「片手でものを数える」というと,
1つ,2つ,3つ,4つ,5つ
と「5つまでしか数えられない」と思う人が多いだろう.
ところが,工夫しだいで,なんと,31まで数えることができるのである.
1グラム,2グラム,4グラム,8グラム
のおもりがある.天秤(てんびん)ばかりの一方の皿にこれらのおもりをのせ,他方の皿になにか量りたいものをのせて重さを量るとき,何グラムのものが量れるだろうか.
じっさいに調べてみると,1グラムから15グラムまですべての重さを量ることができる.
この結果を表にまとめてみよう.
次の表では,おもりを使う場合は1,おもりを使わない場合は 0 という記号で表している.
量れる重さ |
8グラム |
4グラム |
2グラム |
1グラム |
1 |
0 |
0 |
0 |
1 |
2 |
0 |
0 |
1 |
0 |
3 |
0 |
0 |
1 |
1 |
4 |
0 |
1 |
0 |
0 |
5 |
0 |
1 |
0 |
1 |
6 |
0 |
1 |
1 |
0 |
7 |
0 |
1 |
1 |
1 |
8 |
1 |
0 |
0 |
0 |
9 |
1 |
0 |
0 |
1 |
10 |
1 |
0 |
1 |
0 |
11 |
1 |
0 |
1 |
1 |
12 |
1 |
1 |
0 |
0 |
13 |
1 |
1 |
0 |
1 |
14 |
1 |
1 |
1 |
0 |
15 |
1 |
1 |
1 |
1 |
一般に,
イエスかノーか, 真か偽か, あるかないか, 右か左か
(電気の)プラスかマイナスか, (磁石の)北極か南極か
など,2つしかない情報を区別する記号として,しばしば1/0が使われる.
上の表はこの習慣にしたがっている.
このような場面で使われる記号1/0のことをビットという.筆者はこれは「ちょびっと」のビットだと冗談を言っている.
011001のようにビットを並べたものをビット列という.
上の表から,1から15までの各数に対し,それぞれ異なるビット列が対応する.
1 ←→ 0001
2 ←→ 0010
3 ←→ 0011
4 ←→ 0100
5 ←→ 0101
……
15 ←→ 1111
さて,
1グラム,2グラム,4グラム,8グラム
のおもりを使ったときは1〜15グラムの重さが量れたわけだが,もっと大きい重さのものを量るには次にどんなおもりを使ったらよいだろうか.
16グラム,その通り16グラムである.それでは,
1グラム,2グラム,4グラム,8グラム,16グラム
の5つのおもりを使うとどんな重さが量れるだろうか.
答は,
1グラムから31グラムまでのすべて
である.
その結果,1から31までの各数に対し,
長さ5のビット列
が対応することになるが,こんどはこの結果を5本の指を使って表してみよう.
ビットが1のときは指を折る,ビットが0のときは指を折らない
ことにする.
たとえば,
である.
答は次のようになる.
これで,「片手で1から31まで数えることができる」ことがわかった.
このように,各数にはそれぞれ異なるビット列が対応し,各ビット列にはある数が対応する.ビット列は対応する数を表していると考えて,ビット列を対応する数の2進表示または2進コードという.
例えば,ビット列11101は29の2進表示である.2進表示においては先頭の0は省略(あるいは無視)してもよいものとする.
例えば,00101,101はいずれも5を表す.
この表示のことを俗に2進数というが,2進数というと今まで知らなかった新しい種類の数であるかのように聞こえる.しかし,10進数,2進数といっても表し方の違いだけで、数の本質,数量としては変わらないのであるから、この言い方は避けたい.
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