幾何学で作図問題といえば,
定規とコンパスを使って,点や直線などの図を作る
のであるが,ここでは,
コンパスだけを使って作図する
ことを考えてみよう.
コンパスしか使えないから,直線は引けない.描けるのは円だけである.したがって,作図できるものといえば,
円か円弧か点
ぐらいのものである.
ここではとくに点に着目しよう.
コンパスの幅(半径)を固定すると,まず次のような点を作図することができる.
さて,手始めに次の問題を考えてみよう.
問 コンパスだけを使って,次の2点の中点を作図せよ.
AB
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「コンパスだけで中点が作図できるの?」とびっくりするかも知れないが,できるのである.
この解は次のようになる.
まず,ABを2倍に延ばした位置にある点Cを作図する.
Aを中心としBを通る円と,Cを中心としAを通る円を描き,交点をP,Qとする.
最後に,Pを中心としAを通る円と,Qを中心としAを通る円を描き,Aでない方の交点をMとする.
この点Mが求める中点である.
ここで,MがABの中点であることの証明が必要である.
証明 ABの長さを a とし,Aを原点,Bの座標を (a,0) とする座標系で考える.
Aを中心としBを通る円の方程式は,
x2+ y2= a2 …… [1]
C (2a,0) を中心としAを通る円の方程式は,
(x−2a)2+y2= (2a)2 …… [2]
[1]− [2] より 4ax=a2
x=
よって,点P,Qは直線 x= 上にある.
点Mはこの直線について点Aと対象だから,Mの座標は( ,0)である.
よって,MはABの中点である.
この作図法のキーワードは次の2つである(a = 1 に見立てる).
中心が(2,0)で原点を通る円, 単位円
はじめにこの2つの円を描くことにより問題は解決する.
上の作図法を覚えたいという人は参考にしてもらいたい.
コンパスだけの作図法の世界(平面)では直線や線分は実現できない.実現できないものに直線,線分と名をつけるのは誤解を招くおそれがある.そこで,直線,線分は想像上のものとしてそれぞれ仮想直線,仮想線分と呼ぶことにする.
上で考えたことから,任意の仮想線分の中点は作図可能であることが分かった.
そうすると,与えられた点Pから仮想直線ABへの垂線の足Qも作図可能であることがわかる.
これを作図してみよう.
中心がAでPを通る円と
中心がBでPを通る円
を描くことにより,仮想直線ABに関するPの対称点P' を作図する.
そうすると,仮想線分 PP' の中点Qが求める点である.
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