数学切り抜き帳
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接線の方程式―発想の転換
桜花学園大学教授
岩井 齊良
 知っていると便利な情報をお教えしよう.

 α を重解にもつ方程式 (x−α)2=0 を変形すると,
       x2−2αx+α2=0
       x2=2αx−α2
したがって,放物線 yx2 の点A(α,α2) における接線の方程式は
       y=2αx−α2
である.

 数学はこれくらい自由に発想したいものである.
 しかし,体制内にあってはこれは「正しいやりかたではない」と非難されそうである.
 少なくとも結果は正しい.

 次のように説明したらどうだろうか.
 放物線 yx2 の点A(α,α2)における接線の方程式を ypxq とすると,2次方程式
           x2pxq
は α を重解にもつ方程式 (x−α)2=0 に変形できる.したがって,恒等式
          x2pxq=(x−α)2 
が成り立つ.
 よって, pxq=2αx−α2 (これも恒等式)であり,接線の方程式は y=2αx−α2 である.

 しかし,強硬な人はこれでも「正しいやりかたではない」と非難する.また,非難しないまでも自信を持って「その通り」と支持してくれる人は少ない.
 最初に述べたことがらはしっかり覚えておいて,こっそり使う方が無難である.

 次に,放物線 yax2 (a≠0) の接線を考えてみよう.

 放物線 yax2 上の点A の x 座標を α とする.
 α を重解にもつ方程式 a (x−α)2=0 を変形すると,
       ax2−2a α xa α2=0
       ax2=2a α xa α2
したがって,放物線 yax2 の点Aにおける接線の方程式は
       y=2a α xa α2
である.

 さらに,放物線 yax2bxc (a≠0) の接線を考えてみよう.

 放物線 yax2bxc 上の点A の x 座標を α とする.
 α を重解にもつ方程式 a ( x−α)2=0 を変形すると,
       ax2−2a α xa α2=0
       ax2=2a α xa α2
    ax2bxc=(2a α+b)xa α2c
したがって,放物線 yax2bxc の点A における接線の方程式は
       y=(2a α+b)xa α2c
である.

 同様のアイデアは次の場面でも使える.

 放物線 yax2bxc 上の2点A,B の x 座標をそれぞれ α,β とする.
 α,β を重解にもつ方程式 a (x−α) (x−β)=0 を変形すると,
       ax2a (α+β)xa α β=0
       ax2a (α+β)xa α β
    ax2bxc=(a α+a β+b)xa α β+c
したがって,放物線 yax2bxc 上の2点A,B を通る直線の方程式は
       y=(a α+a β+b)xa α β+c
である.

(注) α=β のときは上の方程式は接線の方程式になる.