なる教員(物理または化学の教員と生物の教員)が授業を行っている。高校受験対策の必要がないのも特徴の一つである。そのため,中学校の教科書をベースにしながらも,高校での学習内容を見据えて,柔軟にカリキュラム編成を行うことができる。
また,平成26年度以降,SSHの指定を受けたことや,大阪医科大学および大阪薬科大学との法人合併などにより,理科の実験設備も充実したため,その一部は中学生も利用できる環境となった。同時に,平成28年度の中学1年生から,生徒全員が一人一台のiPadを教具として購入しており,プロジェクターやWi-Fi環境等の整備も進んできた。そのような状況の中で,ICT機器の活用や,高校の課題研究への橋渡しなど,本校において中学校段階の理科が果たすべき役割が大きくなりつつある。そこで,今回は中学2年生で実施した解剖実習についてご紹介したい。
通常のカリキュラムでも,中学2年次に感覚器官について学習することになっており,検定教科書にも「ヒトの目のつくり」として眼球の構造が簡単に掲載されているが,本校では,高校の生物(4単位)に近い内容で授業を行っている。ヒトの眼球の構造や,明暗調節,遠近調節等を3コマ程度を使って学習した後,実習として「ブタの眼球の解剖」を行った。概要は以下である。
予備実験として事前に教員が撮影した解剖の様子を教室前方のスクリーンに投影して,手順を説明する。特に解剖実習など,精密な操作を伴う場合は,口頭やプリント資料での説明よりも,動画を見せながらの説明の方が,はるかに生徒の理解度が高い。
各グループで,解剖係2名と撮影係2名が役割を分担して,解剖を行う。手順は一般的な方法で, 解剖バサミで周囲の筋肉を切り落とした後,前半部と後半部に切り分けて,それぞれを観察する。実習後にレポートを作成するため,観察および撮影すべき構造を事前に提示することが重要である。
実習が終了すると,iPadのアプリ「ロイロノート・スクール」の「生徒間通信」機能を用いて, 各グループの撮影係が記録した画像を,共有する。この機能は,クラス内の任意の生徒同士で画像データを送り合うことができ,送信履歴を教員が確認できるという利点もある。
画像データをもとに,生徒全員がそれぞれ自宅でレポートを作成,提出して実習が完了する。レポートの作成には,iPadの文書作成アプリ「Pages」を使う。レポート用のフォーマットも用意されているので,非常に使い勝手が良い。作成したレポートはPDFにしてロイロノートに転送することができ,さらにロイロノートの「提出箱」機能を用いて提出する。Wi-Fi環境さえあれば,どこからでも提出が可能で,提出期限も任意に設定できる。教員もiPadを使えば,提出状況がクイズ番組のモニターさながらに一覧でき,パソコンからログインすれば,提出されたレポートのデータを外部メモリ等に保存することも容易である。
解剖実習の内容そのものは,従来から行われてきた方法であるが,iPadをはじめとするICT機器を活用することによって,生徒の理解度や満足度を,より高めることができると考えている。ロイロノート・スクールや Pages の機能について,ここでは十分にお伝えできていないが,ぜひ試してみられることをお勧めする。
また,スマートフォンの普及に伴い,生徒がタブレット端末の操作に非常に慣れており,レポート作成の手順についても簡単な説明をしただけで,工夫を凝らしたレポートが多く見られたことに驚かされた。
(以下,生徒のレポートの一部)
<参考文献>
「大阪府高等学校 生物実験集録」 大阪府高等学校生物教育研究会
「ブタの眼球観察」 iPadで始めるe-授業研究会 2012
「生物 改訂版」 啓林館