数学トピックQ&A |
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対称式 |
Q | 因数分解の公式 x2+(a+b)x+ab=(x−a)(x−b)の使い方は,a,b の和と積に着目して, たとえば,x2+5x+6 では,a+b=5ab=6をみたす a,b は,a が2,b が3だから,x2+5x+6=(x+2)(x+3)としますが,a が3,b が2としてもよい. これには,何かしら納得いかないことがあります.どうして a,b の値が2通りあってどちらでもよいのでしょうか. |
A | それは a+b,ab の形にあるのです.a+b で,a をb に,b をa に変えるとどんな式になりますか. |
Q | a+b はb+a になり,同じ式です.ab もba になるが同じ式ですね.ここに秘密があったのですか. |
A | そうです.a をb に,b をa に変えても同じ式になるような式は他にもあります. たとえば,a2 +b2 ,,a3 +b3 などいくらでも作れます. このような式を対称式といいます.a+b とab は,対称式の中でも,特に基本的なものという意味で,基本対称式といいます. 3つの文字a,b,c についても同じように,a をb に,b をc に,c をa に変えても同じ式になるものを対称式といいます. たとえば,a2 +b2 +c2,,a3 +b3 +c3などがあります. 基本対称式は a +b +c,ab +bc +ca,abc です. これは高校生では難しいですが「どんな対称式でも基本対称式で表される」ことがいえるのです. |
Q | 「対称式が基本対称式で表される」とはどんなことですか. |
A | 例題で考えてみましょう. a2 +b2 =(a+b)2 −2ab だから, p =a+b,q =ab とおくと,a2 +b2 =p2 −2q となって, a2 +b2 は p,q で表されています. では,p =a+b+c,q =ab +bc +ca,r =abc とおいて, |
Q | (a +b +c)3 の計算をするとなると,大変だ. |
A | 次の式が成り立つことを確かめて使ってみてください. a3 +b3 +c3 −3abc=(a +b +c)(a2 +b2 +c2 −ab −bc −ca)……[1] |
Q | (a +b +c)2 =a2 +b2 +c2 +2ab +2bc +2ca だから,[1] は, a3 +b3 +c3 =(a +b +c){(a +b +c)2 −3(ab +bc +ca)} +3abc となって, a3 +b3 +c3 =p(p2−3q)+3r =p3−3pq+3r 対称式が基本対称式で表されることの意味がわかりました. |
A | 置き換えの対称性という視点で式を見ると,式の美しさのようなものが見えてくるでしょう. |