数学切り抜き帳
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放物線のかたち 1
桜花学園大学教授
岩井 齊良
I  放物線 y ax2 (a ≠0) はどれをとってもすべて相似である.
 まずこれを示そう.
 放物線 y ax2 を原点を中心として a 倍に拡大してみよう.
 放物線 y ax2 上の任意の点 P (x1y1) をとる.
 原点 O を中心として OP を a 倍に拡大した線分を OQ とすると,点 Q の座標は
       Q (ax1ay1)
である.
 y1ax12 であるから,
       ay1=(ax1)2
 したがって,点 Q は放物線 y x2 上にある.

 以上により,放物線 y ax2 は放物線 y x2 と相似であることが示された.
 どの放物線 y ax2 も放物線 y x2 と相似であるから,すべての放物線 y ax2 は相似である.

II 放物線 y x2y 軸の方向に a 倍してみよう.
 下の図に示すように,得られる曲線は放物線 y ax2 である.

 上の図では a >0 としたが, a <0 とすることも考えられる.
 例えば, y ax2 のグラフを「y 軸方向に−2倍する」という操作は次の図で表される.

III 放物線 y x2x 軸の方向に k 倍してみよう.
 放物線 y x2 上の点 (x1y1) をx 軸方向に k 倍した点は (kx1y1)
 y1x12 だから,
       
 よって,新しい点 (kx1y1) は曲線 の上にある.
 したがって,y x2x 軸の方向に k 倍した曲線は放物線 である.

 II,III の結果,次のことが分かる.

 図のように,長方形に入った2つの放物線がある場合,一方の長方形が他方の長方形に重なるように縦・横に拡大・縮小すると,これに連動して一方の放物線が他方の放物線にぴったり重なる.

 余談であるが,マイクロソフト社の日本語ワープロ Word には,基本的な図形を描くことと図形を変形するソフトが備わっている.著者もWord を愛用している.
 このソフトを使うと,放物線が1つあれば,それを回転したり縦横に拡大・縮小することによってほかのすべての放物線に変形できる.
 上で説明した I , II , III の事実はそういうコンピュータ時代の放物線の形という観点から書いているのである.
 ところが Word が提供する基本図形の中には放物線がない.著者にとってこれは致命的である.僕は大変苦労して放物線を1つ描きこれをさまざまに変形してこの原稿を書き上げている.
 「1つの放物線を回転したり縦横に拡大・縮小すればすべての放物線が入手できる」というこの簡単な事実を Word の制作者はご存じないらしい.